自由エネルギー
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自由エネルギー(じゆう-、free energy)とは、熱力学における状態量の1つである。等温等積過程の自由エネルギーはヘルムホルツの自由エネルギー(Helmholtz free energy)と呼ばれ、等温等圧過程の自由エネルギーはギブズの自由エネルギー(Gibbs free energy)と呼ばれる。通常、ヘルムホルツ自由エネルギーはFで表記され、ギブズ自由エネルギーはGで表記される。体積変化pVが系外に為す仕事の分だけ異なるので両者の間にはF = G − pVの関係にある。
自由エネルギーは1882年にH.ヘルムホルツが提唱した熱力学上の概念で、呼称は彼の命名による。一方、等温等圧過程の自由エネルギーと化学ポテンシャルとの研究はギブスにより理論展開されたので、等温等積過程をヘルムホルツ自由エネルギーと等温等圧過程をギブズ自由エネルギーと呼び分ける。
熱力学第二法則より、系は自由エネルギーが減少する方向に進行する。また、閉じた系における熱平衡条件は自由エネルギーが極小値をとることである。
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[編集] ヘルムホルツの自由エネルギー
ヘルムホルツエネルギー(Helmholtz free energy)は熱力学における示量性状態量のひとつでFで表されることが多い。等温条件で取り出し可能なエネルギー量をいう。次のように定義される。
F=U-TS
(Uは内部エネルギー、Tは温度、Sはエントロピーを示す。)
- 全微分は次の形になる。
(Pは圧力、Vは体積、μiは各成分の化学ポテンシャル、niは物質量を示す。)
等温等積の条件では、自発変化はヘルムホルツエネルギーが減少する方向へ進む。また熱平衡条件はヘルムホルツエネルギーが極小値をとることである。
[編集] ギブズの自由エネルギー
ギブズ自由エネルギー(Gibbs free energy )は、熱力学や電気化学などで用いられるエネルギー量(示量性状態量)である。ちなみにIUPACではギブズエネルギーという名称の使用を勧告している。
通常G と表記され、等温等圧条件下で仕事として取り出し可能なエネルギー量である。
ギブズ自由エネルギー変化が負であれば化学反応は自発的に起こり、極小の一定値を取ることは、系が平衡状態にあることに等しい。従って電池ではギブズエネルギー変化が負の値を取っているのである。
G = H − TS = U + PV − TS
の式を満たす。ここで
全微分は次の形になる。
(μiは各成分の化学ポテンシャル、niは物質量を示す。)
[編集] ルジャンドル変換
内部エネルギー U、ヘルムホルツエネルギー F、ギブズエネルギー G、エンタルピー Hを微分形式により表現すると
である。
T | : 温度 | S | : エントロピー |
P | : 圧力 | V | : 系の体積 |
μi | : 化学ポテンシャル | Ni | : 物質量 |
これらはそれぞれルジャンドル変換
- F = U − TS
- F = G − PV
- H = G + TS
- H = U + PV
によって結ばれている。従って U(S,V,Ni)、F(T,V,Ni)、G(T,P,Ni)、H(S,P,Ni)は全て同じ情報をもっている。