Pentium
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Pentium(ペンティアム)はインテルが1993年に発売した第5世代の80x86アーキテクチャのCPU。そして一連のCPUのブランドの一つ。
Pentiumは、同社の第4世代のCPUであるi486の後継製品である。当初は80x86というシリーズの5番目として80586またはi586という名称が予想されたが、増えてきたインテルの製品と同じ商品名を競合他社が使用することを嫌い、商標登録を行うにも数字とアルファベットの組み合わせでは認められなかったことから、5を意味するギリシア語のPentaと要素を表すラテン語のiumからの造語Pentiumを名称に用いることになった。なお、インテルはPentiumという単語は形容詞であると主張しているので、CPUを指す場合はPentiumプロセッサというのが正しい。
前述の通りPentiumは第5世代という点から名付けられたものだが、インテルがPentiumの名称の知名度の向上に力を入れたことから、それに続く第6世代以降でもPentiumの名称を引き続き使用することになった。
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[編集] 特徴
486プロセッサとの大きな違いは以下の通りである。
- スーパースカラ構造 - Pentiumは2つの処理系を持ち、1クロックで1以上の命令発行が可能となった。
- 64ビットのデータバス - メモリへのアクセススピードが向上した。
- DEC Alphaから流用した(ディジタル・イクイップメント・コーポレーションの訴訟では盗用)、高速な浮動小数点演算能力
- MMX (後期型のみ) - マルチメディアアプリケーション用の拡張命令セットが付加された。
- 対称型マルチプロセッササポート - Pentium以降、同じプロセッサを複数個用意すれば良い。
[編集] 第一世代
第一世代製品はインテル社内の開発呼称よりP5と呼ばれる。システムクロックと同じ速度で動作する66MHzと60MHzの製品がリリースされたが、量産効果により十分コストが低下した486システムとは違って新規開発のシステムが必要でコストがかさむ上、BiCMOSプロセスであるため消費電力が大きくIntel 486DX2と性能的優位も大きくないことから、普及には第二世代の製品を待つこととなった。
[編集] 第二世代
第二世代は、プロセスを微細化したP54C、P54CS といったコードネームの製品がリリースされた。システムクロックの1.5倍で動作する90MHzと100MHzが登場する。 Intel 430FXと呼ばれるPentium用チップセットにより新設計のシステムアーキテクチャPeripheral Component Interconnect (PCI) が一応の完成を見、PCIと共にPentiumの普及が加速される。低価格パソコン向けとして75MHz(1.5倍のクロックで動作する為、システムクロックは50MHzである)も追加された。後に、2倍、2.5倍、および3倍で動作する120MHz、133MHz、150MHz、166MHz、200MHzが発売される(166MHz以降、対応システムクロックは66MHzのみ)。
1994年11月に、P5 Pentium及びP54C Pentiumの浮動小数点除算命令にバグがある事がインターネットを通じて報告された。その後日本でも新聞や一般誌によって大々的に報道され、パソコンを持っていない人にもこのバグが広く知られることとなった。インテルは当初バグの発生は演算処理のループでは90億回に1回、表計算ソフトを使った場合27000年に1回であるなどとし、この問題は深刻ではないとしたが、紆余曲折を経て、同年12月20日には全数リコールに至った。リコールにかかった費用は膨大なものであったが、ボックス包装されたバグ対策済みPentiumがリリースされた事が広く報道された。バグが広く報道されたことにより、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ (AMD) のCPUが大量に販売され、これが当時新CPUの開発やインテルとの訴訟に苦慮していたAMDへの資金確保の礎となる[要出典]。また、このバグにより、今までPentiumで計算していた計算結果が信用が出来なくなるとの理由で浮動小数点演算処理がPentiumに比べ遅いながらもバグの無いi486DX4やAMDのAm486、Am5x86、K5、サイリックスのCx5x86等の互換CPU搭載PCの販売が伸びた[要出典]。
