輝石
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輝石(きせき、pyroxene)は、珪酸塩鉱物の一種。多くの火成岩や変成岩に含まれる代表的な造岩鉱物。
色は無色・緑色・褐色・黒色などで、ガラス光沢を持つ。自形結晶は短柱状。二方向の劈開が顕著。角閃石によく似るが、劈開の交わる角度(約90°)により区別される。
基本的な化学組成は XY(Si,Al)2O6 (ただし、X はCa、Na、Fe2+、Zn、Mn、Mg、Li、Y はCr、Al、Fe3+、Mg、Mn、Sc、Ti、V、Fe2+)で表される。
結晶系により、斜方輝石(しゃほうきせき、orthopyroxene、斜方晶系)および単斜輝石(たんしゃきせき、clinopyroxene、単斜晶系)の2つに分類され、さらに上記の化学組成により細かく分類される。
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[編集] 輝石の種類
- 普通輝石(ふつうきせき、augite)
- 組成 : (Ca,Mg,Fe,Al,Ti)2(Si,Al)2O6。モース硬度5.5~6。比重3.2~3.6。暗褐色または緑色。単斜晶系。短い柱状で、四角形または角がとれた八角形をしている。火成岩中や変成岩中に最も良く産出することから名前がつけられた。
- 透輝石(とうきせき、diopside)
- 組成 : CaMgSi2O6。MgをFeが置換し、ヘデンベルグ輝石(hedenbergite、CaFeSi2O6)と連続固溶体を形成する。無色だが鉄を含むものはその比率により黄緑色から暗緑色。比重3.2、モース硬度6。単斜晶系。中性~塩基性の火成岩中や、スカルンなどに多く産出する。クロムを含むものはクロム透輝石と呼ばれ、超塩基性岩中に稀に産出する。
[編集] 独立種として認められた輝石名
1988年、国際鉱物学連合(IMA)の輝石命名の小委員会により、輝石の分類と命名が整理された。20種が輝石の独立種とされ、そのうち13種が固溶体の端成分として用いられる。これらのうち、普通に見られるのは、Ca-Mg-Fe輝石8種(1~5、8~10)、Ca-NaおよびNa輝石4種(14~17)である。
I. Mg-Fe輝石
- 1. エンスタタイト(enstatite、頑火輝石)(En):Mg2Si2O6
- 2. フェロシライト(ferrosilite、鉄珪輝石)(Fs):Fe2+2Si2O6
- 3. 単斜エンスタタイト(clinoenstatite、単斜頑火輝石)
- 4. 単斜フェロシライト(clinoferrosilite、単斜鉄珪輝石)
- 5. ピジョン輝石(pigeonite)
II. Mn-Mg輝石
- 6. ダンピコライト(donpeacorite)
- 7. 加納輝石(kanoite)(Ka):MnMgSi2O6
III. Ca輝石
- 8. 透輝石(diopside)(Di):CaMgSi2O6
- 9. ヘデンバージャイト(hedenbergite、灰鉄輝石)(Hd):CaFe2+Si2O6
- 10 オージャイト(augite、普通輝石)
- 11. ヨハンセナイト(johannsenite、ヨハンゼン輝石)(Jo):CaMnSi2O6
- 12. ピタダナイト(petedunnite)(Pe):CaZnSi2O6
- 13. エシネアイト(esseneite)(Es):CaFe3+AlSiO6
IV. Ca-Na輝石
- 14. オンファサイト(omphacite、オンファス輝石)
- 15. エジリン-オージャイト(aegirine-augite)
V. Na輝石
- 16. ジェイダイト(jadeite、翡翠輝石)(Jd):NaAlSi2O6
- 17: エジリン(aegirine、エジリン輝石)(Ae):NaFe3+Si2O6
- 18. コスモクロア(kosmochlor)(Ko):NaCr3+Si2O6
- 19. ジャービサイト(jervisite)(Je):NaSc3+Si2O6
VI. Li輝石
- 20. スポジュメン(spodumene、リチア輝石)(Sp):LiAlSi2O6
この分類により、かつて岩石名によく使われていた紫蘇輝石(hypersthene)は、固溶体の端成分であるエンスタタイトとフェロシライトになった。
[編集] 関連項目
[編集] 参考文献
- N. Morimoto, et al., "Nomenclature of pyroxenes," Mineralogical Journal, Vol. 14, No. 5, 1989, pp. 198-221. PDF
- 森本信男 『造岩鉱物学』 東京大学出版会、1989、ISBN 4-13-062123-8。