パラメトロン
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パラメトロン(parametron)とは、1954年に当時東京大学大学院(理学部高橋秀俊研究室)の学生であった後藤英一によって発明された、パラメータ励振現象を利用した論理素子のことである。
当時は真空管に比べ価格が非常に安い上、リレーと比べて高速動作が可能ということで非常に注目され、日本電子測器やTDKがパラメトロン素子の製造を手がけた。パラメトロンを利用したコンピュータも開発され、高橋研究室では「PC-1」「PC-2」を開発したほか、電電公社電気通信研究所では国際電電・富士通と共同で「MUSASINO-1B」(FACOM201)を開発した。また日本電気の「NEAC1101」「NEAC1201」や富士通の「FACOM202」「FACOM212」など、パラメトロンを採用した商用コンピュータも複数登場した。
しかしこの頃のパラメトロンはトランジスタに比べ消費電力が大きい上に動作速度が遅く、さらに発熱量が大きく周波数を上げるとコアが焼けるといった問題もあったことから、最終的にトランジスタに取って代わられ表舞台から姿を消した。
パラメトロンの開発自体はその後も続けられ、1986年には後藤英一らの手により、ジョセフソン素子の原理を応用し最大16GHzもの高速動作が可能なスイッチング素子として「磁束量子パラメトロン(Quantum Flux Parametron; QFP)」が開発されているが、今のところ商用ベースでの具体的な採用例はない。
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[編集] パラメトロンを使った計算機
- 日本電子測器
- PD 1516:(1956年)開発部門は後に富士通に移った。
- 日本電信電話公社(電気通信研究所)
- MUSASINO-1:(1957年)
- MUSASINO-1B:(1960年)国際電電・富士通と共同開発。FACOM 201 として製品化。
- CAMA:(1963年)通話料金計算専用であり、プログラマブルではない。
- 沖電気
- OPC-1:(1959年)
- 富士通
- FACOM 200:(1958年)
- FACOM 212:(1959年)事務用(オフコン)として製品化。
- FACOM 201:(1960年)MUSASINO-1B の製品化
- FACOM 202:(1960年)PC-2 の製品化。科学技術計算用。完成当時、日本最高速。
- 光電製作所
- KODIC-401:(1960年)
[編集] 参考文献
- 『国産コンピュータはこうして作られた』相磯秀夫(他編)、共立出版(1985年)、ISBN 4320022785