ゼオライト
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ゼオライト (zeolite) とは、結晶中に微細孔を持つアルミノ珪酸塩の総称である。日本名は沸石(ふっせき)。 もとは天然に産出する鉱物であり、内部に水が含まれているため加熱すると沸騰しているように見えることから、ギリシャ語のzeo(沸騰する)とlithos(石)を合わせてzeoliteと名付けられた。分子ふるい、イオン交換材、触媒、吸着材として利用されている。現在ではさまざまな性質を持つゼオライトが人工的に合成されており、工業的にも重要な物質となっている。
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[編集] イオン交換能
ゼオライトは二酸化ケイ素からなる骨格を基本とし、一部のケイ素がアルミニウムに置き換わることによって結晶格子全体が負に帯電している。そのため微細孔内にナトリウムなどのカチオンを含み、電荷のバランスを取っている。粉末状にしたゼオライトを別の種類のカチオンを含んだ水溶液中にいれると、細孔内と水溶液中でイオンの交換が起こる。この交換反応は可逆的であり、時間がたつと平衡状態となる。
この性質のためゼオライトは水質改良剤として用いられる。例えば、水中のカルシウムイオンやマグネシウムイオンをゼオライト中のナトリウムイオンと置きかえることで水の硬度を下げることができるので、衣類用の洗剤などに含まれている(「硬水軟水化剤」等と記載されている)。また微細孔内に植物の生育に必要なカチオンを保持するため、土壌改良剤としても用いられる。
[編集] 触媒としての機能
ゼオライトはその細孔内に選択的に分子を取り込み、反応させることができるため、触媒として多方面に利用されている。例えばZSM-5という合成ゼオライトを用いることでメタノールからガソリンを合成することに成功している。また、ディーゼル排気中に含まれるNOxを分解・除去するための触媒としても期待されている。
[編集] 吸着能
ゼオライトは微細孔内に水分子を吸着し、また放出することができるため、有機溶媒の脱水や湿度調節に用いられる。また水分子のほかにホルムアルデヒドなどの気体分子を吸着するとされるため、消臭や、シックハウス症候群を防止する目的にも期待されている。
[編集] 種類(天然)
天然に産するゼオライトは溶岩と水の相互作用により生じ、主に温泉地帯から産出する。枕状溶岩や深海中、そして火山灰の地層と地下水との接触によっても生じる。沸石グループとしてまとめられており、これまでに52種(1996年)が認定されている。
- 湯河原沸石(Yugawaralite)
- 菱沸石(Chabazite)
- 方沸石(Analcime)
- 束沸石(Stilbite)
- 斜プチロル沸石(Clinoptillolite)
- 輝沸石(Heulandite)
- ソーダ沸石(Natrolite)
- モルデン沸石(Mordenite)
- 濁沸石(Laumontite)
- 灰十字沸石(Phillipsite)
- 重度十字沸石(Harmotome)
- トムソン沸石(Thomsonite)
- 中沸石(Mesolite)
- スコレス沸石(Scolecite)
- 剥沸石(Epistilbite)
- レビ沸石(Levyne)
- コウルス沸石(Cowlesite)
- ポルックス石(Pollucite)
他多数