サバイバルゲーム
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サバイバルゲーム(サバゲー・サバゲ・SVGと略される場合もある)とは、主にエアソフトガンとBB弾を使って行う、戦争の歩兵による戦闘を模した撃ち合いを行う遊び、もしくは競技である。
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[編集] 概要
サバイバルゲームは趣味や娯楽としてのゲームで、遊びの範疇ではあるが、公式・非公式を問わず競技化されている物もある。
元来、子供の鉄砲ごっこや戦争ごっこ(→ごっこ遊び)から転じていった部分があり、エアソフトガンが存在しなかった時代には銀玉鉄砲のような玩具や、モデルガンないし巻き火薬鉄砲と呼ばれる、発射音はするが弾が発射できないもので同様の遊びが行われていた経緯があり、この他にも光線銃や水鉄砲で撃ち合う遊び等は今でも主に子供や未成年者の間では行われているが、本格的なサバイバルゲームが一般化したのは、日本の銃器専門誌にアメリカのペイントボールゲームが紹介された1980年代前半からである。日本国内においてペイントガンは炭酸ガスをパワーソースとする故に強力過ぎて所持が許可されていなかった為、その代替として当時にすでに日本の玩具銃業界に流通していた6mmのプラスチックBB弾を殺傷力の低いパワーで発射するエアソフトガンを使っての撃ち合いゲームとして徐々に全国に普及していった。その様な経緯から、ここでは主にサバイバルゲームとして認識される合法的なエアソフトガンを使用してのゲームについて記述する。
なお、銃刀法の改正により、2007年2月20日以降は規定値以上のパワーを持つエアソフトガンは所持しているだけで法的処罰の対象とされる様になっており、注意が必要である。
実際の戦闘(戦争)がモデルになっているという側面から嫌悪感を抱く人もいる。
敵味方に分かれてお互いを撃ち合い、弾が当たったら失格で片方のチームが全員失格になったら負けと言う点は、ゲームルールとしては単純明快である。ゲームの開始前に参加者同士で話し合うなどして、その場に応じて細かなルールを設定し、一度弾が命中してもその後のゲーム展開に再参加出来るようなルールを採用している場合もある。
しかし、サバイバルゲームはいまだ競技として公式なルールを制定する段階には至っておらず、ゲームで遊ぶグループ、または大会ごとにルールは微細に異なっている。なお、サバイバルゲームにおけるルールは競技としての意味合いから一般的にレギュレーション'と呼称するので、ここでの表記は「レギュレーション」に統一する。
[編集] 装備について
特徴的な装備は、主に撃ち合うための銃(エアソフトガン)と、その弾丸による負傷を防止するためのプロテクターなどがある。
靴については、山野を駆け回る事から動き易い運動靴か、軍用のジャングルブーツ等を履く場合が多い。
また、肌を露出していると弾丸が当たった際にケガをする可能性があるので、長袖・長ズボンで帽子やヘルメットを着用する者が多く、人によっては実際の軍服やそれのレプリカを身に付ける場合もある。
事故や傷病に備えて、医薬品や救急セットを用意するケースも見られる。
さらに、不慮の事故を防ぐため、たとえ弾が入っていないエアソフトガンであってもゲーム以外で銃口を人や動物に向けない、使用するまで安全装置を掛けておくなどが原則である。 オモチャの鉄砲とはいえ、適切な使用で楽しいゲームが望まれている。
[編集] ゴーグル等の着用義務
サバイバルゲームに参加する者、観戦する者は目を保護するため、必ずゴーグルを着用しなくてはならないとルールで取り決めている場合が殆どで、いくら他の装備をばっちり決めていても、ゴーグルがなければゲームに参加できないという場合が多い。玩具銃であるエアソフトガンとはいえ、目に当たれば眼球を傷付け、失明させるおそれがあるからである。 また、至近距離であれば、皮膚に当たったり、爪などの比較的硬いものであっても内出血を伴う傷を負う場合がある。 ゴーグルは最低でも目の周囲全体を覆うことができるものと規定しているルールが専らであり、且つゲーム開始前にゴーグルに向かって弾を撃ち、割れないものであることを確かめておく必要があると定めている団体もある。このため、レンズ部分が合成樹脂製のゴーグル以外に、金網を使用した物もある。
