神職
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神職(しんしょく)とは、神社において神に奉仕し祭儀や社務を行う者のことである。
神主(かんぬし)は、本来は神社における神職の長を指していたが、現在では神職と同じ意味で用いられる。神官(しんかん)は祭祀を司る官吏(公務員)のことで、戦前は伊勢神宮の祠職のみが呼ばれた。現在、神官は存在しない。
戦前は男性に限られていたが、戦後は女性も資格を得れば神職になれるようになった。
神職になる方法はいくつかあるが、一番の近道は神道系の大学を出ることである。日本で神道学科のある大学は皇學館大学と國學院大学の二つのみで、所定の課程を修了することで正階(「階位」参照)が授与される。他には、皇學館大学、國學院大學、一部の神社庁で年二回行われる階位検定講習会(一ヶ月間程度)に参加するか、全国に数校ある神職養成所(二年間)に通う方法もある。なお、養成所に入所するには神社庁の推薦状が必要な場合もあるので、まずは身近な神職に相談する必要がある。通信教育によって検定試験を受けるという方法もあるが、これは急遽神職の資格を取らなければならない場合(実家の神社の跡を継ぐ必要が生じた場合等)に限られる。
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[編集] 階位
神社本庁では以下の5つの階位区分がある。明階までは、所定の研修を受けることにより昇進が可能。
- 浄階(じょうかい)
- 神職の最高位で、長年神道の研究に貢献した者に与えられる名誉階位。
- 明階(めいかい)
- 正階(せいかい)
- 一般神社の宮司、別表神社の禰宜になるために必要な資格。
- 権正階(ごんせいかい)
- 禰宜になるために必要な資格。一般神社であればこの階位で宮司になれる場合もある。
- 直階(ちょっかい)
- 一般神社の禰宜に必要な、基礎的な階位。
[編集] 身分
神社本庁では特級、一級、二級上、二級、三級、四級という身分区分がある。
身分の選考は経歴・神社界に対する功績をもとに行われる。基本的には年功序列である。
[編集] 服制
神社本庁では正装・礼装・常装の服制を定め、上記の身分別に規定がある。
- 正装(=衣冠)
- 特級……黒袍(輪無唐草紋)、白奴袴(白八藤紋)、冠(繁紋)
- 一級……黒袍(輪無唐草紋)、紫奴袴(白八藤紋)、冠(繁紋)
- 二級上…赤袍(輪無唐草紋)、紫奴袴(薄紫八藤紋)、冠(繁紋)
- 二級……赤袍(輪無唐草紋)、紫奴袴(無紋)、冠(繁紋)
- 三級……紺袍(無紋)、浅葱奴袴(無紋)、冠(遠紋)
- 四級……紺袍(無紋)、浅葱奴袴(無紋)、冠(遠紋)
- 正服は大祭(例大祭・神社造営等に関わる臨時祭)に着用する。
- 礼装(=白色無紋の衣冠)
- 斎服といい、身分に関わらず、白袍(無紋)、白差袴(無紋)、冠(遠紋)
- 斎服は中祭(歳旦祭、紀元祭など季節ごとの祭礼)に着用する。
- 常装(=狩衣)
- 狩衣、差袴(色目は正服に準ずる)、烏帽子。
- 狩衣の色目・紋様は、禁色を除いてまったく自由である。禁色とは高貴な人が着る色目で、神社本庁では天皇の着る黄櫨染、皇太子の着る黄丹の二色が禁色に指定されている。
- 狩衣は小祭(月ごとに行われる恒例祭)、地鎮祭、各種祈願祭など、その他の神事に着用する。なお、特に清浄を必要とする祭の際には、身分に関わらず無紋の白狩衣・無紋の白差袴・烏帽子の「浄衣」を着用する。
神事において神職の役割は、その祭を主宰する斎主と、祭具を運んだり、玉串を手渡したりといったサポーター的な役割をする祭員に分けられる。この場合、原則として全員同じ装束を着用する。これは、社殿が広く祭場のスペースが充分に取れる場合は差し障り無いが、実際問題として、社殿の小さな一般神社では、数人の神職が正服を着用して祭を行う場合、他人と装束が触れ合いすぎたり、祭具に引っかけてしまったりと祭に支障をきたす場合がある。正服は神職の正装であり威儀を正すという性質上、装束が大振りで活動的では無いからである。このため一般神社では、斎主は正規の服制にならっても、祭員以下は小祭の服制(常装)にならう場合が多い。また、一般神社では宮司一人で祭を行うことも多く、この場合一人で祭具を運ぶ、玉串を手渡すといった動作をしなければならない。よって、一般神社では大祭・中祭であっても常装で行なう場合もある。
なお、葬儀・結婚式の装束は以下のとおりである。
- 葬祭装束
- 神葬祭には、身分に関わらず無紋の鈍色袍・無紋の鈍色差袴、あるいは無紋の鈍色狩衣を着用する。なお、この葬祭装束の鈍色(ねずみ色)は忌色とされ、禁色とともに普段の着用は禁じられている。
- 結婚式装束
- 神前結婚式については特に規定は無いが、「その他の神事」ということで小祭にならう(狩衣・浄衣)。
[編集] 職階
神社内での役職の順位を職階という。神社の規模や由緒によって異なるが、一般的には、宮司(ぐうじ)・禰宜(ねぎ)・権禰宜(ごんねぎ)が置かれている。原則として宮司・禰宜は各神社に1名づつである。別表神社の一部では、宮司の下に権宮司(ごんぐうじ)を置いている。簡単に言えば、宮司は神社の代表者、権宮司は副代表、禰宜は宮司の補佐役、権禰宜は一般職員である。
ただし伊勢神宮は別で、祭主・大宮司・少宮司・禰宜・権禰宜・宮掌を置いている。
この他、神職には含まれない職員や、神職見習いである「出仕」や主典、典仕、伶人などの職員を置いている神社もある。また、舞女、巫女は正式には神職に含まれない。
また、宮司である以上、神社の大きさに関係なく立場は対等である。例えば、明治神宮や靖国神社の宮司も、田舎の小さな神社の宮司も、影響力は別として地位は同じである。なお、職階と階位は別物であり、職階が上の方が神職としての地位は上である。つまり、明階の禰宜よりも、正階の宮司の方が上である。
[編集] 主な神職養成機関
- 大学
- 神職養成所
- 通信教育
- 大阪國學院神職養成通信教育(修業2年、対象:高等学校卒業者)リンク
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