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ノートパソコン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ノートパソコン(ThinkPad)
ノートパソコン(ThinkPad

ノートパソコンとは、モニタなどの表示画面、キーボードポインティングデバイスなどの入力装置、バッテリー電池)などがコンピュータ本体と一体化された、ユーザーが任意の場所へ移動させて利用する(持ち運ぶ)ことを前提として設計された、軽量のパーソナルコンピュータの総称である。この呼び名は和製英語であり、英語では、主にLaptop (Computer)と呼ばれ、Notebook Computerと呼ばれることは少ない。日本語では、「ノートパソコン」と「ラップトップパソコン」を、大きさによって呼び分けるのが一般的である。

目次

[編集] 概要

電子部品の小型・低電力化や、機械的構造の高度な設計など総合的な技術が求められることから、長い間日本のお家芸であったが、1998年頃から、大型の機種については台湾中国などに生産を移管するメーカーや、現地企業に設計・生産を委託し独自の設計・製造からは撤退するメーカーなども相次ぎ、現在日本国内で生産している製品は、その設計と生産に特に高度な技術が要求される極一部のB5サイズ以下の小型のものに限られているともいわれている。

近年では電子部品の高性能、高密度化や、部品実装技術の向上、素材の性能向上などの発展により小型化、軽量化が進み、演算性能も飛躍的に向上している。また、バッテリーの性能向上もノートパソコンの発展に大きく貢献している。日本では住宅事情などにより、2000年以降このノートパソコンがパソコン市場の主流となっており、自社PCのラインアップをノート型のみとするメーカーも存在する。また従来はコストパフォーマンス重視でデスクトップ機が主流であったアメリカ合衆国やヨーロッパでも、ノートパソコンによるデスクトップパソコンの置き換えが進んでいる。

この分野のパソコンが登場した当初は呼称が統一されておらず、「ブックパソコン」と称していたパソコン雑誌などもあった。

[編集] 歴史

[編集] ノートパソコン以前

1980年代のはじめ、最初期のポータブルパソコンは、トランクやスーツケース大の筐体にCRTや補助記憶装置を詰め込み、何とか持ち運びが可能な状態に組み上げた製品であった。オズボーン・コンピュータのオズボーン1や、コンパックCompaq Portableなどがそのルーツである。

後にA4サイズ程度の持ち運べるコンピュータが開発され、ハンドヘルドコンピュータと呼ばれた。フルキーボードと小さな液晶ディスプレイを備え、バッテリー駆動が可能であった。マイクロカセットプリンタなどの入出力機器を搭載したものもあったが、基本的にはデスクトップタイプのパソコンとは互換性のない、別個の商品として扱われていた。

1980年代中期には、デスクトップタイプのパソコンと互換性を保ちながら、持ち運んでの利用を可能にしたパソコンが開発された。二つ折りにすることで、フルキーボードと大画面を両立させ、折り畳んだ状態で持ち運ぶハンドルを備えていた。椅子に座った膝の上で操作できるという意味で、「ラップトップパソコン」(英語:Laptop Computer)と呼ばれていたが、重さが5kg以上の製品も多いため、ラップクラッシャーなどと揶揄されることもあった。

[編集] ノートパソコンの誕生

そんな中、A4ノートサイズ、2.7kgと軽量で、最小限のインターフェースを装備しながら、大型の液晶ディスプレイを備え、デスクトップタイプのパソコンと互換性を保持した製品として、1989年6月27日発表、同年7月に東芝から発売されたDynaBook現・dynabookJ-3100SSは、198000円という価格で衝撃を与えた。発表こそ セイコーエプソン のPC-286NOTE executive が先んじていたものの(1989年6月7日発表、同年 9 月発売、重さ 2.2kg、458000円)、価格的には競合にならなかった。これらは、1989年10月には NEC より発売された PC-9801n とともに、「ノートパソコン」という新たな市場を切り開いた。 1991年にはアップルコンピュータPowerBookシリーズの発売を開始、キーボードの手前にパームレストポインティングデバイスを配置するという現在のノートパソコンのデザインの原型となった。

[編集] 現在のノートパソコン

現在では、タッチパッドやポインティング・スティックといったポインティングデバイスの装備は必須となり、液晶ディスプレイはカラー化され、PCカードUSBなどのインターフェース、モデムイーサネットといったネットワーク機能まで備えるようになり、搭載されるプロセッサの処理速度や搭載メモリ容量なども長足の進歩を遂げた。これにより、デスクトップ型パソコンの補助としての用途だけでなく、デスクトップ型に替わりメインマシンとして使用されることが一般的となっている。

