PowerPC 604
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PowerPC 604シリーズはアップルコンピュータ、モトローラ、IBMが共同で開発した32bitRISCプロセッサである。PowerPC 601の後継として演算能力に主眼を置いて開発された。アップルコンピュータのPower Macintoshシリーズなどに広く採用された。
PowerPC 604には発展系の604e及び604evがある。604evはMach5の名称でも知られている。
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[編集] 設計
PowerPC 604シリーズは601シリーズに比べ強力な演算能力を持つ。また、601シリーズと異なりPOWERアーキテクチャとの互換性はない。主な仕様は以下の通りである。
- 32bitアドレスバス
- 内部/外部64bitのデータバス
- 整数演算ユニット×3(単精度×2、倍精度×1)
- 浮動小数点演算ユニット×1
- 604では32KB、604e及び604evでは64KBのL1キャッシュ
- 604及び604eではシステムバスにL2キャッシュ、604evではインラインL2キャッシュに対応
- コア1.9V、I/O3.3Vの動作電圧
- 消費電力はPowerPC 604e 250MHzにおいて6W/10W(平均/最高)
- パワーマネージメントシステム
- マルチプロセッサ対応
動作クロックは初期の604で120MHz、最終的には604eで350MHz、604evで400MHz(パソコンに搭載されたのは350MHzまで)。
[編集] 特徴
PowerPC 604シリーズの特徴はその強力な演算能力にある。三つの整数演算ユニット、1つの浮動小数点ユニットを並列で動作させることができ、マルチプロセッサ構成にも対応していた。消費電力は、同世代の603シリーズに比べ明らかに大きいものの、Pentiumシリーズと比べると圧倒的に小さく、比較的低消費電力なプロセッサであるといえる。
アップルコンピュータのPower Macintoshシリーズなど、ミッドレンジからハイエンド向けの据え置き型パソコンに採用された。一方でノートパソコンに搭載されたことはない。
卓越した演算能力は大きな特徴であったが、その一方で構造が複雑で高クロック化が難しいという欠点も抱えていた。また末期にはL2キャッシュシステムの旧弊化が目立ち、その打開策としてMach5で採用したインラインキャッシュは非常に複雑で部品点数も多く、価格の高騰を招いた。Mach5登場の僅か数ヶ月後には安価かつ高性能なPowerPC G3シリーズが登場、Mach5搭載のハイエンドパソコン(50万円を軽く超えたもの)の処理能力をG3搭載のローエンドパソコン(20万円程度)が追い抜くという事態も発生した。このため604シリーズはG3よりも低性能であると一般に考えられがちだが、L2キャッシュなどの影響を考慮しない、純粋な演算能力の比較では604シリーズがG3を圧倒する。604シリーズの強力な浮動小数点ユニットは、後にPowerPC G4に採用された。
[編集] 製品
- PowerPC 604
- PowerPC 604e
- PowerPC 604ev
[編集] 関連項目
カテゴリ: マイクロプロセッサ | IBM | アップルコンピュータ