ホッカイドウ競馬
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ホッカイドウ競馬(ほっかいどうけいば)は、北海道が主催する地方競馬の名称である。
目次 |
[編集] 概要
以前は札幌競馬場・函館競馬場・帯広競馬場・旭川競馬場・岩見沢競馬場の5箇所を巡回して長年開催していたが、道内経済の不況の長期化やレジャーの多様化、パチンコとの競合などの要因による売上の伸び悩みから赤字運営が深刻化したため、1997年限りで函館・岩見沢・帯広での開催を廃止し、代わって門別トレーニングセンターを改装した門別競馬場を新設、札幌・旭川を含めた3場での開催に集約した。すべての競馬場施設を賃借しており、純然たる「自前」の競馬場は持っていない。
馬産地にあるという特性から、毎年4月の開幕から全国のトップを切って2歳新馬戦をはじめとした2歳馬による競走が行われている(中央競馬では6月以降、その他の地方競馬では概ね5月下旬~6月以降に始まるのが通例。なお、直接の人馬交流関係はないがばんえい競馬も4月から2歳新馬戦を行っている)。
JRAでは、各地で2歳馬による特別指定交流競走が行われており、このうち例年6月から9月にかけて函館競馬場や札幌競馬場で行われる競走では、ホッカイドウ競馬所属馬がJRA所属馬を破る例がよく見られる。特に2歳馬は4月から数多くの競走を経験しているため、この時点で概ね1戦~3戦とレース経験の浅いJRA所属馬に比べ競走馬としての完成度が高く、出走すれば人気になる場合もある。
近年では「サポーターズクラブ」(ホッカイドウ競馬所属馬などを対象とした仮想馬主制度。ペーパーオーナーゲームと同様)や3連複・3連単などの新賭式馬券の発売、ミニ場外「Aiba」の設置、全国初の「認定厩舎(外厩)」と呼ばれる外部民間牧場への馬房提供の認定制度の実施(2004年弥生賞・セントライト記念優勝馬コスモバルクはこの制度の適用第1号馬)など、新企画を積極的に展開している。また、重賞競走では2002年からホッカイドウ競馬独自のグレード制(H1・H2・H3)を採用している。
なお、ホッカイドウ競馬は原則火曜から木曜、ばんえい競馬は原則土曜から月曜の開催というローテーションが組まれており、一部を除き両者の開催日程が重なることはほとんどないため、道内では多くの場外発売所で両者の相互場外発売が行われている。
[編集] 存続の見通し
2001年からの経営再建5カ年計画が順調に進んだことを受けて、2005年11月、高橋はるみ北海道知事は「2006年度以後も、当面向こう3年間を目途に競馬開催を続行する」ことを正式に発表した。ただし、北海道は「2005年度の赤字額を半分程度に減らすこと」「単年度収支を均衡させるための見通しをつけること」を存続の条件としており、この条件を満たせない場合は3年の期限を待たずに廃止することも視野に入れるとしている。
おかれている状況はいまだ決して明るくはないものの、ミニ場外発売所「Aiba」の道内各地への展開、2006年4月からは主に電話投票利用者向けとしてCS放送で放送されてきたレース実況放送の無料化、さらには南関東地区の電話投票システム「SPAT4」との提携による首都圏の競馬ファンへの販路拡大など攻めの姿勢も見せており、「馬産地の競馬」として存続に向けた努力が続いている。
[編集] 競馬場
- 現在使用している競馬場
- 札幌競馬場:1953年から開催。中央競馬も開催している。
- 門別競馬場:1997年から開催。
- 旭川競馬場:1948年から開催。1994年からナイター競走(旭川ナイトレース)を開催している。2006年まではばんえい競馬も併催していた。
- 過去に使用していた競馬場
- 帯広競馬場:1948年から1997年まで開催。道営競馬発祥の地。ばんえい競馬は引き続き開催している。
- 岩見沢競馬場:1949年から1997年まで開催。2006年休止。
- 函館競馬場:1955年から1997年まで開催。中央競馬は引き続き開催している。
- 小樽競馬場:1948年から1953年まで開催。1953年廃止。
- 室蘭競馬場:1948年から1953年まで開催。1955年廃止。
[編集] 歴史
- 1948年:9月23日、帯広競馬場にて初のレースが行われ、当日は全12競走が開催された。第1競走は速歩競走の新馬戦(距離3400m、1着賞金3,000円)。8頭が出走し、優勝馬はハナイブキであった。この年は帯広、北見、旭川、小樽、室蘭の各競馬場で計25日開催され、全260レースが行われた。軽種馬(サラブレッド、アラブ等)やアングロノルマンの不足のため、和種馬(ドサンコ)による速歩・平地競走も行われた。
