障害物競走
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障害物競走(しょうがいぶつきょうそう)は運動会で行われる競技のひとつ。コース中に設けられたさまざまな障害を超えながらゴールに到達する早さを競う競技。
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[編集] 概要
障害物競走のコースにはさまざまな障害物が設置されている。競技者はその障害を順番に超えながらゴールを目指す。障害の多くは物理的には無視して避けて進むことが可能なように設置されているが、そのような行為は障害物競走の存在意義をなくしてしまうため、ずるい行為であるとして許されない。徒競走やリレーなどは純粋に走る速さを競う競技であるが、障害物競走は必ずしも走る速さだけで勝つことはできない。そのため、運動の苦手な児童・生徒も運動会に積極的に参加できるようにするために有効な競技である。だが、その分競技というよりもレクリエーションとしての面が強調され、運動会の競技の中ではやや地味な存在である。
スタートからゴールまでを一人の競技者で走る形式もあるし、途中で障害数個ごとに競技者をリレーしていく形式もある。後者は特に障害物リレーとも呼ばれ、下に詳述する障害の特性に合わせた競技者の配置がチームの勝敗を大きく左右することになる。
[編集] 主な障害の例
どの障害を設置するか、また、どのような順番で設置するかについて定まったルールはない。主催者の裁量で決められる。以下のリストは五十音順である。
[編集] 麻袋
コース中に競技者の人数と同数の麻袋が置かれている。その置かれている地点から次の定められた地点までの間、競技者は麻袋の中に入った状態で進まなくてはならない。当然麻袋に穴が開いていたりはしないので、通常両手で袋を持ち、両足ジャンプをしながら進むことになる。着地時にバランスを崩すと転んでしまい、タイムロスの原因となる。
[編集] 網
コース中の地面に網が広げて置いてある。網といっても、その目は人間が通れるか通れないか程度のかなり粗いものである。競技者は、その網と地面の間を進まなくてはならない。大きいため全体を持ち上げるわけにはいかず、目が粗いので体が網にからまってしまう。からみつく網をよけつつ進む。
[編集] アメ食い
コース中にアメ食い競走の用意がされており、競技者は手を使わずにアメを拾わないと先に進めない。ゴール直前の最後の障害として設けられ、競技者への一種のご褒美としての側面があることも多い。
詳細はアメ食い競走を参照。
[編集] キャタピラ
コース中に競技者の人数と同数の段ボールが置かれている。段ボール箱の底面を外し、側面だけにしたものである。その置かれている地点から次の定められた地点までの間、競技者はその段ボールの中に入り、かがんだ状態で段ボールを回転させながら進まなくてはならない。この様が戦車やブルドーザーなどのキャタピラに似ているためこの名がついた。この障害では前方の視界が遮られるので、競技者同士の接触も多くなり、白熱する。また、障害の構造上、体が小さいほうが有利である。体が小さいことで劣等感を抱く児童がそれを挽回し、誇りを持つチャンスでもある。
[編集] 三輪車
コース中に競技者の人数と同数の幼児用の三輪車が置かれている。その地点から次の定められた地点までの間、競技者は三輪車に乗って進まなくてはならない。幼児の乗り物としてはありふれている三輪車だが、体が大きくなった中学生や高校生には操作が難しく、レースのスピードが大きく落ちる障害である。この競技もまたキャタピラ同様体の小さい競技者が有利なのは言うまでもない。また、学校ではなく町内会などの運動会では、中年男性が三輪車に乗る姿が笑いを誘う。
[編集] スプーン
コース中にスプーンと鶏卵(近年は代用品としてしばしばピンポン球を用いる)が置かれており、その地点から次の定められた地点までの間、競技者はスプーンの上に卵を乗せたまま進まなくてはならない。落としてしまった場合は落とした地点からやり直し。かなり不安定なので、スピードを出すことができず、前の走者を抜かすことは難しい。逆に落としてしまうと卵の交換のタイムロス(ボールの場合は拾いに行くための時間)ができてしまい遅れを取るので、ここは守りに入るべきところであろう。
[編集] タイヤ
コース中に競技者の人数と同数の紐をつけたタイヤ(大型車用の大きなサイズのものであることが多い)が置いてあり、その置いてある地点から次の定められた地点までの間、競技者は紐を引っ張ってタイヤを引きずりながら進まなくてはならない。筋力がない競技者には辛いが、体重が重くて足は遅いが筋力は強いというタイプの競技者の力の見せ所。ゴール手前の最後の直線に設置し、ゴールするまでタイヤを引かなくてはならないことにすることも多い。最後まで足の速さでは勝負が決しない、障害物競走らしいゴールシーンといえるだろう。
[編集] 跳び箱
コース中に数台の跳び箱が設置されており、競技者はその跳び箱を超えて進む。飛び越える必要はなく、乗り越えてもよいとすることが多い。これは、障害物競走の選手にされる児童・生徒は運動が苦手なことも多いので、飛び越えるのが不可能なこともあることを考慮したためである。普段の体育の授業では超えられない壁として立ちふさがる跳び箱を、(違うルールの上とはいえ)やすやすと超えることができるという快感を得ることができる障害である。
[編集] 縄跳び
コース中に競技者の人数と同数の縄跳びの縄が置かれている。その置かれている地点から次の定められた地点までの間、競技者は縄跳びを跳びながら進まなくてはならない。ただし、障害物競走のレクリエーション的側面もあいまって、この「跳びながら」の部分の定義は曖昧なことが多い。一歩ごとに縄を一度またぐことは少なく、2歩から3歩ごとに一度縄をまたげばよいということになっているようである。
[編集] ハードル
コース中にコースに沿って数台、陸上競技用のハードルが設置されている。競技者はそのハードルを飛び越えながら進まなくてはならない。他の障害と比べれば見た目が地味であり、コース序盤の小手調べ的な障害として設置されることが多い。
[編集] バット
コース中に野球用のバットが置いてある。競技者の人数と同数、又はそれより少し少ない本数であるのが一般的。競技者は、その置かれた地点の付近で、バットのヘッドを地面に、バットのエンドを自分の額につけ、バットを軸にして定められた回数(5回から10回程度)だけ回らなくてはならない。このことからこの障害を「ぐるぐるバット」と呼ぶ人も多い。回った後の競技者は目が回っているので、まっすぐに進むことができない。回転しているときにどれだけ平衡感覚を失わずにいられるか、平衡感覚を失った状態からいかに早く回復するかがポイントである。
[編集] パン食い
コース中にパン食い競走の用意がされており、競技者は手を使わずにパンを取ってからでないと先に進めない。これもアメ食い同様ご褒美としての側面が強く、特にパンの場合はその後の競走で邪魔になることから、設置される場合はまず間違いなく最後の障害として設置される。
詳細はパン食い競走を参照。
[編集] 平均台
コース中に数台の平均台が設置されている。競技者の人数よりは少ない場合が多く、1台しかないこともある。この部分では平均台を渡って進まなくてはならない。途中で落ちたら始点に戻ってやり直し。平衡感覚がない競技者はいつまでも進めないため、難易度の高い障害である。台数に限りがあることが多いので、この障害の手前での順位は勝負のひとつの鍵となる。しかし、後ろから迫ってくる競技者からのプレッシャーを受けながら平均台を渡りきるのは想像以上に難しく、差がつきやすい障害でもある。上述のバットの次にこの平均台が設置されていると、大波乱が起きる可能性も秘めている。