アテン
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
アテン (Aten) は、エジプトの太陽神。人間的形態である他のエジプトの神々とは異なり、先端が手の形状を取る太陽光線を何本も放ち、光線の一つに生命の象徴アンクを握った太陽円盤の形で表現される。初期には従来の太陽神ラーと同一視されるが、その後神性は薄れ、天体としての太陽を表すようになった。ツタンカーメンの父でもある、アメンホテプ4世が特に崇拝。
アメンホテプ4世の治世に於いて、アメン信仰は全盛期を迎える。だが、アメンを讃えていたエジプトの神官たちがファラオをも凌ぐ権勢を誇ったために、王権を強化する目的でアメンホテプ4世はアマルナ宗教改革を断行した。妻ネフェルティティの影響もありアテンを唯一神とし、自分の名も『アクエンアテン』に改めた。しかし他の神々の祭祀を停止したりアメンの文字を削ったりするなど、その改革があまりにも急激だった上に神官団の抵抗が激しく、最終的に宗教改革は失敗に終わる。アメンホテプ4世アクエンアテンが失意のうちに亡くなった後、ツタンカーメン王の時代にアメン信仰に戻り、アテン信仰は消滅した。同時にアテンは、宗教改革以前の天体としての扱いに戻された。
事実をありのままにさらけ出す太陽光線を崇めるため、美術においてもリアリスティックな表現が行われ、他の時代のエジプト美術とは一線を画したものとなっている。