ストライカー装甲車
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ストライカー | |
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M1126ストライカーICV |
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基礎データ | |
全長 | 6.95 m |
全幅 | 2.72 m |
全高 | 2.64 m |
重量 | 16.47 t(ICV) 18.77 t(MGS) |
乗員数 | 2 名 + 兵員 9 名(ICV) 3 名(MGS) |
装甲・武装 | |
装甲 | 14.5 mm機銃弾に堪える |
主武装 | 12.7mm重機関銃M2 又は 7.62mm機関銃M240 又は 40mm擲弾発射器Mk 19(ICV) 105mm砲M68A1E4(MGS) |
副武装 | 12.7mm重機関銃M2 及び 7.62mm機関銃M240(MGS) |
備考 | 対NBC兵器警報検知器 対NBC兵器空気清浄器 |
機動力 | |
速度 | 100 km/h(整地) 60 km/h(不整地) 10 km/h(浮航) |
エンジン | キャタピラー社製 3126ディーゼル・ターボ 350 hp |
懸架・駆動 | 8輪独立懸架 8輪駆動 又は 4輪駆動 (任意切替) |
行動距離 | 500 km(搭載燃料200 L) 外部燃料タンク使用時:935 km |
ストライカー (Stryker) は、アメリカ陸軍の装輪式装甲車である。LAV(ピラーニャ)の一つであるLAV-IIIをベースに開発され、様々な派生型がある。製造は米ジェネラル・ダイナミクス社の子会社であるGDLS (General Dynamics Land Systems) が行っており、目下のところ生産予定台数は2444両に達する見込み。
目次 |
[編集] 概要
アメリカ陸軍が進めている再編計画(トランスフォーメーション)の一環として計画された装甲車。1999年10月に地域紛争やテロに対して迅速に戦力を展開する旅団戦闘団、後のストライカー旅団戦闘団 (SBCT:Stryker Brigade Combat Team) の構想が発表され、それに続く各種試験車両の部隊運用実験により同旅団の中核として選定された。
当初こそ、ストライカー旅団構想の要求からC-130輸送機に搭載が可能な重量に押さえることが求められていたが、計画の進行に従い空輸による戦力投射については次第に話題とならなくなっていった。大まかに言って従来のハンヴィーのみで移動していたアメリカ陸軍軽歩兵に装甲、火力、戦術機動力を与える存在と評価できる。また、軍のネットワーク化の部隊実験にも好適であり、各種通信装置、ネットワーク情報システムなどが装備されている。典型的なRMAに対応した装備といえる。
尚、ストライカーの名称は、二名の議会名誉勲章受章者から来ている。第二次世界大戦で活躍したスチュアート・S・ストライカー一等兵 (Stuart S. Stryker) と、ベトナム戦争で活躍したロバート・F・ストライカー四等特技兵 (Robert F. Stryker) の両名である。アメリカ陸軍の装甲戦闘車両 (AFV) に愛称をつける場合は功績の高い将官の名をとるのが通例であり(パットン、パーシング、エイブラムス、ブラッドレー等)、議会名誉勲章受章者とはいえ一般歩兵からその名が取られるのは異例であるといえる。車輌そのものはキャンセルされたが、下士官の名前だった例としてサージェント・ヨーク(ヨーク軍曹)がある。
[編集] 武装
各種派生型中最も生産車両数が多く主力となるのは兵員輸送車 (ICV) で、車体上面のプロテクターM151遠隔武器ステーション (Remote Weapon Station) の台座には12.7mm重機関銃M2(400発)、7.62mm機関銃M240(3400発)、40mm擲弾発射器Mk 19(120発)のいずれか一つが取り付け可能となっている。プロテクターM151に取り付けらたTVカメラの映像を車内のモニターで見ながら操作可能であり、射手が体を曝す事無く目標を攻撃できる事からSBCTが都市戦闘等において威力を発揮する。また、熱線映像装置が組み込まれており夜間の戦闘も可能となっている。
