電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律
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電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律(でんししょうひしゃけいやくおよびでんししょうだくつうちにかんするみんぽうのとくれいにかんするほうりつ)とは、電子消費者契約に要素の錯誤があった場合と電子承諾通知を発した場合について民法の特例を定めた法律である。
この法律は、「電子契約法」、「電子消費者契約法」、「電子消費者契約民法特例法」などという略称で呼ばれることが多い。
目次 |
[編集] 主な内容
[編集] 定義(第2条関係)
- 電子消費者契約
- 消費者と事業者(法人や団体に限定されず、個人事業者を含む)との間でインターネット等の電磁的方法(後述)により締結される契約であって、画面に従って消費者が電子計算機を用いて申し込み又は承諾の意思表示をするもの。
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- 電子消費者契約の例:
- 消費者が、通販サイトの画面に従って住所やクレジットカードなどの情報を入力して、商品購入の申し込みを行なった。
- 電子消費者契約の例:
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- 電子消費者契約に該当しない例:
- 飲食店主が、店で利用するパソコンを通販サイトの画面に従い、住所やクレジットカードなどの情報を入力して、購入の申込みを行なった。
- (理由:飲食店主が店で利用するパソコンに関するものであるから、この場合は飲食店主は事業者であり消費者ではない。よって電子消費者契約ではない。)
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- 消費者が、ある事業者のサイトを見て魅力的な商品を見つけて購入を決意した。そのサイトは通販をしていなかったので、サイト管理者に「商品を購入したいのですが・・・」という電子メールを送ってみた。その後、サイト管理者から「お客様の氏名、商品の型番、数量、お届け先、希望お届け日を記載してメールして下さい。」と返信があったので、その通りにした。
- (理由:申し込みを電子メールで行なっており、その事業者のサイトの画面に従ったのではない。よって電子消費者契約ではない。)
- 電子消費者契約に該当しない例:
- 電磁的方法
- 法文上「電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法」とされている。Webからの申込みが代表的であるが電話、FAX、電子メール、無線なども含まれる。
- 電子承諾通知
- 契約の申込みに対する承諾をしようとする者が使用する電子計算機等(電子計算機、FAX、テレックス、電話をいう。)と、その契約の申込みをした者が利用する電子計算機等とを接続する電気通信回線を通じて送信する承諾の通知。
[編集] 電子消費者契約における錯誤(第3条関係)
電子消費者契約における錯誤について説明する前に、錯誤に関する民法の規定について述べる。
[編集] 錯誤に関する民法の規定
民法 第95条によると、錯誤に関して次のように規定されている。
- 意思表示は法律行為の要素に錯誤がある場合は無効とするのが原則。
- (ここでは説明の便宜上「民法の錯誤の原則規定」という。)
- 例外としては、表意者に重大な過失がある場合、表意者から無効を主張できない。
- (ここでは説明の便宜上「民法の錯誤の例外規定」という。)
[編集] 錯誤に関する電子契約法の規定
「民法の錯誤の例外規定」は、消費者が行なう電子消費者契約の申込み又はその承諾に意思表示について、その契約の要素に錯誤があった場合であって、当該錯誤が次のいずれかに該当する場合は適用しない。
但し、事業者側が意思表示の確認処置を講じた場合又は消費者からそのような確認処置が不要であるという意思の表明があった場合は、この限りではない。
- 消費者が電子消費者契約の申込み又はその承諾をする意思がなかったとき。
- 消費者が電子消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示と異なる意思表示をする意思があったとき。
規定が複雑なため具体例をしめす。
- 消費者が電子消費者契約の申込み又はその承諾の無効を主張できる場合
- 消費者が通販サイトで操作ミスをして購入したくないのに「購入」ボタン押してしまった。「購入」ボタンを押した後、直ちに「お買い上げありがとうございました。」という表示が出てしまい、操作ミスを回復することができなかった。(購入する数量や配達先を間違えてしまったような場合も同様。)
- 消費者が電子消費者契約の申込み又はその承諾の無効を主張できない場合
- 消費者が通販サイトで操作ミスをして購入したくないのに「購入」ボタン押してしまった。「購入」ボタンを押した後、確認画面が表示され「購入内容は以下の通りですか?」となり「購入する」と「購入しない」のいずれかのボタンを押すようになっていた。ここでも操作ミスをして「購入する」ボタンを押してしまった。(購入する数量や配達先を間違えてしまったような場合も同様。)
なお、錯誤に関する電子契約法の規定は、消費者と事業者間に限られた規定であることに注意すること。
[編集] 電子承諾通知(第4条関係)
電子承諾通知について説明する前に、隔地者に対する意思表示に関する民法の規定について述べる。
[編集] 隔地者間の意思表示に関する民法の規定
民法によると、
- 隔地者に対する意思表示は、その通知が相手方に到達したときからその効力を生じるのが原則。(ここでは説明の便宜上「民法の隔地者に対する意思表示の原則規定」という。)
- 例外としては、隔地者間における契約は、承諾の通知を発したときから成立する、とされる。(ここでは説明の便宜上「民法の隔地者間の契約に対する例外規定」という。)
とされる。(民法 第97条第1項、第526条第1項)
[編集] 電子承諾通知に関する電子契約法の規定
電子契約法によると、「民法の隔地者間の契約に対する例外規定」は電子承諾通知を発生する場合には適用しない、とされる。 言いかえると、隔地者間の契約では電子承諾通知が相手に到達したときに契約が成立する、ということになる。
また、電子承諾通知に関する電子契約法の規定は、消費者と事業者間に限られた電子承諾通知に対する規定ではなく、電子承諾通知全体に関する規定である。(錯誤に関する電子契約法の規定とは、適用範囲が異なる。)
[編集] 補足説明
- 隔地者
- 応答が直ちに期待できない状態の者を意味している。例えば、電話の相手は距離が離れていても会話できて応答が直ちに期待できるので「隔地者」ではなく、電子メールや郵便物の送り先は応答が直ちに期待できない状態の者であるので「隔地者」である。
- (意思表示などの)到達
- 相手が意思表示などを見ようと思えば見られる状態になれば「到達」である。実際に意思表示を見た時点で「到達」ではない。例えば、郵便物であれば相手の郵便受けに入った時点、電子メールであれば相手のメールサーバーに届いた時点で「到達」と考えられる。