これと同時期にディジタル・イクイップメント・コーポレーション (DEC) から浮動小数点演算プロセッサに関する知的財産権侵害訴訟を起こされている。これはインテルがDECの当時世界最高速CPU及び単体CPUとしては最も高速な浮動小数点演算処理が出来たDEC Alphaプロセッサの浮動小数点演算回路図をDECからのライセンス無しにコピーを行った事に関しての訴訟である。i486シリーズからの段違いな浮動小数点演算能力、バグ騒ぎからも、当初のPentiumは、DEC Alphaプロセッサの浮動小数点演算回路を流用コピーしたため、そのままコピーすれば起こりえなかったバグが表面化したものと考えられる[要出典]。そのままコピーせずに劣化コピーとなったのには、インテルが得意とする知的財産権保護意識によりそのままコピーしてはDECから訴訟を起こされる可能性があるが、流用する事によりインテル独自開発であるとの言動を行う事ができ訴訟を回避できるとの判断があったものと考えられるが、やはり流用という劣化コピーではバグの入り込む余地ができ、またこの騒ぎからDECに無断コピーが知れ渡り訴訟を起こされている[要出典]。このバグ騒ぎが、一時的ではあるが競合していたAMD等のプロセッサ販売に貢献していた[要出典]。
[編集] 第三世代
第三世代はMMX拡張命令セットが付加され、コードネームP55CとしてMMXテクノロジペンティアムプロセッサ (Pentium processor with MMX technology) が登場した。デスクトップ向けとしては166MHz、200MHz、233MHz、モバイル向けとしては120MHz~300MHzが発売された。
[編集] 「Pentium」ブランドのその後
第5世代との意味で命名されたPentiumであるが、製品性能のみならず宣伝にも力を入れた結果Pentiumの知名度は非常に高く、第6世代のプロセッサにもPentium Pro、Pentium II、Pentium IIIとPentiumの名前は用いられることになった。第7世代はプロジェクトの変更によりキャンセルされたが、第8世代にあたるPentium 4、Pentium Dにも用いられた。 しかしプロセッサに求められる環境の変化からそれを最後にPentiumの名称は廉価品に用いられるようになる見込みで、Celeronブランドを置き換える可能性も出てきている。Pentiumの後継の製品の名称にはCoreと決定している(正式な表記はIntel® Core™)。
[編集] 補足
486プロセッサのアップグレード用としてリリースされたPentium オーバードライブプロセッサは63MHz版と83MHz版の2製品が販売された。 が、当時はAMDの486アップグレード用としてリリースされたAm5x86がPentium オーバードライブプロセッサより低価格でなおかつ160MHz駆動を行う事によりPentium100MHz程度の性能を示したため、販売は、一部地域を除いて芳しくなくまた、インテルもPentiumへの移行を急いだため、日本以外の国では失敗作となった。 日本においても、486アップグレードを行うような知識がある層には、Pentium オーバードライブプロセッサは、まったく見向きもされず、Pentium オーバードライブプロセッサよりも安価で高性能なAMDのAm5x86やサイリックスのCx486といったアップグレード用のCPUを販売しているCPUメーカのCPUを使う事によりマシンの延命を行った。
パソコンが一般消費者にも使われるキッカケとなったWindows 95とAMDやサイリックスなどのCPUの発売時期、Pentiumの発売時期が重なり、普及の時期が一致していたこともあってインテルは苦境に立たされた[要出典]、このことは、i486を発売後にすぐにPentiumを発表、バグを抱えたままの出荷等からインテルが如何に他社の高性能CPUに恐怖心を抱いていたか分かる[要出典]、また、この時期から顕著化したパソコンメーカに対してのリベートや製品出荷制限による締め付けなどが後のAMDによる独占禁止法違反告発へとつながっていく[要出典]、インテルはその後の世代のCPUにもブランドとして「Pentium」の名称を使用し続けている。しかし2006年1月発表のIntel Coreという名称の製品シリーズの登場により、新たな展開はされずに徐々にその地位を受け渡されると予想されていたが、突如、Pentiumを現在のCeleronの価格帯のブランドに徐々にシフトしていくと発表した。
インテルはPentiumのブランド名をパーソナルコンピュータ(パソコン)用の主力CPUに使用しており、Celeronのブランド名を冠したCPUを低価格パソコン用として、Xeonのブランド名を冠したCPUをサーバ用として販売している。こうしたCPUの中には、各ブランドとも同じアーキテクチャをベースにしたものも多く、クロックスピードやキャッシュサイズ、パッケージ形状、ソケット形状などで差別化されている。また、異なるアーキテクチャのCPUに同じブランド名が使用されていることから、現在ではパワーユーザを中心に、開発コード名でCPUを呼び分けることもしばしば行われている。
[編集] 関連項目
- MMX
- Intel 486
- Pentium Pro
- Pentium II
- Pentium III
- Pentium 4
- Pentium D
- Pentium Extreme Edition
- Pentium M
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