サンバ (ブラジル)
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サンバ (samba) はブラジルのアフリカ系民衆音楽。ブラジル音楽。
4分の2拍子のダンス音楽で、19世紀の終わりごろ、リオ・デ・ジャネイロにおいて、ブラジル北東部のバイーア地方から移住したアフリカ系黒人の奴隷労働者たちが持ち込んだ、バトゥカーダ(Batucada)――打楽器のみの構成によるサンバ――などの音楽をもとに、元来ブラジルからあったショーロやルンドゥーなどの要素がとりこまれ成立し、ブラジルを代表する音楽ジャンルとなった。結果として、黒人たちの持ち込んだアフリカの宗教的民俗舞曲と、ポルカやマズルカといったヨーロッパの舞曲の要素が混ざり合ったものと言える。
「労働者階級の音楽」ゆえに、歌われる内容といえば、生活そのものを題材としたもの、人種差別や政治体制への批判などが中心であったが、比較的穏やかなリズムで叙情的な内容も歌われるようになり、それらはサンバ・カンサゥン(Samba Canção)と呼ばれる。サンバ・カンサゥンはさらに発展し、1950年代後半から1960年代前半には、アメリカの音楽などの影響を受けた中産階級の若者たちを中心に、リズムをさらにシンプルにし、叙情的な歌詞をのせて歌うサンバ・ボサノバ (Samba Bossa Nova)が流行した。1980年代には、数人編成で演奏するスタイルパゴーヂ(Pagode)が成立。大規模なカーニバルのサンバに対して、パゴーヂの個人パーティー的で周囲の皆で共に合唱できる気軽さが受け、大流行している。尚、2006年サッカーワールドカップのブラジル代表(セレソン)の面々が、バスや控え室でパゴーヂを大合唱し盛り上がっている場面が日本のメディアなどで多く取り上げられ耳目を集めた。
リオ・デ・ジャネイロをはじめとするブラジルの各都市で行われるカーニバルでは、エスコーラ・ジ・サンバ (Escola de Samba)(サンバの学校という意)というチーム単位でサンバ・パレードを繰り広げ、パレードの審査を行うコンテストによって順位が決定される。中には数千人が参加するエスコーラも存在する。(エンヘード)
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[編集] サンバのジャンル
- パルチード・アルト (Partido alto)
- パゴージ (Pagode)
- サンバ・エンヘード (Samba Enredo)
- サンバ・ホッキ (Samba Rock)
[編集] サンバで使用される主な楽器
- パンデイロ (pandeiro)
- スルド (surdo)
- ヘピニキ (repinique)
- カイシャ (caixa)
- タンボリン (tamborim)
- ガンザ (ganza)
- アゴゴ (agogo)
- クイーカ (cuíca)
- カヴァキーニョ (cavaquinho)
- ヴィオラン (violão)
- 7弦ギター (violão de 7 cordas)
サンバの演奏形式毎に、使用される楽器が異なる。
[編集] 日本におけるサンバ
日本では、浅草で開催される浅草サンバカーニバルを始めとして首都圏で数十のパレードが行われ、夏の風物詩として定番化しつつある地域も多い。しかし、日本におけるブラジル音楽やラテン音楽への理解はいまだ未熟で、特に「サンバ」のイメージは本来のサンバとは全く違うものになっている。例えば、サンバでは「ウ~~、サンバ!」という掛け声は本来使われないし、サルサでよく使われるマラカスも使われない。歌謡曲でタイトルに「サンバ」と付く曲がいくつかあるが(「お嫁サンバ」「てんとう虫のサンバ」「マツケンサンバ」等)、おおむねサンバと呼べる音楽ではない。その一方で、日本人のボサノバの人気は、本国ブラジルでのそれを大きく上回ることは注目に値する。
[編集] 代表的サンバ・アーティスト
- カルトーラ (Cartola)
- ネルソン・カヴァキーニョ (Nelson Cavaquinho)
- ノエル・ホーザ (Noel Rosa)
- アリ・バホーゾ (Ary Barroso)
- カルメン・ミランダ (Carmen Miranda)
- アルシオーネ (Alcione)
- パウリーニョ・ダ・ヴィオラ (Paulinho da Viola)
- マルチーニョ・ダ・ヴィラ (Martinho da Vila)
- ベッチ・カルヴァーリョ (Beth Carvalho)
- カンデイア (Candeia)
- ゼカ・パゴジーニョ (Zeca Pagozinho)
- フンド・ヂ・キンタウ (Fundo de Quintal)
なお、発生時のボサノバはサンバ・カンサゥンから派生したサンバの変種であり、一部のボサノバ・アーティストをサンバ・アーティストと捉える観点もある。詳しくはボサノバの項を参照。