診断群分類包括評価
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診断群分類包括評価(しんだんぐんぶんるいほうかつひょうか)は、医療費の定額支払い制度に使われる評価方法。DPC(Diagnosis Procedure Combination;診断群分類)に基づいて評価される。これを用いた医療費の定額支払い制度は2003年4月より全国82の特定機能病院と調査協力病院の内、62施設において開始された(2006年には200以上の医療機関で採用されているといわれている)。
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[編集] 医療費の定額支払い制度
医療費の定額支払い制度は、患者がどの病気であったか(診断群分類)によって医療報酬が決まる制度。これまでの出来高払い制度が治療にどれだけの費用が掛かったかで報酬が決まる制度であった事と対照的で、様々な利益が期待されている。
まず第一に患者への利益として、無駄な医療の削減が期待されている。これまでの出来高払いでは行った医療行為が多ければ多いほど医療報酬が上がるため、回復への最短治療を行った医療者へは支払いが減り、回復を長引かせた医療者への支払いがあがると言う矛盾があった。この制度では患者と医療者の利害が一致しておらず、利害の溝を埋める事は医療者の人格と能力に全て任せられていた。一方 医療費の定額支払い制度ではまず最初に診断結果に対する医療報酬が決められていて、実際に掛かった医療費は後から経費として差し引かれるため、回復への最短治療を行った医療者への支払いが上がり、回復を長引かせた医療者への支払いが減ると言う形で患者と医療者の利害が一致し、無駄な医療が行われなくなると同時に、最適な医療を行う能力が医療者に求められる仕組みとなる事が期待されている。
第二に医療者への利益として、従来の診療では採算割れの傾向が強かった急性期病院は経営的安定が確保できるほか、患者の属性・病態や診療行為ごとの医療費情報が標準化されるため、経営的・技術的側面から医療の質を評価・比較可能であると注目されている。
第三に行政への利益として、医療サービスが標準化する結果、医療費抑制が実現されることも期待されている。
考えられる問題点は、行う医療行為が少なければ少ないほど利益になるので、最小限の医療が治療計画の余裕を損なう可能性があり、万が一医療に余裕が無くなって来れば生存率の低下や医療訴訟の増加等を通して三者とも不利益を被るので、その様な事を防ぐ為に医療の透明化を求める議論等が求められる。
[編集] 診断群分類
診断群分類は、1986年の米国エール大学における、一般産業でいうQC活動を医療に応用するための研究に端を発している。その後、各国でさまざまな形で応用され、米国で開発された診断群分類は、DRG(Diagnosis Related Group)と呼ばれている。 DRGには資源消費の均質性という特徴があり、1983年、米国において、メディケアの入院医療費の支払方法として診断群分類ごとの包括支払い方式が採用された。これをDRG/PPSという。 1996年、日本でも診断群分類をベースとした定額制の方向が示され、1998年に急性期入院医療費の定額支払い方式の試行事業(日本版DRG/PPS)が開始された。その後2003年にこの診断群の考え方を踏襲して誕生したのがDPC包括支払いである。 DPCとは、患者ごとに傷病名や年齢、意識障害レベル(JCS)、手術、処置の有無などの治療行為を組み合わせたもの。
DPCの分類項目は現在3100分類であるが、包括評価対象となる診断群分類は1727分類であり,これに該当しない患者は従来どおりの出来高払いとなる。包括評価の範囲は、主にホスピタルフィー的要素(入院基本料・検査・画像診断・投薬・注射・1,000点未満の処置などの施設報酬)であり、ドクターフィー的要素(手術料・麻酔料・1,000点以上の処置などの医療技術料)は対象外となる。従来の点数にあてはめてみると、DPCの対象となる入院患者に算定できる診療報酬の約7割が包括範囲に含まれている。
[編集] DPCコード
DPCでは、約3100ある全ての診断群分類に対して14桁で構成される「診断群分類番号」つまりDPCコードが割り振られている。このうち包括評価となっている1727のDPCには包括点数が設定されており、2004年3月19日付の官報で告示されている。 コードには下記のような意味がある。数字の変わりに「X」とある場合は「該当なし」を意味する。 例) 01006030003X1XX 左から順に、(1)主要診断群/MDC2桁コード(2)最も医療資源を投入した傷病名の4桁分類コード(3)入院目的(4)年齢又は、出生体重又は、JCS条件(意識障害レベルの指標)⑤手術⑥手術・処置等1⑦手術・処置等2⑧副傷病名⑨重症度等の有無。を記載する。
[編集] DPCにおける総報酬額
DPCにおける総報酬額=診断群分類による包括評価+出来高評価+入院時食事療養費
診断群分類による包括評価は、「診断群分類点数表」と呼ばれる包括範囲点数表をもとに下記の式で算定し、出来高部分については従来からの医科診療報酬点数表をもとに算定する。
診断群分類による包括評価=診断群分類ごとの1日当たり点数×医療機関別係数×入院日数×10円