近鉄20000系電車
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
20000系電車(20000けいでんしゃ)は、近畿日本鉄道の団体専用列車用の車両。「楽」の愛称がある。20100系(あおぞら)の老朽化に伴いその代替用として登場した。
[編集] 概要
楽(RAKU)とは、Romantic Journey、Artistic Sophistication、Kind Hospitality、Unbelievable!の略で、車両横に書かれたロゴ「楽」の文字は書家・榊莫山の揮毫によるものである。
車体は車両限界を最大限活用しており、在来の2階建車両に比べて通路部分の屋根を高くして、圧迫感をなくしたのが特徴。のちに30000系(ビスタカーIII世)が車体更新を受け、ビスタEXに改造される際にも、同様の屋根構造に改造されている。窓も大きな曲面ガラスとし、柱に冷暖房用の風洞を設けているのも特徴的である。塗装は上半分を黄色、下半分をホワイト、境目に濃い茶色のラインを通し、乗降扉部分は濃いオレンジ、その脇の車端部はグレーというカラーリングである。
両先頭車両(ク20100、20150形)は2階建車両の制御車で、運転席の直後は階段状の前面展望席としている。階下席はAV機器を設置してカラオケや、運転席に設けられたカメラを通じて前面展望を楽しむことができる。また、階下の一部は機器室として補機類や冷暖房装置を搭載している。前面は貫通路を備えた構造であるが、通常はカバーで覆われており、他の編成との連結はほとんど行われていない。
中間車(モ20200、20250形)は高床構造の電動車で、床下に制御装置と冷暖房装置を搭載している。パンタグラフはトイレの屋根部分に各1台ずつを搭載する。トイレは和式と洋式を1つずつ設置している。なお、中間車の重量は在来線用の電車としては国内で最も重い48tである。
一般客室の座席は転換クロスシート(展望席は固定式クロスシート)で、階上席と中間車のひじ掛け通路側には補助席としてT-barと呼ばれる簡易の腰掛けを設けている。また、先頭車車端部には6人分のサロンコーナーが設けられ、背もたれの高いソファーとしている。
乗降扉は、一度に多数が乗降する団体利用を考慮して、通勤車と同じ幅の両引戸が採用されているが、通勤車とは違って扉の窓は小さめになっている。
性能面やメカニズムは、30000系を初めとする特急車に準じた抵抗制御で、最高速度は120km/h。標準軌の路線ならば基本的にどの路線でも走行が可能である。ただし、近鉄では団体専用車は特急の扱いとはしていない。
18200系「旧あおぞらII」があった事から、1990年に4両編成1本(4両)が製造されたにとどまっている。18200系が団体運用を引退後は15200系(「新あおぞらII」)がその後継となったため、増備は行われていない。 貸切料金はこの20000系が最も高額の設定となっている。