護身術
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護身術(ごしんじゅつ)とは、暴漢などから自分や他人の生命・身体を守るための技術。広義には、危険に近づかない技術なども含まれるが、狭義では、暴漢撃退法のみを指す。ただし、格闘の専門家においても「相手を打ち倒すこと」ではなく「自分が安全に逃れる方法」を指導するなどしており、所謂格闘技や逮捕術のような制圧を目的とした技術ではない。
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概説
護身術は、相手を打ち負かすことが目的ではなく、あくまでも自分(もしくは他人)の生命・身体を守る事が最優先事項とされる。そのため、相手を倒すことを前提としている格闘技のテクニックやセオリーとは、似ている部分もあるが、違う部分も多い。
たとえば、相手に不意打ちを食らわせて、相手が怯んだ隙に逃げるのも護身術(一撃離脱)である。また、相手と格闘になったり後述の護身用具を使用するなど最悪の事態に遭遇した際にも、ルールで行動が限定されている格闘技の場合と異なり、格闘技では反則・禁じ手とされる金的などの急所への攻撃、立ち関節が主体となる。その場合も、あくまで正当防衛の範囲に収まるようにし、過剰防衛とならないよう充分な注意が必要である。そのための法知識や法律理解も、護身術の一端に考えるケースもある。
ただし緊急避難の例もあるように、危機的状況では相手の安全を慮らないでも問題とされないなど、複雑な状況問題が絡み、銃社会である米国の地域(州)によっては自敷地内の不審者に対して警告後の発砲は不当とはみなされない場合もあるなど、地域的な事情もみられる(→日本人留学生射殺事件)。こと日本では凶器・有害玩具など危険物の所持は論外だが、非殺傷性の暴漢撃退グッズも複数販売されており、これを利用することも護身術(セルフディフェンス)の一端である。
護身術では、実践的な技術以外に日頃から危険な状況に身を置かない様にする心構えが必要である。一部の武道では、鍛錬を通して常に落ち着いて判断を下すことが出来る精神力を養い、いかなるときも正しい判断をすることで危険を避けることが一番の護身であるとしている。また、ある著名な武道家は「まず走って逃げること。これができないうちは武人とはいえない。」[要出典]と述べており、危険な状況から離脱し、身を置かないことの重要性を強調している。
具体的な護身方法の例
格闘技の修練などは、ある意味で護身術に通じるものがある。しかし相手が拳銃を所持していたともなると、達人ほどの修練を積んだ人でも対処が難しい。その意味で、格闘技はあくまでもケースバイケースである。
日本の外務省の海外安全情報ページや、日本人向けの日本国外旅行用パンフレットには「○○地区には近づかないこと」などという表記が見られる。これは強盗に襲われたりする危険があるためで、これに従うのも広義の護身術である。中には、「財布とは別に、奪われても困らない程度の金銭を入れた財布を、上着の外ポケットなどに入れておくこと」と案内するガイドブックもある。なお上着の内ポケットや、ズボンの後ろポケットに財布を入れておくと、強盗に襲われた際に助かりたい一心で財布を取り出そうとしたところ、強盗が「相手が抵抗するために武器を出そうとしている」と誤解していきなり発砲する危険があるという。こういった配慮・情報も、命が助かることを前提とした護身術ならではといえよう。
狭義の護身術としては、「相手に手首を捕まれた」・「後ろから羽交い絞めにされた」・「路地などに追い詰められた」といった状況において、どのような体捌きでそれを振り払い逃れるかといった訓練がみられる。この中では先に挙げた急所攻撃など、非力な者が相手に一時的な苦痛を与えてその状況を脱する方法も様々なものが見られ、思い切り向こう脛を蹴飛ばしたりハイヒールの踵で相手の足を踏みつけるといったような方法も提案されている。「護身術教室」などでは、そういった状況をロールプレイすることが多い。
この他にも、実際に難に遭っている状態から逃げるための狭義の護身術としては、以下のようなものがある。
- 所謂「護身術教室」を受講する。
- 柔道や剣道、少林寺拳法、合気道、空手、日本拳法などの武道・武術を習得する事によって、護身術を身に付ける。単に格闘の技術を習得するのみならず、万が一の際の精神的な心構えを身に付ける事が重要と考えられる。
- 場合によっては、市販されている催涙スプレー・スタンガン・特殊警棒・防犯ブザー・警笛などの護身用具・防犯グッズを携帯・使用して難を逃れる。
- 身の回りの生活用品(家や車などのキー・ボールペン・バッグ・灰皿・懐中電灯など)を護身用具として暴漢に対処する。
- 学校などに暴漢が侵入した場合に備えて、さすまたや警杖、盾等が使用できる状態にしておく。
- 生命の危機が予想されるような状況におもむく場合、防弾・防刃チョッキを着用する。
護身術の問題点
- 現在の日本では、攻撃性のある防犯グッズを持ち歩くことは、軽犯罪法違反である、と解釈されることも多い。職務質問の際に、催涙スプレー・スタンガン・警棒等が見つかれば、任意同行を求められたり逮捕される可能性もある。なお、防犯ブザーや警笛など、攻撃性のない防犯グッズが、軽犯罪法違反として逮捕される可能性は低い。
- また、上記の攻撃性のある防犯グッズを実際に使用し、暴漢を撃退した場合、過剰防衛と見なされる可能性は高い。
- 空手や柔道の有段者が、暴漢を撃退し、怪我を負わせた場合、暴漢の武装の有無、そのときの状況、怪我の程度などにより一概に言うことはできないが、過剰防衛と見なされる可能性はある。格闘の専門家の肉体は武器であるという認識があるためである。
- 護身術として人気のある合気道や少林寺拳法であるが、女性がそれらを習っただけで、実際に男性の暴漢を撃退できる実力がつくかどうかを、疑問視する声も多い。
- 一般に治安が日本より悪いことから、限定的に武装を容認している外国の状況と比較して、日本における護身方法は制約が厳しいと思われがちだが、実際はそのようなことはない。合法的に武装できる国でも、大概の場合は、安心感を買う為に武器を購入するだけで、常日頃から武装している人など殆どいない。また、護身用具の保持や武装が認められる国でも、応戦して怪我をさせた場合は、過剰防衛になる確率が高い。欧州は過剰防衛に対して特に厳しく、イギリスなどは、強盗などの犯罪に利用しようと思えば使える道具は全て護身用具とは認められない。したがって、催涙スプレーやスタンガンは所持できず、単なるバットや修理工具でさえ、本来の用途と関係ない場面で携行すれば処罰の対象となるほどである。海外などに滞在するさいは、どこまでなら許容されるのかを十分に考慮する必要がある。
関連項目
外部リンク
- 無条件で「逃げる」ことを勧めている。
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