競泳用の水中眼鏡や、眼鏡型の保護具などで代用することはできないと定めている場合が多い。
また、たとえ死亡(後述)してもフィールド内ではゲームが終わるまではゴーグルを外してしまうと、「弾に当たっていない有効なプレイヤー」と判断され誤射にあったときに本末転倒な事態になる可能性があるので、少なくとも規定フィールド内では原則着用し続ける事が肝要である。
軍用の砂塵が目に入るのを防ぐのに用いるゴーグルを使用する人もいれば、ペイントボール用に開発されたフルフェイスタイプ(お面)を用いる人もいる。
実銃射撃に用いるサングラスタイプの保護眼鏡(シューティンググラス)は、横から飛んでくる弾をガードできないためゲームに用いるのは不可とされるが、そのような状況が起こる可能性の低いシューティングレンジ(射撃場)などではよく用いられるようである。
蛇足だが、顔面全体を通気溝のあいた強化プラスチックなどで覆うタイプのものは、特にフェイスガードと呼ばれる。
[編集] 武器
主力的に使用する物をメインアーム(ライフルやサブマシンガンの形をした物が多い)といい、補助的に使う目的の物をサイドアーム(拳銃など)と言う場合が多い。
しかし、使用できる武器は、そのゲームのルールによって異なる。
エアソフトガンであれば何でもありという場合もあれば、ゲーム形態によって様々なルールが制定され、ハンドガン以外は使用不可という場合、定弾(携行弾の制限、例:300発位)などや、銃自体使用しない場合(ゴム製等の模造刀剣類を使用)など様々である。 中には安価で飛距離の短いとされるミニ電動エアガンシリーズのみによるワンメイク(同一の道具を使う)ゲームも存在する。
ゲーム開始前にルールをよく確認しないと、無用なトラブルの元である。
通常、武器の威力に関しては、弾の重量と初速から計算できる物理学上の運動エネルギー値ジュール(J)や、明確な初速(銃口から所定の距離を通過する際の速度)においてルールが設定されている場合が多い。
例えば、"0.2g弾を使用して80m/sまで"などの表記は、その開催されるゲームにおいてのルールが、0.2gのBB弾を使用し、初速が毎秒80m以下でなければならない事を示している。
前途の新銃刀法の定める所によると、合法的なエアーソフトガンに許容されるパワーは、平地において気温が摂氏35度の環境下でマズルエナジー(銃口から発射された直後の威力)が0,989ジュールを超えない物と定義されている。
[編集] その他の装備
その他の装備については特に決まったものはない。殆どの場合ジーパンにトレーナーで参加はできるが、ルールによって使用する武器に制限があったように、例えば「ベトナム戦争当時のアメリカ軍及びベトナム軍の装備(服装)に限る」といった、いわば軍装ありきのゲーム(後述の「ヒストリカルゲーム」が代表的な例)が開催される事もある。
ゴーグルを着用しているかぎり、法律に触れない程度に自己責任で衣服の規定は無い場合が多いものの、山や森、廃墟といった場所を動くので、植物のトゲや鋭利な枝葉による切り傷や、急斜面での滑落時の擦り傷軽減などを考慮して長袖長ズボンを着るのが望ましい。実際には軍用の戦闘服(迷彩服)・帽子またはヘルメット・ブーツ(実物の払下品や放出品、または実物を真似て作製されたレプリカ)を着用し、手袋をするというスタイルが一般的である。
また、けがをしても応急処置ができるように、簡単な救急用具(絆創膏など)を用意しておくと意外と役に立つ。 そして、ペットボトルや水筒などで水を用意しておけば、渇きを癒す飲料水として使えるほか、傷口を洗う洗浄液としても使える。その他、衣類の簡単な補修のできるようにソーイングセットを持っていると便利である。
[編集] ゲームにおける「死亡」について
