プロ市民
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
プロ市民(-しみん)は以下のような言葉である。
- 「自覚・責任感を持つ市民」(=プロ意識を持つ市民)を意味する造語。余り普及していない。
- 一般市民を装い市民活動と称して政治的・営利的な活動を行う(とされる)者を指す造語であり、批判又は誹謗中傷する目的で使用される隠語(スラング)、蔑称。ほとんどの場合、こちらの意味で使用されている。
目次 |
発生
プロ市民には複数の意味があるが、これらの間に余り関連はないものと見られる。
そもそもは、政治にもっと関心を持とう、地域密着型の活動を通しプロ意識を持って政治や地域活動に参加する市民になろうという運動や人々を指す言葉であったらしい。この「プロ市民」は、桑原允彦・佐賀県鹿島市長が考え出した造語であるとされ、鹿島市の総合計画(外部リンク[1])にもプロ市民という言葉が見受けられる。
一方で、「左翼活動家の隠れ蓑」あるいは「市民活動で利権を得る者たち」を意味するレッテルとしての「プロ市民」がある。つまり「アマチュアのふりをしたプロによる偽の市民活動」というような意味合いである。この言葉は2001年8月に匿名掲示板2ちゃんねるのマスコミ板に立てられた「市民団体にふさわしい名前を・・・」というスレッドにて誕生したとされるが、異説もある。また、こちらの「プロ」はプロフェッショナルの他にプロレタリアート、プロパガンダもかけているらしい。
「プロ市民」という用語が普及した背景には、朝日新聞の読者投稿欄「声」の調査が挙げられる。「無職」「団体職員」といった肩書きの投稿者たちに対して、一部2ちゃんねらーがGoogleを使った氏名検索を行った結果、実は“筋金入りの”活動家であると判明したという。このような経緯により、プロ市民という言葉・概念が定着していった。
この後、主に後者の意味で「プロ市民」が用いられるようになった。以下ではこの意味でのプロ市民について記載する。
捉えられ方
ある活動を行っている者を指してプロ市民という際、「市民活動と称しているが、一部の市民・党派や、特定のプロパガンダ、外国勢力などのために活動を行っている者」を指していることが多い。この「プロ市民」は、プロ株主の持つ意味合いに近い。
「一部の市民・党派や、特定のプロパガンダ、外国勢力などのために活動を行っている者」と捉えられる限りにおいて、プロとしての煽動者や工作員のほか、職業として市民活動と関わる弁護士・政治家・学者であってもプロ市民とされることがある。例えば、イラク日本人人質事件の際、日本国内で自衛隊の撤退要求のシュプレヒコールを繰り返して「自己責任」として反論されたグループは、「プロ市民」として非難を浴びた。
最近では職業的という意味合いを強くし、誰かを「金目当てでNGO団体などの「市民団体」を設立する者である」として批判する時にも使われる。なお、この使用法については懐疑的な意見も存在する。
なお、欧米諸国によく見られるように、政府の政権交代の度に政府上級官僚とNGOあるいはNPO幹部との間で大規模に人的流動が起きる社会では、社会のエリート層として受け止められている市民セクタのプロフェッショナルという階層が存在する。彼らは自らの主義主張と合致しない政権の時期にはNGO、NPOの幹部、専門性の高い部署の活動家として活動し、主義主張の合致する政権が成立すると、政府の上級官僚として迎え入れられて政府スタッフとして活動する。日本社会でこのような階層が成立せず、社会の非主流的異端者として揶揄される「プロ市民」概念が生じた背景には近代社会の成熟の過程で官僚社会の閉鎖性が高まったこと、また第二次世界大戦後の政治・思想・言論の分野で戦勝者であり占領政策を通じて日本社会に強い影響を及ぼしたアメリカ合衆国の存在、東西両陣営の国際的対立、第三世界の錯綜した関係性の中で、複雑なねじれ現象(例えば反米ナショナリズムの要素の強い左翼に、近代国民国家的中央集権主義の要素を抱えた保守といった)をはらむ「保革対立」の構図が演出されていった歴史が深く影を落としている。
捉えられ方の問題
- ある活動を一部の市民・党派などのためではなく市民全体のためになると考える立場からは、活動を「偽の市民活動」と言われたに等しいことから、蔑称と捉えられる。
- 全市民のためになると考えられるような活動を行う者もプロ市民と呼称される場合もあり、このような活動に関わる弁護士・政治家・学者もプロ市民と呼ばれるのは問題視される。
- 市民活動とは無縁の活動を行っている者を中傷せんが為に「プロ市民」とレッテル貼りがされる場合がある。
- 企業へクレームをつける人々に対してプロ市民だと中傷する者が増えた。
以上のように、当初の定義から明らかに外れた目的でプロ市民と言う言葉を使用する者が増えたため、単なる卑語と見なされることも多い。
活動実態
「プロ市民」とされることがある多くの活動者は手弁当で活動しており、NPO法人の専従事務局員などでない限りはその活動で生計を立てている(2ちゃんねるなどで「ネット右翼」―主に「プロ市民」側からそのようにレッテルを貼られる人々―によって存在が指摘される)プロの活動家というものは存在しない。理由としては、NPO法人の構成員は、所属団体に会費を支払う義務はあっても、報酬を受ける事はあり得ない事が挙げられる。
批判的な立場からは「そもそも手弁当でこのような活動にのめり込むことができること自体が普通ではなく、初めから金持ちであるか、特定思想を喧伝して寄付を集めているか、何らかの利権で生計を立てているに違いない。そうでなくとも、通常の市民生活を営みながら行うことが可能とは考えづらい。例え可能であったとしてもそれはごく少数の人だけであり、それ自体が普通でなくそのような者が市民と称して活動することには違和感がある。」とも主張される。
使用状況
市民活動(少なくともその一部)に対して懐疑的な立場の者は、発祥とされる2ちゃんねる外でも使用している。ネット上での使用例は多くあり、保守系の市会議員が運営するウェブサイトでも使用例(外部:[2])が見受けられる。また、ネット外では小林よしのりの著作に用いられている例がある。
どのような購読者を想定しているかにもよるが、注釈無しで書籍などのネット外メディアで使用すると読者が意味を読みとれない。大手マスコミでの使用例は未だ確認されていない。
外部リンク
カテゴリ: 編集保護中の記事 | 2ちゃんねる | インターネットの文化