- 1949年:この頃、競走馬不足のため出走馬が1頭のみの単走競走が幾度も行われた(単走競走の馬券は発売されない)。この年から道営競馬によるばんえい競走が開催されるようになった。
- 1950年:速歩競走において女性騎手がデビューした。この年から収支が赤字に転落した(1955年まで)。
- 1951年:競走馬不足はなお解消せず、11頭の仔を産んだ27歳のアングロノルマン系牝馬ジヨンキユが速歩競走に出走している。なおこの馬は大差をつけて優勝した。
- 1953年:折からの競輪ブームの煽りを受け、極度の売上不振に陥った小樽競馬場が廃止され、国営競馬の札幌競馬場を借用することにより、札幌開催が始まる。同年、北見市・岩見沢市・帯広市・旭川市の4市による市営競馬が発足し、北海道の援助によって平地競走とばんえい競走を開催した。
- 1955年:前年から開催されていなかった室蘭競馬場が廃止され、函館開催が始まった。
- 1956年:札幌・函館で開催されるようになったことや、日本国内の景気回復によって売り上げが増加し、1949年以来の黒字決算となった。
- 1958年:アングロノルマン系馬による競走が廃止された。
- 1961年:日本初の女性調教師が誕生した。札幌・月寒にあった「道営札幌競輪」がこの年廃止され、その影響もあり道営競馬の売り上げが大幅に増加した。
- 1962年:市営競馬による平地競走が廃止され、市営競馬はばんえい競走のみを開催するようになった。
- 1966年:道営競馬によるばんえい競走が廃止された。これにより、道営競馬は平地競走、市営競馬はばんえい競走という二分制が確立され現在に至る。この年の冬、大規模な八百長事件が摘発された。
- 1970年:速歩競走が廃止された(中央競馬では1968年に廃止)。1966年の八百長事件を契機として、この年限りで連勝単式馬券が廃止された。同年秋、八百長事件に関わっていたとして道議会の現職議員が逮捕された。以後、八百長事件はほとんど発生していない。
- 1971年:八百長事件の防止とギャンブル性の抑制のため、1人1レースあたり5,000円を超える馬券の購入を禁止する規則が施行された。しかし数年で有名無実化し、1977年には廃止された。
- 1985年:門別トレーニングセンターが完成。
- 1991年:史上最高の売上(約454億円)を記録。
- 1992年:「JRA認定競走」開始。この年から収支が再び赤字に転落。
- 1993年:北海道の一般会計からの借り入れが始まる。
- 1997年:門別トレーニングセンターを改装した門別競馬場が新設され、門別開催が始まる。この年限りで岩見沢、帯広での開催が廃止された(形式上は休止)。
- 1998年:馬番連勝複式馬券を導入。
- 2000年:「スタリオンシリーズ競走」開始。
- 2001年:初のミニ場外馬券売場「Aiba静内」を開設。
- 2003年:馬番連勝単式・3連複・3連単馬券を導入。日本初の認定厩舎(外厩)制度が開始された。
- 2006年:
- 8月1日よりSPAT4(南関東地方競馬電話投票)での全レース発売開始。
- 8月8日よりマルチ・フォーメーション投票に対応。
[編集] 重賞競走(2007年)
開催日程により、年ごとに開催地・距離がたびたび変更される競走が多い。
2006年は、門別競馬場で重賞競走が施行されなかったが、2007年は「北斗盃」と「赤レンガ記念」の2重賞が予定されている。
[編集] 2歳
- 北海道2歳優駿(ダートグレード競走・JpnIII)
- エーデルワイス賞(ダートグレード競走・JpnIII) 牝馬限定
- ブリーダーズゴールドジュニアカップ (H1)2007年より新設
- 栄冠賞 (H2)
- リリーカップ (H3) 牝馬限定
- イノセントカップ (H3)
- サンライズカップ (H3)
- フローラルカップ (H3) 牝馬限定
[編集] 3歳
- 三冠競走
- その他
- これまでに三冠を達成した馬
[編集] 3歳以上
- ブリーダーズゴールドカップ(ダートグレード競走・JpnII)
- 北海道スプリントカップ(ダートグレード競走・JpnIII)
- 道営記念 (H1)
- ステイヤーズカップ (H1) 天皇賞・秋(JRA・GI)ステップレース北海道ブロック代表馬選定競走
