行政裁判所
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行政裁判所(ぎょうせいさいばんしょ)は行政訴訟を扱う裁判所のこと。通常、行政権に属する特別裁判所のことを指す。フランスのコンセイユ・デタ、ドイツの連邦行政裁判所、中華民国(台湾)の最高行政法院および高等行政法院など。
日本においては、大日本帝国憲法第61条でその存在をうたい、司法裁判所とは別個の組織として設置された。本項では主に日本の行政裁判所について記す。
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[編集] 概要
東京に設置され、「行政裁判所長官」と14人の「行政裁判所評定官(ぎょうせいさいばんしょひょうじょうかん)」によって構成された。一審制の裁判所で、かつ特別裁判所でもあるので、判決に不服があっても大審院に抗告することができなかった。
[編集] 裁判権
行政庁ノ違法処分ニ関スル行政裁判ノ件(明治23年法律第106号)に基づき、次の事項についてのみ裁判権を有する。
- 租税及び手数料の賦課に関する事件(関税を除く)
- 租税滞納処分に関する事件
- 営業免許の拒否又は取消に関する事件
- 水利及び土木に関する事件
- 土地の官民有区分の査定に関する事件
[編集] 廃止の経緯
戦後、新たに日本国憲法が公布されたことにより行政裁判所は廃止された。日本国憲法第76条第2項では特別裁判所を禁じているため、司法権から独立した形での行政裁判所は設置できないことになったためである。
大日本帝国憲法で行政裁判所制度が導入された理由は、ドイツ・フランスなど大陸法をモデルに継受していたからである。日本国憲法は、司法権の独立を厳密にした英米法の影響を強く受けたためである(アメリカの占領統治のため)。
行政裁判所では行政の専門家が細かく審理することができるなどのメリットがある。(日本の行政裁判所の場合、評定官の3分の2が行政官出身であった。)