兵員輸送車として装甲防御力はある程度考慮しなければならないが、C-130による空輸を想定している為、非常に軽装甲である。しかし最低限度の装甲防御力は有しており、高硬度鋼板の上にはドイツのIBDダイセンロト・エンジニアリング社 (IBD/Deisenroth) で製造されているセラミックス製Mexas(メクサス)複合装甲パネルが装着されている。この装甲は、2種類の特殊セラミック複合材が積層され内側の鋼板に直接溶接され全面に取り付けられており、300m以内からの14.5mm弾と、155mm砲弾の至近炸裂に耐えられる性能を有する。また、直撃弾による内部剥離を防止する米国のデュポン社が開発したケブラー繊維内張りが搭乗員席及び兵員室内側全面に装着されおり乗員の生存性を高めている。この他には、対戦車地雷対策として車両下部にもメクサス装甲が装着されているがこれは、完全に防げる物ではなく乗員の生存性を確保する物である。
また、イラクに派遣されている車両に見られる檻の様な装甲は、スラット装甲と呼ばれる追加装甲で、ゲリラやテロ組織が使うRPG-7対戦車擲弾を防ぐことを目的に使われている。
[編集] 空輸性
ストライカー装甲車はC-130戦術輸送機に1両、C-17戦略戦術輸送機には4両、C-5戦略輸送機には最大7両搭載可能となっている。追加装甲はC-130の最大積載量との兼ね合いで重量増となる為オプションとなっている。RPG-7の直撃に耐えうるERA装甲(リアクティブ・アーマー)も装着可能だが、C-130で空輸する場合、こちらも重量オーバーとなるため現地での後付式となっている。
1999年10月のAUSA(アメリカ陸軍協会)にて当時の陸軍参謀総長エリック・シンセキ大将が演説した時点では戦略機動性が非常に強調されていた。しかし、その後、開発が進展し部隊が整備され装備車両が選定されてC-130と実車を使っての実験が行われるに従い、C-130に搭載して戦域内を輸送するのは現実性に欠ける場合が多々あることが明らかとなるが、それでも調達され続けているのは装輪の特徴による路上での長距離行軍による戦域内移動が十分に実用性があること、つまり対内乱作戦において戦場間機動する能力を軽歩兵部隊に与える能力ゆえであろう。
実際に2003年末に始まるイラク派遣をストライカー旅団戦闘団は3個旅団で合計4回経験している(2006年8月時点)。ところが、重装備を米本土から運ぶ場合においてほぼすべてのとき、RO-RO船により海上輸送されている(例外は報道されている限りでは派遣中の部隊に全損車両の代替をC-17輸送機で運んだ時のみ)。また、2006年に米本土西海岸フォートルイスから欧州ドイツへ1個旅団戦闘団が移転したが、この際も同旅団の重装備はストライカー装甲車を含めて海上輸送により運ばれた。
[編集] 派生型
以下は全て実車が存在する。機動砲(自走歩兵砲)についても低率初期生産に入り、部隊配備が開始された(ただし試験は平行して続けられているとの報道あり)。そして2007年にてイラク派遣されるストライカー旅団が初めて機動砲をイラクに27両持ち込むという報道がある。
配備先についてはアメリカ陸軍のストライカー旅団戦闘団の場合である。
- M1126ストライカーICV
- Infantry Carrier Vehicle - 兵員輸送車
- ストライカー旅団戦闘団の3個歩兵大隊に配備され、歩兵を輸送するための車両。車体上面にカメラ付きリモコン機銃座が取り付けられている。
- M1127ストライカーRV
- Reconnaissance Vehicle - 偵察車
- ストライカー旅団戦闘団のRSTA大隊(偵察、捜索、目標捕捉)大隊に主として配備され、偵察員を輸送するための車両。車体上面に偵察用光学機材が取り付けられている。
- M1128ストライカーMGS
- Mobile Gun System - 機動砲システム
- ストライカー装甲車の車体に105mm砲M68A1E4を装備した低姿勢砲塔 (Low Profile Turret) を搭載している。一見無人砲塔の様にも見えるが、砲塔バスケット内に車長・砲手が搭乗するため無人砲塔ではない。砲塔は360度旋回可能になっており、主砲は+18度の仰角、-8度の俯角を取れる様になっている。砲弾は主砲後部の自動装填装置内に9発と、砲塔バスケット内に9発の計18発を搭載しており、砲塔バスケット内の砲弾も自動装填装置により、主砲に装填出来る様になっている。各歩兵大隊隷下歩兵中隊のMGS小隊(3両編成)に配備される。
- M1129ストライカーMC
- Mortar Carrier - 迫撃砲搭載車
- ストライカー装甲車の車体内に迫撃砲座を設けている。各歩兵大隊に直属する迫撃砲小隊および隷下歩兵中隊の迫撃砲班に配備される。
- M1130ストライカーCV
- Command Vehicle - 指揮車
- M1131ストライカーFSV
