骨髄バンク
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
骨髄バンク(こつずいバンク、Marrow Donor Program)とは、白血病などの血液疾患の治療として造血幹細胞移植(特に「骨髄移植」)が必要な患者のために、血縁関係のない健康な人(非血縁者)から提供される「骨髄液」を患者に斡旋する仕組み及びその業務を担う公的機関のこと。
骨髄バンクは世界各地に設置されており、特にアメリカ、ドイツ、イギリスなどにおいて活動が活発であると言われる。また、各バンクに登録されているHLA型のデータを集約している「世界骨髄バンクドナー集計システム」(BMDW:Bone Marrow Donors Worldwide)には世界42カ国で57バンクが参加し、各バンクに登録されたHLAデータ(さい帯血バンクのものも含む)の合計は2005年11月16日に1,000万件を突破した。(なお、BMDWに参加していない骨髄バンクも4バンク存在する)
日本においては骨髄移植推進財団が主体となり、日本赤十字社(骨髄データセンター)及び各都道府県等(保健所)の協力を得て、1991年12月より日本骨髄バンク(JMDP:Japan Marrow Donor Program)の運営を行っている。本稿においては主にこの日本骨髄バンクについて取り上げる。
[編集] ドナー登録の方法と提供の概要
骨髄液を提供するためにはあらかじめ骨髄バンクに登録することが必要であり、骨髄提供希望者のことを「ドナー」と呼ぶ。
- 「ドナー登録条件」を満たしているか確認する。
- 登録時の年齢は18歳~54歳(提供は20歳~55歳)、体重が男性45kg・女性40kg以上で過度の肥満ではない、最高血圧90~150・最低血圧100以下、輸血経験・貧血・血液疾患・感染症はない、など。
- ドナー登録について説明したパンフレット「チャンス!」を読む。
- 各地の献血ルーム、病院などで配布されている場合がある。郵送を申し込むこともできる。
- 最寄の受付場所を選び、電話で登録の予約をする。
- 全国各地の保健所、献血ルームなどで登録ができる。また、繁華街などで休日の登録会を行う場合もある。
- 登録の際には説明のビデオなどにより骨髄提供について理解した上で、医師による問診、2cc程度の採血を行う。
登録について詳しくは骨髄バンクのサイトにて解説されている。骨髄バンクドナー登録
この登録の際の採血では「HLA型」を検査するのが主目的である。HLA型とは白血球のいわば血液型に当たるもので、その適合確率は兄弟間で4分の1、非血縁者間だと数百人~数万人に1人しか適合しないと言われている。そのため骨髄移植推進財団では、適合者が見つかりやすくなる水準として30万人のドナー登録者獲得を目指している(2006年6月末現在の登録者数は約25万人)。
登録後、移植希望患者とのHLA型が適合する可能性が判明すると2次検査や3次検査などが行われる。郵送による問診票の記入の後、病院にて採血や血圧測定といった基本的な検査が行われる。ここで採血した血液を基にDNA検査などの詳しい検査が行われ、最終的なドナーが決定される。
骨髄提供のドナー候補者に選ばれると、ドナー候補者本人とその家族が出席した上で最終同意の確認が行われる。この段階まではいつでも提供を取り消しできるが、最終同意書に同意した後は取り消せない。 最終同意書が締結されると、病んだ骨髄細胞をドナーの骨髄細胞に置き換えるためにレシピエント(移植受容患者)の骨髄細胞は放射線や薬品で全て破壊される。そのため、最終同意後にドナーが移植を拒否すると、移植を予定していた患者は生命の危機に陥る。
提供のために骨髄液を取り出すには手術が必要であり、4日~1週間程度の入院が必要になる。手術自体のリスクは低いが、全身麻酔が必要なためそれに伴うリスクがある。一方レシピエント(受け取る側)への処置は、静脈点滴により血管内に骨髄細胞を注入することで行われ、手術などは必要ない。
現状ではHLA型が適合したドナーが(最終同意前に)提供を断るケースが少なくない。その要因としては結局家族の反対に遭ってしまう、仕事を休みにくい(休業補償がない、周囲の理解が低い)などが指摘されている。このうち休業補償の確立については骨髄バンク支援基金事業団がその実現に向けて取り組んでいる。
[編集] 関連項目
- 献血
- アイバンク
- さい帯血バンク
- 臓器提供意思表示カード
- 移植 (医療)
- hide - 骨髄バンク運動に積極的に参加、自身も骨髄バンクに登録。
- 井原正巳 - hide同様、自身も骨髄バンクに登録。
- 本田美奈子. - 彼女の遺志を継ぎ、“LIVE FOR LIFE”活動として、骨髄移植推進財団とパートナーシップを結ぶ。
- スーパーバンド - 骨髄バンク支援ソング「笑顔のゆくえ」。骨髄移植推進財団公認。