箇条書きマジック
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箇条書きマジック(かじょうがきマジック)とは、恣意的な情報操作テクニック(詭弁)の一つであり、読み手の印象を操作して自分の望む結論を導き出す意図で、自己の主張に都合の良い要素のみを恣意的に抽出し、箇条書きにして列挙する手法の俗称である。 また、この手法を用いた文章を読むことで、その主張が(対象物の本質以上に)もっともな事実を書いたものであるかのように感じてしまう錯覚自体を指すこともある。
盗作の検証や文学的考察における自論の説得の際に、異なる二作(ないしそれ以上)の創作物の類似点のみを恣意的に抽出し、両者の作品を実際に読んだ(見た)上で読者(視聴者)が感じる印象以上に、両作品が酷似しているかのように思わせるためにこの手法が多く使用されたことから発生した言葉だが、広義に『箇条書きを利用した情報操作』を指す場合にも用いられている。創作物以外に対する箇条書きマジック記述の例としては、DHMOおよび同項の類似のジョーク『パンは危険な食べ物』の節を参照のこと。
特に盗作の検証の際に箇条書きマジックが故意に用いられた場合、読み手の公正な判断を妨害し、真面目な検証をも阻害することになるため、この手法が好ましく扱われることは少ない。
[編集] 箇条書きマジックの例
以下に箇条書きマジックの例を示す。なお、紹介する文章はあくまでも箇条書きマジックの類型を示す例にすぎず、ここで両作品の関連性を主張するものではない。
スティーブン・スピルバーグの代表作である『E.T.』(1982年 米)について、ストーリーなどが日本の文学作品『X(正体は後述)』に酷似していることが指摘されている。具体的な類似点としては、
- 不思議な発光体を見た主人公Aが、その後主人公Bに遭遇することから物語が始まる。
- 主人公Bは、一見人型に見えるが明らかに普通の人間ではないと判る異形である。また、その正体は外部の天体から来た宇宙人である。
- 主人公Aは主人公Bを保護し、主人公Bのことを肉親に打ち明ける。
- 主人公Bと主人公Aと彼の肉親は、日々の生活の中で親愛を深めていく。しかし主人公Bは自分の星にいつか帰らなければならない。
- 主人公Bの噂を聞きつけた多くの人間達が、主人公Bを手に入れるため主人公Aのもとにやってくる。しかし主人公Bは主人公Aのもとを離れない。
- そんな状況が続く中、主人公Aのもとに、主人公Bを迎えに来た、母星からの使者がやってくる。
- 主人公Bの母星からの使者たちは、UFO(未確認飛行物体)に乗ってまばゆい光とともにやってくる。
- 最終的に、主人公Bは主人公Aに別れを告げ、未確認飛行物体に乗りこみ母星へと帰ってしまう。
- 満月をバックにする主人公たちを描いた幻想的なシーンが存在。多くの読者が両作品のタイトルを聞くと、このイメージを連想するほど、代表的な場面である。
などである。
また、この文学作品『X』は正式名称の他に、『E.T.』と同じく主人公Bの名前をタイトルとして冠した別名があり、こちらの方がより一般的な呼称として定着していることも付け加えておく。ここまで来ると単なる偶然とは思えないレベルの類似であるが、アメリカを含めた諸外国での文学作品『X』の知名度は低く、『X』の筆者もすでにこの世を去っているため、訴訟や糾弾をする人間がいないのが現状である。
なお、上の文章で "日本の文学作品『X』" として登場している作品の正体は、『竹取物語』(通称『かぐや姫』)である。
文中のように "日本の文学作品『X』" としてタイトルが伏せられている状態ならいざ知らず、『E.T.』と『竹取物語』の両方の作品を読んだ(視聴した)ことがある人間ならば、普通この二作品が似通った内容であるとは思わないであろうし、『E.T.』は『竹取物語』からの盗作であるとは考えないだろう。
このように、類似点のみを箇条書きにされた作品の片方あるいは両方を知らない(実際に読んだ・視聴したことがない)場合、読み手が文面から受ける箇条書きマジックの効果もより強いものとなる。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- 忙しい人のための簡略「提言騒動」話(盗作にからんだネットトラブルも含めた考察、検証サイトへのリンク集。「箇条書きマジック」の言葉の発祥とされる)