雀刺し
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雀刺し(すずめざし)は、将棋の戦法。「スズメ刺し」とも表記される。 先手番の場合、1筋に飛び道具と呼ばれる飛車・角行・香車などを集中させ、一点突破を狙う作戦。1七香車、1八飛車、6八(7九)角行、2五桂馬の位置に攻め駒を移動させ、4枚の駒を1三の地点に集中させる。駒得、駒損に関わらず、敵陣への潜入を第一に考えた戦法でもある。
名前の由来は、6八、または7九にいる角行が1三の地点を狙う格好が、ちょうど雀を捕らえるときに槍を斜めに構える姿に似ているからだといわれている。
矢倉囲いから生まれた戦法だが、他の戦法とも併用できる。ただ、破壊力はあるものの攻撃を一点に集中させてしまうために、自陣がおろそかになったりする。また、攻撃した際に自分も駒を取られる覚悟でいくため、後戻りは許されない戦いになる。
上記のことからして、一番効率の良い攻め時は相手の玉将が、端に近い時である。ただし、雀指しを見せて△2二金などと悪形で受けさせ、一転して中央で開戦するのがよくある手筋であった。
かつて、矢倉で森下システムが指されていた時、対策として雀刺しがよく採用された。森下システムは、早々と右金を6七に上げてしまうので、飛車を切ることがよくあるこの戦型では横からの攻めに弱くなり、玉を早々に入城させることもあり、一時期先手勝率7割を誇った森下システムに対しては最も効果的な対策となった。
[編集] 雀刺しの変遷
雀刺しの創案者は、升田幸三実力制第4代名人といわれている。第一号局は後手番で、と言われているが、その後はほとんどが先手番が指した。 以後、トップクラスの棋士の間で指されるようになり、そのなかでも、1979年の名人戦は雀刺しシリーズと呼ばれたほど、登場した。名人戦の対局者の一人であった米長邦雄執筆の強豪向け定跡書「米長の将棋」の矢倉戦法の巻は、八割以上を雀刺しが占めている。
しかし、雀指しの天敵が、棒銀と判明すると、先手(雀刺し側)、8八玉型は棒銀有利がわかり、7九玉型へ移っていったが、受けつぶしになりかねないということで、次第に減っていった。
そして、決定的だったのが、後手に菊水矢倉(しゃがみ矢倉などとも呼ばれる)をやられると、玉が2一にいて、十分な脅威が与えらなくなったことであった。
現在では、少なくともプロ棋戦に於いては森下システム対策として指される程度で、矢倉戦法の主流とはいえない。ただし、アマチュア向けの定跡書などでは相変わらず登場している。
[編集] 矢倉以外の雀刺し
対振り飛車の居飛車側がまれに雀刺しを用いることがある。 たとえば、振り飛車穴熊崩しの地下鉄飛車定跡の中に、振り飛車穴熊を崩すときに雀刺しを用いることがある。 アマチュア間で行われている金開き(アヒル)戦法では、振り飛車美濃を崩すときに雀刺しを用いる。
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