ポルターガイスト現象
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ポルターガイスト現象とは、ポルターガイスト(Poltergeist)と呼ばれる霊的存在が引き起こすとされている、心霊(的)現象の一つ。スティーヴン・スピルバーグの映画「ポルターガイスト」の題材にもなっている。「ポルターガイスト」とは、ドイツ語で「騒がしい霊」の意味。
特に特定の建築物内において、そこにいる誰一人として手を触れることなしに、その内部に収納、または、設置された日用雑貨や家具などが移動するというもの。住人が就寝中に移動することが多く、中には移動する過程が直接目撃されたりした例もあった。近年では、テレビなどの電化製品がリモコン装置も含め手を触れないままにオンになる例もあった。また、「誰もいないのに音が聞こえる」といったラップ現象も、この現象の一つとして分類する研究者もいるが、物理的現象という意味では霊的原因によるとされる。音自体はその状況を録音しない限り証拠性に乏しく、「別個の現象」とする見解もある。
[編集] 解釈
多くの現象のうち、ほとんどについては、説明がつけられている。
- 作為的な原因
- 作り話。映画にもなった「悪魔の住む家」は、検証により完全に作家によるでっち上げであったことが判明している
- 食器や雑貨が空中を飛ぶ現象のいくつかは、隠しカメラなどによって使用人や子供、第一発見者などが自ら引き起こしたものであることが暴露されている。また、前述のとおりこの現象に含めてよいのかどうか賛否の分かれるラップ現象についてではあるが、19世紀のフォックス姉妹の事例では、敬虔な母親を脅かすために幼い姉妹がやった悪戯が大騒ぎになり、真相を言い出せなくなったことを後に自ら告白している。これらはポルターガイスト現象が思春期の子供や情緒不安定な家族がいる家庭で起こりやすいという超心理学上の知見とも一致する。しかし、フォックス姉妹は後に告白の内容を撤回した(ハイズビル事件の項参照)。
- 不作為の原因
- アパートなどで不可思議な振動が起きる事例は、TVの人気番組のCM中に住民が一斉に便所を使用したため、下水管を大量の水が流れたためであることが知られている。
- 単なる勘違い。置き忘れてなくなったのを移動したと勘違いしたりする場合。
- うわさ話、都市伝説。そのような現象は発生していなかったのに無責任な噂に尾ひれが付いて、まことしやかに語られるようになった。
- 機械的な原因
- 「棚などの上におかれていた」、「比較的小さな雑貨等が移動した」事例などは、「完全に埋めきれていなかった古井戸や、使われなくなった下水道跡、あるいは、自然空洞の上に家を建て、近くを通りかかった自動車の振動などが、それらの空洞に共鳴すること」によって引き起こされたとされた。
- そういった状況がある条件を満たす場合、風の音でも共鳴し、物体の移動と共に起こった「地の底から響く呻き声」の場合での正体であるともされた。
- 地下に空洞の類がなくとも、工場などが近くにある場合は、そこにある複数の機械や装置が起動した際の人間の耳には聞こえない低周波などでも引き起こされる場合もありうるとの見解もある。
- 「ガラス製人形ケース内に飾られていた和人形の衣装や頭髪の金糸の先からひとりでに小さな火花がスパークした」事例においては、「近くを通りかかったトラックの高出力の不法無線機の電磁波によるもの」であるとの理由が示された。
- テレビなどの電化製品の誤作動についても同様の原因とされた。
[編集] 超心理学的解釈
古くは、妖精の類の小人のいたずらであるとか、悪魔の仕業と恐れられた時代もあった。心霊や超心理学の研究が進んでからは、「その建物内に存在するとされる地縛霊などの霊的存在が、そこに居合わせた人間が有する、霊能力や超能力を介在して顕現させる」といった見解を示した(特に精神的に未熟な子供によるものという説もある)。よって、住居人、あるいは単に訪問しただけといった形を問わず、そういった能力を有する者が、「ポルターガイスト」が存在するとされる建築物内に入った際に起こる場合が多いともされていた。また、そういった見解によると、それを引き起こすとされている霊魂は通常は悪霊とされていて、地縛霊である場合が多いとされているが、単なる浮遊霊であった事例もあり、必ずしも、「悪意のある霊的存在によって引き起こされる」とは限らないともされている。
これらは「合理的説明」の例に過ぎず、原因が判明した事例の他、明らかに関係者による操作や作為のあった例や、認知者の勘違いや錯覚と判明した例以外は、推測の域を出ないものもある。また、「大型の家具などが振動では説明しきれない距離を人知れず移動していた(いくつかは認知者の勘違いの場合)」、「部屋内の雑貨が目撃者のいる前で空中を飛翔、または浮遊した事例(その多くは前述のとおり事実が暴露されている)」、「ガス調理器具などが手を触れないままに点火した」等、その中での「前述のいかなる条件にも該当しないとされる事例」についての科学的解釈や合理的説明はできないままである。一般の科学的な見地からは無視されがちな現象ではあるが、特に裏工作や手品などの策略を用いても同様の現象を引き起こす(あるいは、引き起こされる)ことは可能なため、心霊面の事象に真剣に取り組む者にとって検証の際の障害にもなっている。よって、これまでに度々行われてきたこの種の実験や検証、見世物的行事といったあらゆる実践水準に於いて、この現象に関与する霊能力者(または、霊媒師)の多くは、手品師の参加を極端に嫌ったともいわれている。単に最初から否定的な立場の見物客を霊的・精神的感応といった面で嫌ったという解釈も成り立つ。しかしながら、逆にそれを知った懐疑的な側の報道機関関係者や研究者に対しては、その事実が手品と同じように裏工作や仕込みがあると疑わせる結果にもなったといわれている。