爆発反応装甲
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爆発反応装甲(ばくはつはんのうそうこう、英:Explosive Reactive Armor,ERA)は、戦車などの補助装甲として使用される装甲板で、2枚の鋼板の間に爆発性の物質を挟んだ構造をしている。リアクティブ・アーマーとも呼ばれる。
[編集] 概要
被弾時、砲弾や成形炸薬弾がもたらす圧力に反応して、補助装甲内部に仕込まれた爆発性物質が起爆して表面側の鋼板を高速で吹き飛ばし、鋼鈑が側面から弾頭に衝突することでメタルジェットの形成を阻害し、内部への浸透を妨ぐ。この構造上、30°程度で着弾した際にもっとも効果を発揮し、垂直に当たった場合にはほぼ効果を得られない。
爆発反応装甲のコンセプトを考案したのはドイツ人研究者マンフレート・ヘルト博士で、ドイツにおいて1970年に特許を取得した。最初に実用化したのはイスラエルであった。1973年の第四次中東戦争にて、エジプト軍の使用したソ連製対戦車ミサイルにより甚大な被害を蒙ったイスラエル機甲部隊は、その後開発の始まった国産戦車メルカバにスペースドアーマーなどの対策を盛り込むと共に、M60やセンチュリオンなど既に運用中の戦車における対策として「ブレーザー」と呼ばれる爆発反応装甲モジュールの開発を進めた。爆発反応装甲の理論や実験での効果は既に示されていたものの、実用化には様々な条件(小口径弾くらいでは爆発しない事、軽量安価である事など)が必要とされ開発は難航した。ようやく1982年のレバノンへの軍事行動において実戦使用され、シリア軍やPLOの対戦車ミサイルやRPG-7に対して有効性が実証された。その後シリアを通じて捕獲サンプルを入手したソ連や、技術提供を受けたアメリカ合衆国でも同様の物が実用化された。
爆発反応装甲はその構造上、成形炸薬弾を2つ取り付けたタンデム弾頭のものやAPFSDSに対しては効果を期待できないとされているが、ロシア連邦の「コンタークト5」やウクライナの「ニージュ」等新世代のものは、1層目を感度の低いHEAT用、2層目を感度の高いAPFSDS用とすることでこれを解決している。
あまり知られていないが、爆発反応装甲はその構造上、作動時には大量の金属破片を周囲に撒き散らし、随伴する味方歩兵を殺傷するという非常に好ましくない特性を持ち、また守るべき車両の装甲にも強いプレッシャーを与える(これらは事実と異なるという解説もある)。現代では旧東側諸国の装備するT-64~T-90などに多く装備され、他にもアメリカのM48~M60系列、フランスのAMX-30といった、戦後第二世代戦車の近代改修用として追加されている。
見た目や機能がユニークであるせいか、SF作品に登場する架空兵器にリアクティブアーマーが装備された例は多い。しかし、原理を正しく理解して採用した例は皆無(爆発の圧力で敵弾を跳ね返すと思っていることが多い)といってよく、単なるタイル状の増加装甲扱いであったり、甚だしきは爆発反応装甲に英国製ハイブリッドアーマーと同名の「チョバムアーマー」と名づけるなど、今のところ正しく描写されたことはない。
[編集] 主な爆発反応装甲
- ブレーザー(Blazer、イスラエル、1979年)
- BRENUS(フランス)
- ドィナ72(Dyna-72、チェコスロヴァキア)
- ドィナS(Dyna-S、スロヴァキア)
- エラヴァ1(ERAWA-1、ポーランド)
- エラヴァ2(ERAWA-2)
- コンタークト1(Контакт-1;Kontakt-1、K-1、4S20、ソ連、1983年):第1世代。
- コンタークト1改良型(ソ連):第1世代+。
- コンタークト5(Контакт-5;Kontakt-5、K-5、4S22、ソ連、1987年):第2世代。
- コンタークト5改良型(ロシア連邦):第2世代+。
- レリークト(Реликт;Relikt、ロシア連邦):コンタークト5の改良型。
- カークトゥス(Кактус;Kaktus、ロシア連邦):第3世代。
- ニージュ(Ніж;Nizh、ウクライナ)コンタークト5の改良型。第2世代+あるいは第3世代。