NEAC
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
NEAC(ニアック)は日本電気が自社製コンピュータに使用していた商標。"Nippon Electric Automatic Computer"から。なお、デジタルコンピュータ以前にアナログコンピュータ製品にもNEAC(Nippon Electric Analog Computer)という名称を用いていた。
目次 |
[編集] 黎明期のコンピュータ
日本電気では研究所で1954年ごろからデジタルコンピュータの研究が開始された。当初は点接触型トランジスタを利用したフリップフロップを試作していたが、思うような成果は得られなかった。そのころ、東京大学でのパラメトロンの発明があり、これを利用したコンピュータの研究が進められることとなった。
[編集] NEAC 1101 シリーズ
1955年末、パラメトロンを利用した試作機 NEAC 1101 の開発計画が立てられ、開発がスタートした。1957年に組み立てが完了し、1958年3月に稼動。これが日本電気初のデジタルコンピュータとなった。NEAC 1101 は研究所内の各種計算に約8年間利用された。次いで社内のフィルター設計からの要望と東北大学電気通信研究所でのコンピュータの必要性が合致し、日本電気と東北大学との共同開発が1956年に開始され、1958年11月から稼動した。東北大学での名称をSENACといい、日本電気での名称はNEAC 1102とされた。さらに1102に磁気コアメモリを追加し周辺機器を強化したのがNEAC 1103で、防衛庁技研に納入された。日本電気社内でもフィルター設計などに10年ほど利用された。
以下、パラメトロンを利用した主要なコンピュータの仕様の概略を列挙する。
- NEAC 1101 (1958年)
- 32ビットワード。浮動小数点方式。メモリは交流2周波磁心マトリックス(磁気コアメモリの研究段階のもの)で256ワード(後に512ワードに拡張)。パラメトロンを3600個使用。
- NEAC 1102/SENAC (1958年)
- 48ビットワード。固定/浮動小数点方式。メモリは磁気ドラムメモリで1024ワード。インデックスレジスタ装備。次の命令を先にフェッチする機構(先回り制御方式)があった。
- NEAC 1103 (1960年)
- 1102に磁気コアメモリを1024~2048ワード付加。磁気テープ装置、ラインプリンターなど新たな周辺機器を追加。
[編集] NEAC 2201 シリーズ
NEAC 2201は、1957年に完成した通産省工業技術院電気試験所のETL Mark IVの設計を受け継ぎ、日本電気が通信機器で培ったトランジスタ技術を生かして開発された。このシステムは日本電子工業振興協会の計算センターに設置され利用された。また、1959年にパリで開催されたコンピュータの展示会にも出品されたが、実働しているトランジスタを使用したコンピュータは2201だけであったという。
さらに本格的な商用コンピュータを製品化するべく、NEAC 2203の開発が1958年に開始され、翌年5月に1号機が電子工業振興協会に、8月に2号機が東京電力に納入された。2203はその後30台が出荷された。
2201の開発と並行して、山一證券から窓口業務の機械化の相談を受け、オンラインリアルタイムコンピュータ NEAC 2202の開発が1958年に開始された。これを発展させたNEAC 2204も証券会社などに納入された。
また、1958年近畿日本鉄道の座席予約システムの開発が開始され、1960年4月に稼動開始した。20ヶ所の窓口からの照会/発券/払戻を3秒で行うものである。ただし、このシステムは固定配線式であってプログラマブルではなく、拡張性がなかった。そのため、後の日本航空向けのシステムは汎用コンピュータNEAC 2230を利用したものとなった。
以下、トランジスタを利用した初期の主要なコンピュータの仕様の概略を列挙する。
- NEAC 2201 (1958年)
- BCD10桁を1ワードとする固定小数点式。メモリは磁気ドラムメモリで1Kワード。トランジスタ600個使用。
- NEAC 2202 (1959年)
- BCD8桁を1ワードとする固定小数点式。プログラムはプラグボードによるもので、厳密にはプログラム内蔵式ではない。マルチタスク機能(時分割多重方式)を導入。
- NEAC 2203 (1959年)
- BCD12桁を1ワードとする固定/浮動小数点式。メモリは磁気コアメモリの240ワードと磁気ドラムメモリの2Kワード。トランジスタ2600本使用。
- NEAC 2204 (1961年)