ゲーム中に失格になることを死亡という。死亡した参加者はゲームの行われている場所(フィールドという)から離れたところにある、セーフティゾーンへすみやかに移動しなくてはならない。なお、移動する時に仲間と会話したり、余った弾などを譲ったりすることはできないという厳格なルールも存在する。また、セーフティゾーンへ来たら、ゲームを行っている仲間に戦術を教えたり、ゲームが行われている会場に向けて弾を撃ってはならない。代表的な死亡の条件は次の通りであるが、ナイフアタックを認めていない場合もある。
[編集] ヒット
飛んできたBB弾に当たることをヒットといい、反対に、敵に弾を当てる事をゲットと呼ぶ。 ヒットの詳しい規定は、ゲーム、チームのレギュレーションによって様々である。
ヒットした者は直ちに相手に聞こえる声で「ヒット」と叫んで自分が死亡したことを周囲に知らせなければならないが、ヒットかどうかの判断は自己申告による。つまり、参加者の良心に任されている。体以外のところに当たったり、跳弾で勢いのなくなった弾に当たったりすると気づかないこともあるので、あまり悪質でない限りヒットの申告をしないのは「仕方が無い事」とされる(逆の立場なら許容すべきことである)が、弾に当たったことに気づいたらすみやかに申し出なくてはならない。公正を期するために、大きな大会では判定員が判定することもある。
被弾したのにヒットの申告をしない者を通称ゾンビという。ゾンビに対する罰則はないのだが、ゲーマーとして最悪のマナー違反であり、ゲームの楽しさを著しく阻害させる。
ゾンビをたびたび起こす者は、チームから排除されたりそのような者が在籍するチームとは試合を組んでもらえなくなるなどの事態に陥る。サバイバルゲーム愛好者のコミュニティは意外と横の繋がりがあり、どこかのチームから追い出された者に関する情報は自ずと周辺に伝搬するため別のチームに入団することも難しくなる。
[編集] フリーズコール
対戦相手に気づかれずに忍び寄り、忍び寄られた方が自らの形勢不利を認め降参すれば、死亡となる。 だが、トラブルの原因となる事が多いので、フリーズコールを採用するゲーム、チームは殆んど無い。
通常は忍び寄った方が「フリーズ(動くな!)」と声を掛け、忍び寄られた方が両手を挙げるなど、明確に降参をすればフリーズコールが成立する。
[編集] ナイフアタック
相手チームのメンバーに気づかれずに忍び寄り、ゴムナイフなどで背中などを攻撃することをナイフアタックという。ナイフとはいっても、ゴムやプラスチック製の模造ナイフを用いる。ナイフアタックをされた方は当然「死亡」となる。 ただし、咄嗟にさけられた場合など、どちらが先にナイフアタックを行ったかでもめるおそれがあるとして、ナイフアタックを認めていない場合もある。
また、ナイフなどによる攻撃を全面的に禁止し、素手によるタッチングをアタックと認め、避けられたりした場合などは相打ち死亡になるルールもある。 こうしたエアーソフトガンによらない攻撃は、近年ではトラブルの元として禁止されている大会が多い。
[編集] 遊び方と勝利条件
公式ルールがない分、多種多様ではあるが、制限時間があるのは共通している。代表的なのとして次のようなものがある。
[編集] フラッグアタック
2チームに分かれ、互いに適当な場所に陣地を決め、旗を掲げる。その旗の付近からスタートの合図で動き出す。そして、敵の陣地にある旗に触れれば勝ちである。または、旗を奪って自陣に持ち帰れば勝ちとするルールもある。
一般的には、いずれの場合も敵を倒した数は関係ないので、最終的な人数が相手よりどんなに少なくても、旗に触れれば(または旗を持ちかえれば)勝ちであり、制限時間内にどちらも旗に触れる(または旗を持ちかえる)ことができなかった場合は引き分けとなる。
[編集] 殲滅(せんめつ)戦
2チームに分かれ、互いに適当な場所に集合し、スタートの合図で開始する。敵を全員死亡させれば勝ち。どちらのチームも制限時間内に敵を殲滅できなかった場合には、生き残った人数の多い方が勝ちとするルールと、引き分けするルールがある。
[編集] バトルロイヤル