[編集] 構造

軽量化とバッテリーで動作できるように、モニターには液晶ディスプレイが使われており、形態としては基本的に二つ折り形状となっている。閉じた際の大きさで下記の4サイズ程度に分類される。

形状 Wikipediaメインページ
比較参考画像1
Wikipediaメインページ
比較参考画像2
特徴
A4サイズ以上 液晶画素数1600x1200
EPSON Endeavor NT-5000
液晶画素数1400x1050
IBM ThinkPad T42
売価10万円以下の安価な機種から、数十万円の高級機種まで存在する。液晶に14インチから17インチ程度のものが使われ、大型のものでは重量も3~4キログラム程度あり、一般に徒歩で持ち運んでの(モバイル)利用には不向きだが、一方で薄型で重量を2キロ台に抑えたスリムノートといわれるものもある。

かつてはFDD、HDDとCDなど光学ドライブを内蔵した3スピンドル構成が一般的であり、インターフェイスとしてシリアルポートパラレルポート等のレガシーデバイスを搭載していたが2002年の後半以降からはHDDと光学ドライブの2スピンドルになりレガシーデバイスがほぼ排除された。デスクトップパソコンに比べコンパクトな点を生かし、特に日本の狭いオフィスや一般家庭では、デスク上に固定した状態で使われることが多い。トランスポータブルパソコン(ポータブルパソコン)または可搬型パソコン(キャリアブルパソコン)と呼ばれることもある。

B5-A4サイズ 液晶画素数1024x768
Dynabook SS 2000-DS80P
液晶画素数1024x768
ドッキングベースに搭載されたCompaq Armda M300

ドッキングベース搭載
コンパクトノートと呼ばれ、液晶は12~14インチ程度。1スピンドルタイプの薄型ノートに別途CDD・FDDを内蔵したドッキングベースを付属(またはオプション別売)させたものなどが1990年代後期まで発売された(多くはビジネスノートとして法人向けに流通)。

2001年以降は低消費電力の1.8型小型ハードディスクドライブの開発、リチウムイオンポリマーバッテリのモバイルPCへの採用、液晶パネルの技術レベル向上で、より「薄く・軽さ」を特徴にした1キログラム前後の1スピンドル薄型ノートも各社から登場した。気軽に持ち運べキー入力環境も良好な個人用パソコンとして、若年層を中心にコンパクトノート需要は伸びた。

B5サイズ程度 液晶画素数1024x768
IBM ThinkPad X20
液晶画素数800x600
SONY Vaio 505EX
サブノートパソコンとも呼ばれ、ノートパソコンとしては小型のもの。液晶は10~12インチ程度。重量1~2キログラム弱程度で、持ち運んでの利用を想定していることが多い。そのため多くはHDDのみ内蔵する1スピンドルであるが、HDDとCDなど光学ドライブを内蔵する2スピンドルの機種も登場している。公共交通機関に依存する日本の通勤環境で苦なく携帯可能でかつディスプレイやキーボードの大きさでストレスなく使用できる条件の折衷として好まれ、殆どの国内メーカーからこのサイズが販売されている。
B5サイズ以下
(A5サイズなど)
液晶画素数800x480
TOSHIBA Libretto FF1100
ミニノートとも呼ばれ、さらに大きさを切り詰めたもの。液晶は10インチ以下で、表計算などのアプリケーションの使用には難がある。重量は800グラム~1キログラム強まで。1スピンドルで、キーボードの大きさも縮めているため入力が行いにくくなる。

サブノートパソコンやミニノートは日本のPC市場で大変人気があり、各社は日本市場向けに小型ノートパソコンを生産している。日本では漢字入力のためPDAがあまり普及しないということもあり、その代替として携行PCとして普及している。

バッテリーに関しては技術革新が著しいものの、依然として充電式のバッテリー駆動によって充放電サイクルを繰り返すにつれて容量が劣化して行くという構造的な問題を抱えており(これはPDAハイブリッドカーなど充電池を使用する他の製品にも同じ事が言える)、高価なバッテリー交換を必要とする場合も少なくない。また、低電圧化が進む現在でも依然として消費電力の高いCPUや液晶パネル(特にバックライト)、各種ドライブなどを使用している事もバッテリーの小型化を阻害している要因にもなっている(現状では乾電池など手軽に店頭で買えるものでは、ノートパソコンを実用的に駆動するには余りにも高すぎる壁に当たっている状況である)。その為、外部に持ち出す際に長時間駆動するにはACアダプターも持参する必要性が高い状況も珍しくない。一部のメーカーでは充電式電池に代わって、アルコール(メタノール)を補給して電力を発生させる燃料電池の開発が進められているが、これらの意味を含めて、まだまだ技術革新の必要性が高い製品といえる。