- 赤レンガ記念 (H2)
- 星雲賞 (H2)
- 瑞穂賞 (H2)
- 道営スプリント(H2)
- エトワール賞 (H3)
- ノースクイーンカップ (H3) 牝馬限定
[編集] JRA認定競走(2歳馬)
いずれも勝馬が認定馬となる。
認定馬は、JRAに移籍する際に馬房が別枠で割り当てられるなどの特典がある。
[編集] フレッシュチャレンジ
- 競走条件:初出走馬
- 賞金:1着2,000,000円
- 2着以下の馬は、次走ルーキーチャレンジ・アタックチャレンジ・平場未勝利戦へ向かう。
- 以前は中央競馬の新馬戦と同様に、同一開催中であれば複数回出走できたが(ホッカイドウ競馬の開催は2週間以下なので実質2走)、現在は1回限りである。
[編集] ルーキーチャレンジ
- 競走条件:フレッシュチャレンジ未勝利馬でかつ翌週に出走する馬のみ
- 賞金:1着1,500,000円
- 2着以下の馬は、次走アタックチャレンジ・平場未勝利戦へ向かう。
- 条件が複雑だが、以前は2走できたフレッシュチャレンジを1走限りとしたため新設された。頭数不足などで不成立になった場合はその翌週にも出走できる。
[編集] アタックチャレンジ
- 競走条件:フレッシュチャレンジ・ルーキーチャレンジ・アタックチャレンジ未勝利馬(収得賞金のある馬のみ)
- 賞金:1着1,100,000円
- 2着以下の馬は、次走アタックチャレンジ・平場未勝利戦へ向かう。
[編集] その他の競走
[編集] サマーチャレンジ
- 競走条件:2歳、JRA認定競走優勝馬
- 優先出走権:JRA札幌競馬場で行われる2歳500万下競走(上位5頭)
- 2歳500万下競走の行われるおよそ2週前に行われ、競走名の後ろにローマ数字が振られる。スタリオンシリーズ競走として実施される場合は、スタリオンシリーズに準じた競走名となる。2006年は3競走が行われた。
[編集] ターフチャレンジ
- 競走条件:2歳、JRA認定競走優勝馬
- 優先出走権:JRA札幌競馬場で行われる2歳オープン特別競走(上位3頭)
- 2歳オープン特別競走の行われるおよそ2週前に行われ、競走名の後ろにローマ数字が振られる。スタリオンシリーズ競走として実施される場合は、スタリオンシリーズに準じた競走名となる。2006年は3競走が行われた。
- JRA函館競馬場で行われる2歳オープン特別「クローバー賞」の優先出走権は、栄冠賞の上位3頭と栄冠賞同日に行われるオープン競走の上位1頭に与えられる。
[編集] ウィナーズチャレンジ
- 2歳馬の特別競走であり年に複数回行われるが、出走資格や優先出走権などは特に無い(この競走に限らないが、地方競馬では各々の特別競走に固有の競走名を付けず、競走名を使い回すことがある)。
[編集] スタリオンシリーズ競走
優勝馬の馬主に対し、副賞として「特定種牡馬への次年度の種付権」を与える競走で、2006年は重賞・特別あわせて75レースが実施された。ホッカイドウ競馬の馬主には生産牧場の関係者が多いことから、時には賞金よりも価値が高くなる場合もある。対象となる特別競走には「(種牡馬名)賞」というレース名称が付けられるが、重賞競走の場合は「第49回道営記念〔H1〕(フレンチデピュティ賞)」のようにサブタイトルとなる。
[編集] 掲示板でのタイム表示
レース中のタイム表示は行っていない。また結果についても、従来は走破タイムのみの発表であったが、近年上がり3ハロンタイムも発表するようになった。
[編集] 能力検査
デビュー前の2歳新馬や、中央競馬や他の競馬場から転入してきた馬については「能力検査(能検・専門紙では能試とも呼ばれる)」が義務付けられ、これに合格しなければレースには出走できない。これは地方競馬でのみ行われているものであり、JRAにはない制度である。
[編集] 現在・過去の主な活躍馬
- コスモバルク
- ホッカイドウ競馬所属のまま、JRAクラシック三冠競走にすべて出走。海外遠征も行い、2006年にシンガポール航空インターナショナルカップで地方競馬所属馬として初の国際GI競走を制覇している。認定厩舎制度適用第1号馬。シンガポール航空インターナショナルカップ(国際GI)優勝、弥生賞(GII)優勝、セントライト記念(GII)優勝、皐月賞(GI)2着、ジャパンカップ(GI)2着など。
- ドクタースパート
- 1988年、道営出身馬として初の中央競馬重賞(京成杯)勝利。皐月賞(GI)優勝。
- アローキャリー