全員が適当に散らばって、特定の経過時間(例:5分後に開始)や何らかの合図で動き出す。自分以外の全ての参加者が死亡すれば勝ち。
[編集] ヒストリカルゲーム
史実にあった戦いを再現して行う、サバイバルゲームの持つ「戦争ごっこ」としての要素を極大化したといえるゲーム。その頃に使われた軍服・装備品を考証的に忠実に身を固めて行うのが特徴であり、勝敗そのものよりも「戦場の雰囲気を再現すること」に重点が置かれる。予めシナリオで勝敗が決められていることも多く、参加者はいかに史実上の戦いの兵士の役を演じるかが重要であるとされる。
[編集] インドアゲーム
トイガンメーカーやショップ等が所有する施設や、許可を得た廃建築物の中で行われる為、雨天や夜間でもゲームが行える。
[編集] マナー
ルールではないが、マナーとして周囲に気を配るということがゲーマーとしての常識となっている。 たとえば、次の通り。
[編集] 無関係な人への配慮
サバイバルゲームでは弾を飛ばすので、人通りの多い場所で行うと無関係の人に当たってしまう可能性がある。 そこで、たとえば人気のない山の中や森の中といったところで行い(専用フィールドを用いることが理想的である)、サバイバルゲーム中であることを知らせる掲示をしておくとともに、ホイッスルやベルなどを用意して、万が一人が通った時はそのホイッスルやベルを鳴らして、無関係な人がフィールド内を通ることを他のゲーマーにも知らせ、その音が聞こえたらすみやかにプレイを中断することにしておくなど、周囲の安全を確保しなくてはならない。
[編集] 大会会場への移動に際して
会場への行き帰りの服装が迷彩服だったりすると、その事を不快に思う人もいる。ゲーム中に迷彩服のような特殊な格好をするにしても、家から会場までは普通の服装でいき、会場で着替えてサバイバルゲームを楽しみ、帰宅時にはまた着替えて家に帰るのが最良とされている。仮に自動車で往復するとしても、世界各地で大小様々なテロ行為が実行されている治安情勢を考慮すると、自動車の中に迷彩服の人間がいるとなれば周囲に恐怖を与えてしまい、通報される可能性がある。
また、銃も会場以外では外から見えないようなケースや袋に入れて持ち運ぶのが常識である。銃をむき出しのまま持っていては軽犯罪法違反になり、間違いなく警察官の職務質問を受ける羽目になる。たとえケースに入れていた場合でも金融機関や商業施設などに持ち込んだ場合は強盗予備として通報される恐れもある。サバイバルゲームを趣味としないものにとっては、玩具であったとしても本物の銃として認識され、弾丸の発射の有無を問わず人々を威嚇するには十分な力を持っているからである。
この点を重視する主催者が大会を開く場合、案内書では、これらに関しての記述がなされ、終了時に口頭で説明してこのようなトラブルを起こさないように徹底する。主催者から見て一参加者の違反でトラブルが発生しても、事情聴取を通じて主催者にさかのぼって罪に問われることもあり得るからである。
[編集] ゴミ
自然を利用して遊ぶゲーム愛好者は、自然環境にも気を使うよう求められている。ゴミを持ち帰るのは当然で、タバコや菓子・清涼飲料水包装の投げ捨てに関しては、罰金を課す大会も存在するようである。
またこれらゲームではどうしてもエアソフトガンの弾が回収不可能な状態で散乱してしまい易いが、これらも可能な限り回収する事を勧める人もある。
その一方で生分解性プラスチックの登場以降、これ以外の使用を認めない大会・ゲームフィールドも見られる。一般にバイオBB弾と呼ばれるこれらの物は、1~3年で分解して自然に還元されると謳われている。しかし、自然に還る素材とはいえゲーム直後には大量のカラフルな弾丸が散乱している状態になるため、これに苦言を呈する登山者・自然愛好家もある。楽しく遊んだ後に他の人を不快にさせないよう、それなりの配慮が必要である。
[編集] フィールド
サバイバルゲーム行う場所の事だか、個人所有の私有地を専用フィールドと呼び、専門的にゲームを行える施設として広く一般ゲーマーに貸し出されている場所も存在する。