電動ガン
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電動ガン(でんどう- )とは、エアソフトガンのうち、電気で動くメカニズムを持つものをいい、以下のようなものがある。各用語については、エアソフトガンの項を参照。
- 電動エアコッキングガン
- エアコッキングガンのコッキング動作を、モーター駆動によって行うもの。東京マルイのFA-MAS5.56-F1が量産されたものの第1号といわれている。東京マルイが圧倒的シェアを持ち、M60や64式小銃等のTOP、KSC(HK33シリーズ)が続く。かつてはトイテック(P90、M134など)も製造した。また、韓国等のメーカーが東京マルイのメカボックス(後述)をデッドコピーし電動ガンを製造したことがある。(L85等)
- 電気制御ガスガン
- ガスガンのうち、ガスの放出を電気駆動で行うもの。撃鉄の動作を電気で制御するもの(MGCのMP5K、ウエスタンアームズのヤティマティック等)、電磁弁を動作させてガスを放出するもの(アサヒファイヤーアームズのワルサーWA2000等)があり、特に後者を電磁弁銃という。
単に「電動ガン」という場合は、電動エアコッキングガンを指すことが多い。本稿でも電動エアコッキングガンについて解説する。
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[編集] 仕組み
本稿では、特に断らない限り、東京マルイ製電動ガンについて解説する。
[編集] 基本的な構造
バレルの中でBB弾を加速し、射出する点ではほかのエアガンと同じ。エアコッキングガンとの違いはその射出するためのエネルギーを作り出したり、マガジンから弾を拾い上げる部分にある。大雑把に言えば、電動ガンとはエアコッキングガンにおいて手動で行われていたこれらの動作を、モーター駆動で行うものと言える。
電動ガンの内部(メカボックス)を構成する主な部品は以下のとおりである。
- ノズル・タペットプレート・タペットスプリング
- セクターギアにより動き、マガジンから弾を拾い上げ、チャンバーに装てんする。KSC製品ではピストンに内蔵された別の機構になっている。
- ピストン
- シリンダーの中を往復運動し、エアを作り出す。TOP製品では蛇腹を収縮・伸展させる。
- スプリング、スプリングガイド
- ピストンを動かす原動力となる。
- スイッチ類
- トリガーと連動して電気のON、OFFを制御し、銃を作動させたり停止させたりする。KSC製品ではピストンの前進と連動し、トリガーは通常のエアコッキングガンと同じ働きをする。
- ギア
- ベベルギア
- モーターからの動力を受け、スパーギアに伝える。逆転防止ラッチと隣接しており、ギアが逆転するのを防いでいる。
- スパーギア
- ベベルギアから動力を受け、セクターギアに伝える。
- セクターギア
- スパーギアから動力を受け、タペットプレートを動かし、セミオートの場合スイッチを制御し、間欠ギア(歯が半周無いギア)でピストンを引き、ギアのない部分でピストンを開放、エアーを作り出す。
- ベベルギア
[編集] その他の部品類
メカボックス外にあり、電動ガン特有の主な部品は以下のとおり。
- バッテリー
- 電動ガンを動かすための二次電池。主にニッケル・カドミウム蓄電池やニッケル・水素蓄電池が使用される。繰り返し充電して使用できるため、経済的である。かつてはトイテックのM134バルカンのように鉛蓄電池を使用したものもあった。電動ガン用の充電池には、固定ストック内に格納されるラージバッテリーと、折りたたみストック、またはストックのない機種に使用されるミニバッテリーの2種類がある。ラージバッテリーは、ニカド電池であってもサバイバルゲームを1日するのに十分な容量を持つため、ニッケル水素電池を使用してもメリットをあまり感じることはできない。むしろ瞬発力に劣る分、セミオート射撃の切れが悪くなるといったデメリットが目立つ。しかし、ミニバッテリーはニカド電池のものは容量が小さく、最悪試合中に電池切れを起こす恐れがあるが、ニッケル水素電池を採用したものは、ニカド電池を採用したラージバッテリー並の容量を持つため、この危機を回避することができる。
- ヒューズ
- 電動ガンの配線の中にあり、異常な電流が流れたときにこれが切れて電気をシャットアウトする。通常15A用を使用する。
- 多弾数マガジン
- 東京マルイなどがオプションパーツとして発売している、より多くの弾を装填できるマガジン。
[編集] 作動原理
すでにほとんど、部品ごとに説明したが、まとめると以下の順序で発射が行われる。
- 射手がトリガーを引く
- 電気スイッチがONになり、バッテリーから電力がモーターに供給される
- モーターが作動し、ベベルギアを回す
- ベベルギアの回転をスパーギアがセクターギアに伝える
- セクターギアが回転し、ピストンが後退し始める。同時にタペットプレートが後退する。
- タペットプレートがまず開放され、マガジンから弾を拾ってチャンバーに入れる。
- ピストンがあるていど後退すると、セクターギアの歯のない部分によりピストンが開放され、スプリングの力により勢いよく前進する。
- 前進するピストンがシリンダー内の空気を圧縮し、チャンバー、バレルに送り出す。
- そのエアの力によりBB弾が発射される。セミオートの場合、ここでスイッチが切れ、待機する。フルオートの場合はモーターが回転を止めず、3から繰り返す。
[編集] 改造について
