イギリスの銃規制
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イギリスの銃規制は、オーストラリアのそれに近似しており、銃火器の脅威からどのように公共の安全を保障することができるか、そしてどのように銃火器による死傷事件を防げるかという観点に主眼を置いた内容となっている。英国には米国のNRAのような強力なガンロビー団体が存在しないため、銃規制賛成派と銃の所持賛成派による活発な議論も見られない。これらの理由から英国の銃規制は日本とともに世界でも類まれなる厳しさを誇る。
[編集] 免許と登録
低威力の空気銃を除き、英国内での全銃火器の所有には銃火器免許(Firearm Certificate)か散弾銃免許(Shotgun Certificate)が必要となる。
英国においては、散弾銃とは内部にライフルの刻まれてない24インチ以上の銃身を持つ銃である。また機構として回転式弾装を有する物は禁止されており、上下二連式のような弾装を有さない銃や、チューブ型の着脱不可能な弾装で装弾数2発以下の銃に限られている。以上のことから、チャンバー(薬室)に1発装填し、チューブ弾装に2発装填することで最大3発まで弾を装填することができる。このような規制から散弾銃免許を取得するための手順は比較的寛容である。
これとは別の銃火器免許では銃火器毎に正当な所持理由があることを警察に報告する義務があり、これらの銃火器は免許に型式、口径、そしてシリアルナンバーが登録される。散弾銃免許も同じように口径、型式とシリアルナンバーが登録されるが、この銃火器免許との違いは散弾銃は「自分で安全に運用できるのであれば」何丁でも所持できるという点である。銃火器免許ではさらに一度に購入できる最大数の銃弾が示されており、銃弾の購入記録もある。
銃火器免許を取得するためには警察署で「銃を必要とする正当な理由」を説明する必要があり、それにより担当の警察官が「この応募者は銃を持っても公共に危害を加えないだろう」と認めなければならない。この点日本においても初心者講習会に応募する際、警察署の生活安全課等で担当の警察官に面接を受けるので非常によく似ているといえる。また日本同様銃の所持理由はスポーツ射撃と猟などの仕事にかかわる業務(日本では大工の使う釘撃ち銃も許可制である)に限られている。1946年の法改正により護身用の銃火器所持は禁止されている。現在の銃火器免許の手続きとしては、身分証明、応募者と2年以上付き合いがあり、応募者が銃の所持をしても問題ないことを証明できる2人の推薦人(彼らもまた警察から綿密に取調べされる)さらに、医師の診断書、銃の保管状況の調査、さらには銃火器の調査官による綿密な面接が課せられる。手続きに関しては日本の場合とかなり近似していることがここからも分かる。さらに銃火器の免許を担当する部署に代わってロンドン警察公安課が身辺調査を行い、これら全ての項目をクリアした者にのみ銃火器免許が交付される。
刑務所で三年以上服役した経験のある者は自動的に、銃火器免許応募の資格を永久に剥奪される。そして免許を受けたものはその所有する銃器について特段の注意を持って保管しなければならない。前述の通り保管状況は免許の交付前に警察官によって調査され、免許の更新のたびにそれが守られているか、問題がないか調べられる。法による規制以外に地域の警察署でさらなる規制が課せられることもある。(日本でも三菱銀行人質事件の発生した大阪府では散弾銃の所持に関してすら警察の態度が非常に堅甲である一方、エゾシカ猟が盛んな北海道では大口径のライフル銃に関しても散弾銃10年の経験があれば、あとは狩猟免許だけで比較的簡単に所持できたりするなど場所によって状況が全く異なることがある。)法令が破られた場合は銃火器免許は没収され、所持する銃火器も全て没収される。許可なしに銃火器を所持した場合は最低5年の懲役と上限無しの罰金刑を受けることとなる。
さらに近年「凶悪犯罪低減のための法案」が審議されており、英国国会を通過した場合、銃の所持、販売、空気銃と模擬銃(エアソフトガンやモデルガン)の製造に更なる厳しい規制がかけられる可能性がでている。