- ホッカイドウ競馬出身として初めて桜花賞(GI)優勝。
- オースミダイナー
- 国内最高齢(13歳)での重賞制覇(2001年・エトワール賞)、10歳~13歳で瑞穂賞4連覇(1997年~2000年)
- コトノアサブキ
- 馬なりでレコードタイムを叩き出すなど重賞を勝ちまくった、かつての道営の怪物ホース。
- ササノコバン
- 道営記念2連覇、瑞穂賞2連覇など、一時代を築く。ブリーダーズゴールドカップでも2着に食いこむ。
- シバフイルドー
- 5歳から10歳まで同一重賞(クイーンカップ・現在は廃止)6連覇。現在も日本記録として残っている。
[編集] 発売している勝馬投票券
全レース100円単位。 ○…発売 ×…発売なし
単勝 | 複勝 | 枠番連複 | 枠番連単 | 馬番連複 | 馬番連単 | ワイド | 3連複 | 3連単 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
○ | ○ | ○ | × | ○ | ○ | × | ○ | ○ |
[編集] 予想専門紙
以下の専門紙が販売されているほか、道内で発行されているスポーツ新聞にも、一部のレースが馬柱つきで掲載されている。
- かつて存在した専門紙
- 1馬(ホッカイドウ競馬版)
- 競馬研報社
[編集] 在宅投票
オッズパークに加盟しているほか、2006年から新たに南関東競馬の電話投票システム「SPAT4(スパット・フォー)」加入者も購入が可能になった。
[編集] 場外発売所
運営主体をまたぐ発売所の間では、投票券の払戻に互換性がないので注意すること。
[編集] ホッカイドウ競馬が運営する場外発売所
ホッカイドウ競馬の全競走を発売するほか、南関東競馬を広域場外発売する。
また、各Aibaではばんえい競馬を場外発売している(都合により、発売が休止される場合がある)。
- 札幌競馬場 札幌市中央区北16条西16丁目
- 函館競馬場 函館市駒場町12-2
- 門別競馬場 沙流郡日高町富川駒丘76番地1
- 帯広競馬場 帯広市西13条南9丁目
- 旭川レーシングセンター 旭川市宮下通15丁目
- ハロンズ岩見沢 岩見沢市6条西2丁目
- ウインズ釧路 釧路郡釧路町中央2丁目5番地
- ウインズ室蘭 室蘭市本輪西町1丁目6番3号
- Aiba静内 日高郡新ひだか町静内木場町2丁目1番30号
- Aiba苫小牧(ばんえい発売時はハロンズ苫小牧) 苫小牧市木場町1丁目 トマモール地下
- Aiba小樽 小樽市築港11-2 ウイングベイ小樽(旧マイカル小樽)1F
- Aiba滝川 滝川市栄町3丁目 高林デパート地下
- Aiba浦河 浦河郡浦河町大通3丁目 ショッピングセンターMio2階
- Aiba中標津 標津郡中標津町東31条南1丁目5番地
- Aiba留萌 留萌市花園町1丁目7番 ハスコム留萌ビル(旧長崎屋)2F
- Aiba札幌駅前 札幌市中央区北4条西2丁目 パチンコひまわりタワー5F・6F
- Aiba千歳 千歳市幸町3丁目3-2
- Aiba函館港町 函館市港町3丁目17
- Aiba江別 江別市野幌町68番地
[編集] その他
- 道内
以下のばんえい競馬が運営する場外発売所では、ホッカイドウ競馬を場外発売する。ただし、システムの都合上、3連勝式(3連複・3連単)の発売は行わない。
- 北見競馬場 北見市若松306番地
- ハロンズ名寄 名寄市西1条南8丁目
- 道外
- 大井競馬場内「ふるさとコーナー」
- 南関東競馬開催日に限り、ホッカイドウ競馬を場外発売する。
- 但し、ホッカイドウ競馬が昼間開催で南関東がナイター開催の場合、一部の競走が発売されない場合がある。
[編集] 払戻について
原則として開催日のみ払戻業務を行っているほか、郵送での払戻も受け付けている。これは遠隔地や閉幕後など、次開催までに払戻有効期間を過ぎてしまう場合があるためである。
[編集] レース実況放送
下記の事業者が全レース完全生中継を実施している他、公式ホームページでもレース実況をブロードバンドで放映している。
[編集] 実況放送協力店(2006年)
道内各地のレジャー施設や飲食店の一部では、協力店としてレース実況を放映している。
- 札幌市
- 札幌モエレ健康センター(入浴施設)
- 北広島市
- 味一番(飲食店)
- 旭川市
- オークス(飲食店)
- いさお(飲食店)
- 倶知安町
- ファーストムーン羊蹄(ドライブイン)
- 浦河町
- まさご(サウナ施設)