[編集] 別の分類方法

内蔵するデバイスのスピンドル(すなわちモーター軸)の数で以下のように分類されることもある。

  • 0スピンドル(スピンドルレス、ノンスピンドル) - 機械的な記録ドライブを使用しない。HDDも使用せず、代わりにフラッシュディスクを搭載する。ノートパソコンでも2006年頃からミニノート・パソコンで出現しはじめた。機械部品を用いないことから耐久性や低消費電力に優れるが、2006年時点ではフラッシュディスクが高価なためごく少数にとどまる。従来のポータブルノートパソコンよりも本格的な1kg未満のモバイルパソコンでの普及が見込まれる。
  • 1スピンドル - HDDのみを内蔵する。持ち運び・軽量・小型化を重視したサブノート、ミニノートはほとんどこの形。(ただし、最近ではサブノートクラスでは光学ドライブを内蔵する機種が増えてきた。)外部とのデータのやり取りはネットワーク、USB接続による外付けドライブを利用する。
  • 2スピンドル - HDDと、FDDまたはCD-ROMなどの光学ドライブを内蔵する。A4サイズの大型機でも2002年頃から、FDDを省略してHDDと光学ドライブを内蔵したものがほとんどである。逆に1キログラム強のサブノートクラスでもHDDと光学ドライブを内蔵したものがある。現在のノートパソコンの主流となっている。
  • 3スピンドル - HDD、FDDとCD-ROMなどの光学ドライブを内蔵する。2002年頃までのA4サイズの大型機はほとんどHDD、FDDとCD-ROMが内蔵されていたが、2002年頃からはFDDは内蔵しなくなる(外付けのUSB接続のFDDを利用)傾向にあるため、3スピンドル型のノートパソコンは減少している。

[編集] 性能・用途別の分類

  • 普及機 - 15.4インチの液晶にほどほどの性能のCPUとメモリーを搭載したモデル。性能も価格も高すぎず、軽いとはいえないが携帯も可能。使い勝手がいいので各社の売れ筋商品であり、鎬を削っているモデルである。グラフィックチップの搭載はメーカーの方針による。BTOによってはハイスペックモデルにすることも可能。
  • ハイエンド - 17インチ以上の液晶に最高レベルのCPUを搭載したモデルでハードディスクの容量を除けばハイスペックのデスクトップと引けをとらない。ブランドによってはBlu-ray DiscドライブやHDドライブ、地上デジタルチューナーも搭載していることも。大きさと重さによって携行性も落ちているのである意味ではデスクトップとの境界があいまいになっているモデルである。現在、日本で販売しているメーカーは東芝、富士通、ソニー、デル、ショップブランドなどでそれぞれ各社のカラーがはっきりと出ているのが特徴。
  • ハイエンドモバイル - 13インチ以下の液晶に高性能のCPUを搭載したモデル。携帯性と高性能という矛盾する要素をうまい具合に華ね揃えたが、一般層よりも、マニア層に受けるモデルである。
  • ビジネスモバイル - ビジネスで持ち歩くことを想定して作られたモデルで携帯性と堅牢性、バッテリーの持続時間が強化されているのが特徴。ビジネスバックに簡単に収めることができ、ラッシュにもまれても壊れないように頑丈な筐体に基盤を入れている。CPUも低電圧バージョンの物を採用するなど省エネに気を配って稼働時間を延ばしている。その他にもハードディスクに対する負荷を軽減する仕組みを採用したりとか、キーボードに水をこぼしても大丈夫な仕様も存在する。ただし、性能が二の次になっているきらいがあるのでメインマシンとして使うには力不足な面がある。この分野では松下の独壇場であるが最近ではソニーや富士通も対抗するモデルを販売するなど他社も追撃する気配を見せている。
  • テレパソ - パソコンでテレビを見るためのモデル。テレビチューナーを搭載しているのが条件で、地デジチューナー搭載の大型ノートブックからワンセグ搭載の1スピンドル機まで幅が広い。パソコンとしての性能もさることながらチューナーソフトの使い勝手の良さも求められる。

