IDEF
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IDEFとは、1970年代から1980年代にかけて開発された一連の定義言語の総称であり、各種モデリングの標準規格として利用されている。機能モデリング、情報、シミュレーション、オブジェクト指向(分析と設計)、知識獲得など様々な分野をカバーしている。特に IDEF1X は実体関連モデルを元にアメリカ空軍が作成したもので、実体関連図の表記法として一般化している。
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[編集] 歴史
IDEF はアメリカ空軍の Integrated Computer-Aided Manufacturing (ICAM) イニシアチブの成果物である。IDEF は ICAM Definition language の略とされている。ICAM の母体となったプロジェクト Integrated Information Support System (IISS) は、異機種混合型の環境での情報処理を目的としていた。それは、軍需産業の各社や同盟各国を相互に接続するための汎用サブシステムを構築することが目標であった。
当時、データを格納する手法は様々でほとんど互換性がなかった。例えば、逐次型(VSAM)、階層型(IMS)、ネットワーク型(Cincom の TOTAL、CODASYL、Cullinet の IDMS)などである。RDBMSは、まだデータ管理の標準として広く受け入れられてはいなかった。
ICAM では、データの物理的な格納方法とは無関係にデータを処理するには、実装されているデータ構造を表現する中立的方法を確立することが重要と考えた。そのため IDEF1 言語は既存の物理的データ構造を表現する中立的な記法として作成され、実装方法やファイルアクセス手法に依存せずに適用可能とされた。IDEF1 は IISS-6201 プロジェクトの成果であり、後に IISS-6202 プロジェクトで IDEF1X に拡張された。IDEF1 によるデータモデリングの最大の利点は、データ格納方式に依存しないデータ構造表現能力である。そのため、当初の目的は物理データ構造を中立的にモデル化することであったが、要求分析でのデータ構造表現に広く使われるようになった。これにより、データ構造が明らかになった後でDBMSを選択できるようになり、要求されるデータ構造とDBMSの機能や容量との不整合が起きにくくなった。
IDEF はアメリカ合衆国政府の資金で作成されたため、パブリックドメインとなっている。そのため、初期のCASEツールでは、データモデリングの表現手法として IDEF1X を使っているものが多い。
なお、IISS プロジェクトは異機種混合環境で実際に動作する情報処理環境のプロトタイプを実際に生み出した。現在ではJava言語やODBCが担っている機能だが、IISS はその先駆けであった。
[編集] IDEF手法
1995年時点で手法5から14は詳細化されていない。[1]
- IDEF0 : 機能モデリング(Function Modeling) [2]
- IDEF1 : 情報モデリング(Information Modeling) [3]
- IDEF1X : データモデリング(Data Modeling) [4]
- IDEF2 : シミュレーションモデル設計(Simulation Model Design)
- IDEF3 : プロセス記述獲得(Process Description Capture) [5]
- IDEF4 : オブジェクト指向設計(Object-Oriented Design) [6]
- IDEF5 : オントロジー記述獲得(Ontology Description Capture) [7]
- IDEF6 : 設計原理獲得(Design Rationale Capture) [8]
- IDEF7 : 情報システム監査(Information System Auditing)
- IDEF8 : ユーザインタフェースモデリング(User Interface Modeling)
- IDEF9 : シナリオ駆動情報システム設計(Scenario-Driven IS Design)
- IDEF10 : 実装アーキテクチャモデリング(Implementation Architecture Modeling)
- IDEF11 : 情報加工物モデリング(Information Artifact Modeling)
- IDEF12 : 組織モデリング(Organization Modeling)
- IDEF13 : 3スキーママッピング設計(Three Schema Mapping Design)
- IDEF14 : ネットワーク設計(Network Design)
[編集] 参考文献
- IEEE Std 1320.1-1998. IEEE Standard for Functional Modeling Language—Syntax and Semantics for IDEF0. New York: IEEE, 1998.
- IEEE Std 1320.2-1998. IEEE Standard for Conceptual Modeling Language Syntax and Semantics for IDEF1X. New York: IEEE, 1998.
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- Integration Definition for Information Modeling (IDEFIX) -- 93 Dec 21 ワード形式
- Integrated DEFinition Methods
- Data Modeling
カテゴリ: コンピュータのデータ | 人工言語 | 工業規格