- Fire Support Vehicle - 砲兵前線観測車
- M1132ストライカーESV
- Engineer Squad Vehicle - 工兵車
- 工兵の作業用のアタッチメント装備が用意されている派生型。旅団直属の工兵中隊に配備される。
- M1133ストライカーMEV
- Medical Evacuation Vehicle - 野戦救急車
- M1134ストライカーATGM
- Anti-Tank Guided Missile Vehicle - 対戦車誘導ミサイル車
- 車体上面にTOW対戦車ミサイルの2連装発射装置を備えている。旅団直属の対戦車小隊に配備されるほか、一部の旅団では機動砲が配備されるまでの間、代替を努めているとの報道があった。
- M1135ストライカーNBC RV
- Nuclear, Biological, Chemical Reconnaissance Vehicle - NBC偵察車
- RSTA大隊に配備される。
[編集] アメリカ陸軍での配備部隊
現在、アメリカ陸軍では既存の師団隷下旅団をもとに旅団戦闘団を増設し、ドイツから2個師団を本国に帰還させ、イラク・アフガニスタンへの派遣旅団をやりくりする過程にあり、旅団名称と駐屯地は変更されている最中である。陸軍現役6個と陸軍州兵1個の合計7個旅団が編成済みあるいは編成に着手している。
- 第2歩兵師団第3旅団 (駐屯地:ワシントン州フォートルイス)
- 第2歩兵師団第4旅団 (駐屯地:ワシントン州フォートルイス) - 第2機甲騎兵連隊から部隊名称を変更
- 第2歩兵師団第5旅団 - 2007年に第2歩兵師団第2旅団へ部隊名称変更予定
- 第25歩兵師団第2旅団 (駐屯地:ハワイ州スコーフィールドバラックス)
- 第172歩兵旅団 (駐屯地:アラスカ州フォートウェインライト) - 2006年10月現在イラク派遣中。帰還後に第25歩兵師団第1旅団へ名称変更予定
- 第2騎兵連隊 (駐屯地:ドイツ) - 第25歩兵師団第1旅団から部隊名称を変更
- 第28歩兵師団第56歩兵旅団 (ペンシルバニア州陸軍州兵)
[編集] ストライカー旅団の編制
歩兵大隊×3 RSTA(偵察)大隊×1 砲兵大隊×1 対戦車中隊×1 工兵中隊×1 支援大隊×1 通信中隊×1 軍事情報中隊×1
[編集] 他国導入の可能性
かつてはカナダ陸軍がレオパルトC1戦車(レオパルト1戦車のカナダ軍仕様)を代替してM1128ストライカーMGS(機動砲システム)を導入する計画があるとされたが目下危うい状況である。また、イスラエル国防軍が導入を検討の報が流れたこともあるがこれも続報が無い。
[編集] アメリカ陸軍選定時点での他候補車
IBCT (Interim Brigade Combat Team) が米本土西海岸フォートルイスにて編成されるのと平行して米国内外から様々な車両を集めて評価試験を行い選定した。このうちM113A3については同車のメーカーが選定に異議を唱え、GAOなどは両者を比較した報告書を作成するなどしている。
[編集] 参考文献
- Initial Impressions Report: Operations in Mosul, Iraq/Stryker Brigade Combat Team 1, 3rd Brigade, 2nd Infantry Center for Army Lessons Learned 21 Dec 2004 [PDF 412KB]
http://www.globalsecurity.org/military/library/report/call/iir-mosul-ops_stryker-bde_21dec2004.pdf
2003年12月からイラクに1年間派遣され、北部の大都市モスルにて主に活動した第2歩兵師団第3旅団(1SBCT)の当初所感報告書。 ストライカー装甲車に関して装甲、通信、整備など様々な面からの評価、所感が盛り込まれているとともに、 旅団の編制、ことに情報収集能力などについてもかなり筆を割いている。
Army’s Evaluation of Stryker and M-113A3 Infantry Carrier Vehicles Provided Sufficient Data for Statutorily Mandated Comparison
http://www.gao.gov/new.items/d03671.pdf
M113A3とストライカー装甲車の比較について調査し纏められた報告書。
[編集] 外部リンク
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