ポリネシア
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ポリネシア (Polynesia) はオセアニアの海洋部の分類の一つ。ポリネシアはギリシャ語で「多くの島々」の意味である。
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[編集] 地理
太平洋で、概ねミッドウェー諸島(ハワイ諸島内)・アオテアロア(ニュージーランド)・ラパ・ヌイ(イースター島)を結んだ三角形(ポリネシアン・トライアングル)の中にある諸島の総称。
アオテアロア(ニュージーランド)・サモア・トンガ・ツバル・キリバスの各国と、アメリカ合衆国・フランス・イギリス・チリ・アオテアロアなどの属領がある。ハワイ・フェニックス・サモア・ソシエテ・タヒチ島・トンガ・ウォリス・ツバル・トケラウ・クック諸島・ライン・オーストラル・トゥアモトゥ・テ・ヘヌア・エナナ(マルケサス諸島)などの諸島が含まれる。また、域外ポリネシア(Polynesian Outlier)と呼ばれる、ポリネシア文化を保持した島々がミクロネシア・メラネシアに点在している。域外ポリネシアには、ポリネシア・トライアングル内では失われてしまった古代の知識が継承されている地域があり、特にソロモン諸島国に属するサンタ・クルス諸島のタウマコ(Taumako)は、古代ポリネシアの航法技術(後述)に最も近い技術を継承している地域として注目を集めている。
[編集] 文化
ポリネシアはラピタ文化時代に植民された西ポリネシア(サモア、トンガ等)と、ポリネシア文化の成立後に植民された東ポリネシア(ハワイ、タヒチ、テ・ヘヌア・エナナ、ラパ・ヌイ、アオテアロア等)に分けられる。西洋人がこの海域に到達した時点でポリネシア人は相互に極めて似通った言語(オーストロネシア語族の一派)を話しており、キャプテン・クックがタヒチからハワイに同行した人物は、ハワイ人との会話に殆ど困難を覚えなかったと伝えられている。また、ポリネシア海域内の先住民の身体形質の同質性は極めて高い。
[編集] 人と言語
ポリネシア人はいわゆるモンゴロイドに分類されるが、モンゴロイドの中では例外的なまでに大型の体格と、掘りの深い顔立ちから、コーカソイドではないかと考える白人も少なくなかった。ポリネシア人の体格の好例として、元大相撲力士でタレントのKONISHIKI(小錦)(サモア系ハワイ人)、元大相撲力士でプロレスラーの曙(ハワイ人)、プロレスラーのジャマール(サモア人)、キックボクサーのマーク・ハント(サモア人)などがいる。またアオテアロアの先住民マオリもポリネシア人の一派であり、ラグビー・フットボールのアオテアロア代表チーム「オールブラックス」が試合前に披露するハカは、ポリネシア系言語のマオリ語である。
[編集] 移民の流れ
ポリネシアへの人類の拡散プロセスは、トール・ヘイエルダールが唱えた南米からの植民説、ベン・フィニーらが唱えた東南アジアからの植民説があるが、1975年にハワイで建造された双胴の航海カヌー、ホクレアによる数々の実験航海により、現在では東南アジア説が定説となっている。
古代のポリネシア人たちは、六分儀、クロノメーター、方位磁針といった航法器具を用いずに、数千キロメートルに及ぶ遠洋航海を行っていたと考えられているが、この航法技術は現在ではその一流派が域外ポリネシアのタウマコ島に残存するのみである。一方、1980年代に先住ハワイ人と白人の混血であるナイノア・トンプソンが、ミクロネシア連邦の中央カロリン諸島に属するサタワル島の航法師、ピウス・ピアイルック(通称マウ・ピアイルック)から伝授されたミクロネシア式の航法技術を元に、近代の西洋天文学の知識を加味して、新たな航法技術を創始し、クック諸島、アオテアロア等ポリネシア各地にこれを広めている。この新しい航法技術は、ポリネシア先住民のエスニック・アイデンティティの拠り所の一つとなっている。
古代ポリネシア人が用いた航海カヌーは、特に東ポリネシア海域では二つの船体を並べてその間にデッキを張った双胴船(ダブル・カヌー)であったと推測されているが、域外ポリネシアではシングル・アウトリガー・カヌー形式の航海カヌーも使用されており、ポリネシアの航海カヌー=ダブル・カヌーではない。
ポリネシアで発明されたと推測されている航海技術には、ダブル・カヌーの他にクラブクロウ・セイルがある。これはラテン・セイルのような直線的なブームではなく、カーブを描いたブームをマスト下部から上方に向けて装着したもので、そこにカニの爪のような形状の帆を張ることからこのように呼ばれる。近年の研究では、クラブクロウ・セイルはラテン・セイルと同等以上の風上帆走能力を持つことが確認されており、古代ポリネシア人の遠洋航海、特に西ポリネシアからタヒチやテ・ヘヌア・エナナへと貿易風に逆らって航海する際の強力な武器になったのではないかと考えられている。
[編集] 生活
農耕は根菜・樹上農耕でタロイモやココヤシなどに加え、サツマイモを主食とする。サツマイモは南米原産であるが、西洋人の来航前に既にポリネシア域内では広くサツマイモが栽培されていた為、古代ポリネシア人は南米までの航海を行っていたのではないかと推測されている。