近頃改造エアガンによる犯罪が多発しているが、電動ガンは違法性の高い改造には向いていない。レートの高い(パワーが強い)スプリングは、電動ガンの各部に高い負荷を掛けるからである。しかし、電動ガンはその性質上、違法性や危険性のない改造を行い、性能の大幅な向上を図れる。この場合は改造ではなくカスタムと呼ぶことが多い。
ただし、カスタムにせよ改造にせよ、多数のリスクを負うことになる。たとえば、自分はそのつもりでなくても法に触れる銃を作ってしまったり、一度分解した銃はメーカーが修理に応じないので、故障の際に技術を要求されたりする。
カスタムをする場合は必ず自己責任で行う必要がある。
よく見られるカスタムとしては、
- ハイサイクル
- 各部を改良し、連射する速度を向上させるカスタム。
- サイレント
- 電動ガン特有の機械音や発射音を抑え、静かに発射できるようにするカスタム。
- アキュラシー
- より命中精度を上げるためのカスタム。バレルを交換したり、内部を慎重に調整したりと、かなりの技術を要する。
- ハイパワー
- より高い威力で弾を発射できるようにするカスタム。これを極端にやると実銃と認められ、銃刀法に抵触するが、適度なものなら危険は少なく、命中精度の向上にもつながる。
などが挙げられる。
[編集] よくあるトラブル
電動ガンは比較的―といってもごくわずかで、無改造ではほとんどおきないが―トラブルの多いタイプのエアガンである。
よくあるトラブルとしては、
- バッテリー切れ
- バッテリーの電圧が電動ガンを作動させられなくなるほどに下がり、作動が停止すること。もちろんバッテリーを交換すれば解決する。KSC製品の場合は電源スイッチを切り、手動モードにすることで手動エアコッキングガンとして射撃を続行できる。
- 弾詰まり(ジャム)
- バレルやチャンバー内でBB弾が引っかかり、発射できなくなること。原因はさまざまだが、最近ではBB弾もバレルも精度が向上したためあまり起こらない。起こった場合は、専用の工具(クリーニングロッド)を銃口から差し込み、BB弾を押し戻して取り除く。
- ピストン・クラッシュ
- 電動ガンでもっとも怖い故障。ピストンを開放したあと、セクターギアの回転がが早すぎて、ピストンがシリンダーヘッドに衝突する前に再度引き始めてしまうことによって起こる。当然その状態ではセクターギアがピストンを引く途中でピストンは後ろの壁にぶつかり、作動が停止するか、セクターギアがピストンのギアに接触した所より後ろのギアが全部削られてしまう。(プラスティック製のピストンに鋼鉄製のカスタムギアを使用した際に起こりやすい)ピストンが引かれてしまった場合ここでヒューズが作動する場合が多いが、ほとんどの場合複数の部品交換あるいはメーカーでの修理を要する。原因としては、無対策に高電圧のバッテリーを使用したり、高速なモーターやギア比が高いカスタムギアを使用したりすることにある。
- 空撃ちによるメカボックスの破壊
- 電動ガンのメカボックスは、ピストンによって圧縮された空気がBB弾を押し出すことを前提に各部品の耐久性が設定されているため、空気を圧縮しないピストンがシリンダーヘッドにぶつかると、メカボックスに多大なストレスがかかる。エアコッキングガン全般にいえることだが、電動ガンは特に容易に高回転で発射が可能なためフルオートでこれを繰り返すとメカボックスが破壊されてしまう。BB弾を発射した場合は純正状態では2~3万発の耐久性を有するが、空撃ちでは最悪100分の1以下の作動回数でメカボックスの破壊が起きる。最も効果的な対策は、空撃ちをしないことであるが、どうしても空撃ちしたい場合は、マズルの安全プラグを装着して行うことである。(推奨はしない)
[編集] 長所
- セミオート、フルオートともに安定した弾速
- フルオート射撃では毎秒発射数15~17発を発射可能。但し(実銃がフルオート機構を持たずセミオートのみのPSG-1モデルを除く)
- 装弾数が多い
- ランニングコストが安い(詳しくは仕組みの欄を参照)
- オプションパーツが豊富
- メカボックス等のカスタマイズにより性能を変化させられる
[編集] 短所
おもにガスガンと比較している。
- ブローバック式のガスガンと比較して反動が弱く、リアルさに欠ける
- トリガーはスイッチとしての役割を重要視され、その引き心地の感触までは再現されていなかった。KSC製品がシアを内蔵することでこれに対応し、東京マルイ製品ではM14以降から改善されている。
- メカボックスに小さな不具合が生じても、簡単に分解できない
- メカボックスやバッテリーを内蔵する必要があるため、モデル化されるのは基本的に中型~大型の銃になる。
- 2004年に東京マルイがハンドガンサイズの「マイクロメカボックス」を採用したグロック18Cを発売し、解決をみた。
[編集] 主な用途
電動ガンはフルオート射撃が可能な点、装弾数が多い点などから主にサバイバルゲームに使われる。しかしそのうち味のそっけなさから撃って遊ぶだけのプリンキング用途にはあまり使用されない。しかしその命中精度は非常に優れているものもあるので、競技射撃に使用することもある。
最近では、サル被害に苦しんでいる住民が電動ガンを購入してサルに対して撃ち、追い払ったりしている。ただし、サルに当たると違法(動物愛護管理法違反 1年以下の懲役または100万円以下の罰金)なので、発射音だけで追い払ったり、サルの近くに打つことで驚かせて追い払ったりしている。後者のほうは効果はかなりのようで、ロケット花火や爆竹などの音には慣れるが、近くに弾が飛んでくると身の危険を感じるようで逃げる確率が非常に高いので、サル被害に効果的な対抗兵器である。