[編集] 拡張機能

拡張機能 参考画像 特徴
PCカードスロット関連 PCカードスロット
PCカードスロット
ノートパソコン特有の拡張機構としては、ほとんどの機種がPCカードスロットを持っており、デスクトップPCにおけるPCIスロットに相当する汎用拡張スロットとして、通信など各種入出力系のインターフェースカードや、メモリカードなどを装着して利用することが可能になっている。なお、2005年頃から、互換性のない新しい規格として、ExpressCardスロットを搭載した機種も登場しており、2007年初頭時点ではPCカードスロットを持った機種とExpressCardスロットを持った機種が混在している状況である。
周辺機器の接続ポート関連 VGA-RS-232C-ParallelPort
接続端子
プリンタなど周辺機器の接続ポートについては、従来は、大型のものでは本体にシリアルポートパラレルポートPS/2(キーボード、マウス)などの入出力ポートを一通り備えており、小型のものではポートリプリケータやドッキングユニットによって多くの入出力ポートを利用することができたが、近年ではこれら入出力ポートが省略され、USBポートに統一される傾向にある。(デジタルビデオカメラやハードディスク接続用にIEEE1394を搭載する機種もある)

外部ディスプレイを接続するための出力端子として、一般的にVGA端子DVIが備えられている。ディスプレイの故障時に代替のディスプレイを接続したり、プレゼンテーション場面ではプロジェクタを接続するために欠かせないものである。また本体の画面と同時にデュアルディスプレイ表示ができる機種もある。オーディオ・ビジュアル指向の強い機種ではS端子も搭載される。また、小型の機種では端子の設置面積を減らすため専用の端子を用意し、付属の変換ケーブルを介して接続をする例もある。

音声入出力端子としてヘッドフォン出力端子やライン入力端子、マイク入力端子などが搭載される。それらは光デジタル入出力端子と兼用になっている場合がある。最近では、ボリューム調整つまみは省略される傾向にある。

CD-ROM,DVDドライブ関連 着脱式CD-ROMドライブ
着脱可能なCD-ROM Drive
一般ユーザー向けノートパソコンにはDVDドライブ仕様の採用が進んでいる。またDVD-R,RWなどを標準搭載したエントリーモデルも増加している。法人向けビジネスノートも同様にDVDドライブの採用が増えている。またコストパフォーマンス重視のノーマルなCD-ROMドライブ仕様でのノートPC販売も継続している。

光学ドライブユニット自体の着脱が可能となっている機種もあり、光学ドライブ以外にもセカンドHDDや予備バッテリを装着させることもできる。

イーサネットLAN・モデム関連 PCカード型無線LANカード
PCカード型無線LANカード
イーサネットは従来はPCカードを利用して接続していたが、オフィス向けを中心に1998年頃からは標準で内蔵した機種が登場し始め、ADSLなどのいわゆる「ブロードバンド」が普及し始めた2002年頃からは、ほとんどの機種がイーサネットを標準で持っており、さらには無線LANBluetoothも内蔵装備する機種も増えている。

通信機能としては、持ち運んで利用することを想定しているためか、古くからモデムが内蔵されている場合がほとんどで、現在でも標準で内蔵されている機種が多い。企業向け製品など、一部ではIrDAを備えている。

USB関連 USB接続CD-R-RW
USB接続CD-R-RW
ほとんどのノートパソコンに標準搭載されているUSBによっても様々な機能の拡張が可能であり、製品カテゴリもUSBとPCMCIAの双方で重複する領域が少なくない。1スピンドルのコンパクトノートやミニノートなどのPCユーザー向けに、高速USB2.0接続で使用する外付けDVD-ROMドライブや外付けハードディスクドライブなど、各社から関連商品が発売されている。
FDD関連 外付けフロッピーディスクドライブ
外付けフロッピーディスクドライブ
かつての代表的な拡張機能の一つであったフロッピーディスクドライブ。ビジネスシーンでのテキストデータのワード文章のやり取りやデータのバックアップ、ノートパソコンのBIOSアップデートに使用する起動ディスクなどで2002年頃まではオールインワンノートに標準搭載されている。コンパクトノートやサプノート向けには外付けのFDDが使用されていた。

2007年現在ではフロッピードライブは標準搭載からは外されオプション扱いがほとんどである。

[編集] 代表的なノートパソコン

[編集] 製造大手メーカー

世界最大のノートパソコンメーカー。自社のブランドはもたないが、世界・国内の大手ブランドのパソコン製造を手がける。

[編集] 健康上の問題

ノートパソコンを長時間使用する場合人体に与える影響が懸念されている。ノートパソコンの場合、ディスプレイが目線より下に存在することになり、常に首を常に曲げた状態で作業をする必要が生じる。これによって肩凝りや頭痛、長期的には深刻な疾病に至る事が懸念されている。これを防ぐためには一定時間ごとに休息し、マッサージをしたりする対蹠的な方法と、モバイル以外の環境では視線を落とすことなく視認可能な外部ディスプレイに接続するなどの方法を取ることが薦められている[1]

  1. ^ ワープロやパソコン使用による肩こりや目の疲れについて

[編集] 関連項目

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