ブリヌイ
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ブリヌイ(ロシア語:複数'Блиныブリヌィー、単数Блинブリーン、英語:blini)
ブリヌイは、直径13〜18cmくらいの薄いパンケーキのようなもので、薄力粉またはそば粉、卵、牛乳、塩、砂糖、ヨーグルトなどを混ぜ合わせたものイーストで醗酵させ、専用のフライパンでひまわり油やバターを使って薄く焼き上げ、バターをたっぷりと塗ってからサワークリーム、キャビア、ザワークラウト、魚の薫製のような前菜の類をのせたり、ジャムなどをのせてデザートとして食べる。
現地では常日頃から食べられているが、特に2月下旬に催される四旬節の前の週マースレニッツァ(バター祭 Масленица、Maslenitsa; cf.謝肉祭)には大量に消費される。ブリンはその丸い形状から太陽の象徴とされ、キリスト教が広まる以前のスラブ民族の間でいくつかの儀式に利用されていた。この習慣はキリスト教が広まった後も東方正教会により引き継がれ、冬が終わり新しく太陽が再生される事を祝うマースレニッツァには伝統的にブリンが用意される(cf.冬至、クリスマス)。マースレニッツァの終わりは四旬節の始まりであり、肉、魚肉はもとより、乳製品や卵の消費が復活祭まで禁じられるため、マースレニッツァの間にブリヌィを消費することは乳製品や卵を四旬節までに使い切ってしまうという現実的な意義もある。マースレニッツァの最終日までに消費しきれなかったブリヌイは、藁でできた巨大な人形(ひとがた)のマースレニッツァ姫(冬の象徴。モレーナまたはコストローマ Kostromaとも)と共に火にくべられ、その灰は豊作を願って畑に撒かれる。
ブリヌイの丸くて欠ける所のない形は、満月や人生の円満さをも象徴している。葬儀の際には、死者を悼んでブリヌイが振舞われ、先祖の魂の象徴として、棺桶の中に一緒に入れる。出産をした後の母親にも供される。ロシアには、巡礼者や貧者のために窓の下枠にブリヌイを供える風習もあった。
なお、食品名としてはブリンでもブリヌィでも通じるが、1つの場合はブリンとしか言わないので注意。基本的にはブリンである。
ブリンは通常以下の食べ方がある。
- そのまま食べる - この場合にはバターやレーズン、玉葱、ジャガイモなどを生地にふりかけて焼く事もある。
- 具をのせる - ベーコン、サワークリーム、ジャム、キャビア、鮭やチョウザメの薫製などをのせて折りたたんだり巻いたりして食べる。キャビアをのせるのはロシアの伝統的なスタイルで、カクテルパーティによく出される。
- ブリヌイのパイ(ピローグ Пирог/Pirog)- 残ったブリヌイの間に上記のような具をはさんで重ね、オーブンで焼く。
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[編集] 語源
元来はスラブ人の食べ物であり、語根ブリン blinは「すりつぶす」という意味の古いスラブ語ムリン mlin、またはウクライナ語ムリネチ млинець mlyneć に由来する(となると、ゲルマン語 Müller, mill(er) (cf.チェコ語 mlynář, ラテン語 molinarius 「水車小屋の人夫」) などと語根が同じ事になる)
ブリヌイの指小形がロシア語のブリンチキ(Blinchiki)であり、こちらはクレープと似た食べ物で、東欧系ユダヤ民族のブリンツともよく似ている。
[編集] 関連
[編集] 参考文献
- Anne Volokh. The Art of Russian Cuisine. Collier Books, New York, 1983.
[編集] 外部リンク
- [1](ロシアのブリヌィ。写真付き)