- BCD12桁+符号(1ビット)を1ワードとする固定小数点式。メモリは磁気コアの200ワードと磁気ドラムの3000ワード。
[編集] メインフレーム
日本電気は1962年、ハネウェルとの技術提携契約を結んだ。これにより1963年、ハネウェルの H400、H1400、H800 の3機種を国産化し、NEAC 2400, 3400, 2800として発表した。
[編集] NEAC シリーズ2200
ハネウェルが1963年11月に発表したH200シリーズはIBM 1401の置き換えを狙ったもので非常に評判が高かった。そこで日本電気はこれをノックダウン輸入(部品の形で輸入して現地で組み立てる方式)し、1964年 NEAC 2200として発表した。日本でも2200は好評で、日本電気のコンピュータ市場シェアを高めた(一時期IBMに次ぐ2位となった)。その後、これをシリーズ名(NEAC シリーズ2200)として後継機種が開発された(1965年~)。多くはハネウェルからの導入だが、一部機種はハネウェルでの開発が進まないことから日本電気が独自に開発している。
なお、IBMは1964年にSystem/360を発表しており、アーキテクチャの大転換を図った。このため 1401 対抗であった NEAC 2200 は徐々に競争力を失っていった。しかし、ハネウェル側の新機種開発はなかなか進まないという苦しい状況が続いた(ACOS登場前にはシェアは4位に転落した)。
NEAC シリーズ2200の基本仕様についてはHoneywell 200シリーズを参照されたい。なお、日本電気独自開発のモデル500は国産初の完全IC化コンピュータであった。シリーズ2200を使用して大阪大学では日本初の本格的タイムシェアリングシステムが構築されている。
[編集] ACOSシリーズ
ACOSは当初の正式名称を「ACOSシリーズ77 NEACシステムx00」としていた。これは、同一シリーズを東芝と共有したため、NEACまたはTOSBACという従来からの名称を入れることで区別させるためのものであった。後に東芝がメインフレーム事業から撤退するとNEACの名称は使われなくなった。
[編集] オフィスコンピュータ
- NEAC 1201 (1961年)
- パラメトロン。メモリは250ワード(ワード長不明)。
- NEAC 1210 (1964年)
- パラメトロン。メモリは磁気コアで500ワード(ワード長不明)。
- NEAC 1240 (1967年)
- IC。性能は1210の100倍。メモリは磁気コアで1600ワード。
- NEAC システム100 (1973年)
- 16ビット。メモリはICで16Kワード。
- NEAC システム100E,100F (1976年)
- 16ビットマイクロプロセッサ採用。全面LSI化。
[編集] ミニコンピュータ
日本電気のミニコンピュータの登場は遅く、1967年のNEAC 3100からである。NEACの名称が取れるのは1982年の32ビット版MSシリーズ以降となる。
- NEAC 3100 (1967年)
- 多目的科学技術計算用コンピュータ(詳細不明)
- NEAC 3200 (1969年)
- 16ビットワード。日本アビオニクス株式会社が製造を担当。
- NEAC M-4 (1972年)
- 8ビットワードの卓上型。ただし、アキュムレータは32ビット。
- NEAC MSシリーズ M10, M30, M50 (1978年)
- 16ビットワード。メモリは最大2Mバイト。通信制御、分散処理、産業制御などの分野向け。
[編集] 参考文献
- 情報処理学会歴史特別委員会(編)、『日本のコンピュータの歴史』オーム社(1985年)
- 情報処理学会歴史特別委員会(編)、『日本のコンピュータ発達史』オーム社(1998年)、ISBN 4-274-07864-7
- 相磯秀夫他(編)、『国産コンピュータはこうして作られた』共立出版(1985年)、ISBN 4-320-02278-5
- 高橋茂(著)、『コンピュータクロニクル』オーム社(1996年)、ISBN 4-274-02319-2
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- コンピュータ博物館 情報処理学会
- 金田 弘 - 日本のコンピュータパイオニア 情報処理学会
- NECの歩み: 会社概要|NEC 日本電気
- Jomonjin NEAC-2203 NEAC 2203ユーザーのページ
- NECのオフコン オフコン練習帳
カテゴリ: 書きかけの節のある項目 | コンピュータ (歴代) | 日本電気 | ミニコンピュータ