エルンスト・ヘッケル
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エルンスト・ハインリッヒ・フィリップ・アウグスト・ヘッケル(Ernst Heinrich Philipp August Haeckel, 1834年2月16日 ポツダム - 1919年8月8日 イェーナ)は、ドイツの生物学者であり、哲学者である。ドイツでチャールズ・ダーウィンの説を広めるのに貢献した。
ヘッケルは医者であり、後に比較解剖学の教授となった。彼は心理学を生理学の一分野であると見なした最初の人の内の一人である。彼はまた、ごく身近な用語である”綱”とか”生態学”と言った言葉を提唱した人でもある。彼の主たる関心は進化と生物の発生にあり、さらに、偶然的ではない発達にも関心をもち、それは「自然の芸術」の美しい挿絵に於いてその頂点に達した。
発生と系統が関連を持っているという、ヘッケルの観察は「反復説」と呼ばれる。簡単に言えば、個体発生は、系統発生を繰り返すというものである。残念ながら、自説を証明しようとしたヘッケルの努力は、それ自身は不正確で、間違った結果に終わった。
ヘッケルはまた、「生物発生の法則」でも知られている。それによると、人種の発生は個体の発生と平行する、という。彼が提唱するには、”原始的”な人種はその発育初期にあり、より成熟した”社会”によって”保護”され、”管理”されなければならないとする。
ヘッケルは華麗な図で、彼の科学上の同僚たちに比べて、はるかに人気が高い。ヘッケルのさまざまな考案点は、進化論の歴史の中で重要であり、立派な無脊椎動物の解剖学者でもある。特に放散虫の研究が最も有名である。しかしながら、彼が考案し、それを守るために戦った理論的な着想の大部分は、現在では間違いだったとされる。
例えば、ヘッケルは動物の祖先として想定したような微生物を記載し、命名しているが、これはまず間違いなく存在していないと見られる。彼の反復説の考えは間違いであることが示された。ヘッケルは”適者生存”を支持せず、ラマルキズムのいわゆる用不用説を信じていた。間違った理論を守るやり方の最たるものとして、彼は幾つかの論文に改ざんしたデータを使ったことを見つけられている。最も有名なのは、彼の描いた胎児に関する図がそれで、同時代の人間にすら知られていたことであるが、別種のものでも胎児の間には類似性があることを強調するために、故意にゆがめた図が示されている。