FPU (放送)
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FPU(Field Pickup Unit)はテレビジョン放送用の無線中継伝送装置のこと。英語ではMicrowave link(マイクロ波回線)と呼ぶのが一般的である。
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[編集] 概要
主に放送局外から映像素材を演奏所にUHF波あるいはマイクロ波を用いて直接または間接的に伝送し、演奏所では受信した映像を加工して番組として放送する。代表的な使用例は報道、スポーツイベントの中継などである。特にマラソンや駅伝の中継では、地理的に広範囲をカバーする必要性から、数十台、時には百台以上のFPU送受信機を駆使する場合がある。 (マラソンや駅伝の中継で各地の系列局の中継車が使用されるのもこのためである)
装置は、送信機と受信機とに別れ、それぞれマイクロ波用パラボラアンテナと一体化した高周波部と制御部の計4筐体に分かれる例が多い。これは制御部にテレビカメラやマイクロフォンなどの信号を接続する一方、アンテナの付いた高周波部を、見通しの利く高所に配置するためである。但し、UHF帯ではアンテナが大きくなるため、これを外付けとしている。
送信機から出された電波は放送局(演奏所)の社屋で直接受信できる場合もあるが、直接見通せない場合は高い山や鉄塔に設置した受信機で中継する。放送局自身の送信所への見通しがきく場合が多いため、ここに受信設備が置かれることも多い。 また、取材先の中継車で受信し、ここで一次的な番組制作を行うこともある。
[編集] 伝送方式
伝送方式に当初より用いられてきたアナログ方式(FM方式)と、1990年代後半から導入され始めたデジタル方式とがある。後者はシングルキャリア、すなわち搬送波を一つだけ用いるQAM方式と非常に多数の搬送波を高密度に配置するマルチキャリアのOFDM方式とがある。
日本ではUHFおよびSHFで以下の周波数の割当がある。
- 800MHz帯:770MHz~806MHz
- Bバンド:5850MHz~5925MHz
- Cバンド:6425MHz~6570MHz
- Dバンド:6870MHz~7125MHz
- Eバンド:10,250MHz~10,450MHz
- Fバンド:10,550MHz~10,680MHz
- Gバンド:12,950MHz~13,250MHz
[編集] 特徴
通信衛星を利用して至る場所からでも中継ができるSNG (放送)とは異なり、FPUは地上波による伝送で、中継波を直接演奏所や中継所に伝送しなければならないので電波の届く範囲でなければ中継ができないなど運用が限られる。FPUでの伝送しかできない放送局の中には、中継車を2台用意し、中継車から電波をもう一台の中継車に送信し、さらに最寄りの中継所へ送信するリレー方式を取っている。