腹式呼吸
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腹式呼吸(ふくしきこきゅう)とは 一般的には胸郭(肋骨などからなる籠状の骨格)をなるだけ動かさずに行う呼吸のことである。 特に声楽においては声を良く出すために呼吸を工夫することを腹式呼吸という言葉であらわすことが多い。
肺の入っている胸腔は主に、胸郭とそれを支え動かす筋群、及び横隔膜で構成されている。 息を吸う(すなわち胸腔を広げる)ためには胸郭を挙げ肋骨を広げるか横隔膜を収縮させて下げればよい。特に横隔膜を大きく動かすと腹腔が変形し腹部が前方へ突き出る。これが腹筋をはじめとする全身の筋肉の弛緩を促し更に内臓への刺激ともなることから様様な健康法などと結びついている。(ヨガ等) このとき息を吐き出す力は腹筋群の収縮によるものであるから腹で呼吸しているように感じられるのである。
歌唱においては、胸郭を動かすと喉頭懸垂筋群や声帯内筋に余計な緊張を生むうえ呼気の連続性が損なわれるため特に初心者は腹式呼吸を習得することに熱心になる。 また呼吸や喉頭の「支え」のことを暗に示していることも多い。
声楽で使う場合、息をはくときに腹部をへこませながらはき、腹部を膨らませることで体内に空気が入る、という原理を利用している。訓練法としては、はじめに肺の中の空気を吐き出しながら腹部を凹ませ、息を出し切った状態から、腹筋の反動を利用するようにすばやく息を吸うとよい。当然ながら腹筋の鍛錬が重要である。ちなみに呼気を重視する呼吸法を、「釈迦の呼吸法」と呼ぶことがある。