モミ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
?モミ | ||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
モミ(2006年10月撮影) |
||||||||||||||||||
オオシラビソ(2002年8月撮影) |
||||||||||||||||||
分類 | ||||||||||||||||||
|
モミ(樅)は球果植物門マツ科モミ属の常緑高木。北半球の寒冷地から温帯にかけて、約40種が分布する。クリスマスツリーで有名。(ただし、もともとはクリスマスツリーはドイツトウヒが使われていた)
樹形や葉の付き方はトウヒ属と非常に似るが、樹皮は白っぽく(樹種や樹齢により茶色っぽい樹皮のものもある)横に線が入る、葉は細くて固い針状で先端は2つに分かれる、球果は枝先に上を向いて立つ、熟すると鱗片が剥がれ種子を散布するので球果の形で地上に落ちることはなく枯れ枝の先に球果の芯が突き出した針のような形で残る、といった点でトウヒ属と区別できる。
日本分布するのは、以下の5種類で、トドマツ以外は日本の特産種。
目次 |
[編集] モミ Abies firma
日本のモミ属中もっとも温暖地に分布し、その北端は秋田県、南端は屋久島に達する。日本のモミ属中ではもっとも葉が大きくて硬い。若枝には軟毛が生える。ツガとともに照葉樹林帯で広葉樹に混じって生育するが、照葉樹林帯と落葉広葉樹林帯の中間地帯には、往々にして高木にモミとツガが優占する森林が成立することがあり、これを中間温帯林と称する場合もある。葉は細くて固い針状で、先端は鋭く尖るが、老木では先の丸まった葉をつける。球果は10~15cmと大柄で、はじめ緑色、10月頃成熟すると灰褐色になる。樹高は40mにも達するものもある。
[編集] ウラジロモミ Abies homolepis
モミよりも寒冷な気候を好み、福島県から四国までの温帯北部(落葉広葉樹林帯)から亜高山帯下部に分布する。本州中部では、おおよそ高度1000mでモミと入れ替わり、1700-800mでシラビソと入れ替わる。葉の裏側が白いためこの名が付いている。ダケモミ・ニッコウモミとも。モミに似るが、葉先はモミほど鋭く二裂しない、若枝は無毛である、などの違いがある。球果はモミより若干小さくはじめ暗紫色、熟成すると黄褐色を帯びる。
[編集] シラビソ Abies veitchii
別名シラベとも。福島県の蔵王から中部山岳地帯・紀伊半島の大峰山系、四国の剣山・石鎚山まで分布する。ウラジロモミより更に上部、海抜1500mから2500mの亜高山帯に分布する。四国に分布するものは、シコクシラベAbies veitchii var. sikokianaという変種として扱われることもある。球果は4~6cmとかなり小型で、成熟すると暗青紫色になる。樹高は大木では35m以上に達する場合もあるが、自生地が標高の高い山岳地帯であるため、多雪・強風・土壌の貧弱など過酷な自然環境により、大木となることはかなりまれである。
[編集] オオシラビソ Abies mariesii
別名をアオモリトドマツと言い、白山から青森県までの亜高山帯に分布する。本州中部では海抜1500-2500m、東北では1000m以下から分布する場所もある。シラビソに近い気候を好むため、本州中部の山岳地帯では、通常両者は混生しているが、比較すると太平洋側の比較的雪の少ない山岳にはシラビソが、日本海側の多雪地の山岳ではオオシラビソが優勢である。枝からの葉ののび方がシラビソ及び他のモミ属樹種とかなり違い、上から見ると枝が葉に隠されて見えない。球果はシラビソと同じかやや大型、色も似るが、先端が丸みを帯びる点が、やや尖っているシラビソの球果と区別できる。モミ属の中での系統的に他の種と大きく外れており、日本はもとよりユーラシア大陸に近縁種はなく、太平洋を越えたカナダ南部と米国北部のアマビリスモミが唯一の近縁種とされる。シラビソと同様、大木となる可能性はあるが、山岳地帯の過酷な環境のため、ほとんどの場合はそれほどの樹高にならない。
[編集] トドマツ Abies sachalinensis
トドマツは、北海道のほぼ全土と千島南部、サハリンの針広混交林から亜寒帯林にかけて分布する。シラビソにごく近縁とされる。アカトドマツ・アオトドマツ2つの品種に細分されることもある。球果は黒褐色で、種鱗が長く突き出るものがアオトドマツ、あまり突き出ないものをアカトドマツに区別される。アカトドマツのうち、種鱗がまったく突きでないものを更にエゾシラビソと称する場合もある。アカトドマツは北海道東部・北部またはより高い高度で、アオトドマツは南西部またはより低い高度で多い。
http://shiretoko.muratasystem.or.jp/05fieldguide/10plant/70010todomatu.html
[編集] 世界のモミ
モミ属はシベリア・カナダ・アラスカの亜寒帯から南は北アフリカ・中近東・ヒマラヤ・ビルマ・メキシコ・グァテマラの山岳地帯までの広い範囲に分布する。
- Abies fraseri フレーザーモミ 北米アパラチア山脈
- Abies balsamea バルサムモミ(カナダバルサム) 北米・カナダ・米国北部の中~東部。
- Abies balsamea var. phanerolepis バルサムモミの変種
- Abies bifolia ロッキーモミ 北米西部、カナダから米国にかけてのロッキー山脈沿い
- Abies lasiocarpa ミヤマバルサムモミ 上記と同種ともされる。北米西部のオリンピック山脈・カスケード山脈
- Abies lasiocarpa var. arizonica 上記の変種。アリゾナ・ニューメキシコに分布
- Abies sibirica シベリアモミ ボルガ川以東のシベリア・モンゴル・新疆ウイグル自治区・黒竜江省
- Abies sachalinensis トドマツ 北海道・サハリン・千島
- Abies koreana チョウセンシラビソ 韓国(済州島含む)の山岳地帯
- Abies nephrolepis トウシラベ ウスリー・中国東北地方・北朝鮮
- Abies veitchii シラビソ(シラベ) 日本・本州
- Abies veitchii var. sikokiana シコクシラベ シラビソの変種。四国
グランディス節 北米西部・メキシコ・グァテマラに分布。
- Abies grandis グランディスモミ カナダ南部・米国北西部の太平洋岸・カスケード山脈から海岸山脈にかけて
- Abies grandis var. idahoensis グランディスモミの変種。北西部の内陸部山岳地帯
- Abies concolor シロモミ 北米西部、ロッキー山脈南部の海抜1700-3400mに分布
- Abies concolor subsp. lowiana シロモミの変種、太平洋岸のカスケード山脈・シエラネバダ山脈の900-2700mに分布
- Abies durangensis ドゥランゴモミ メキシコ北部・ドゥランゴ州付近?
- Abies durangensis var. coahuilensis ドゥランゴモミの変種。メキシコ北部・コアウィラ州付近?
- Abies flinckii ハリスコモミ メキシコ中部・ハリスコ州付近?
- Abies guatemalensis グァテマラモミ グァテマラ
アビエス節 ヨーロッパに分布する
- Abies nebrodensis シチリアモミ イタリア・シチリア島の山岳地帯に分布
- Abies alba ヨーロッパモミ(ギンモミ) ピレネー山脈を西限に、アルプス・カルパチア山脈など中欧・南欧の山岳地帯に分布。
- Abies borisii-regis ブルガリアモミ バルカン半島南部のブルガリア・ギリシア北部・旧ユーゴなどの山岳地帯。
- Abies cephalonica ギリシアモミ ブルガリアモミにきわめて近縁。ギリシアの山岳地帯に分布
- Abies nordmanniana コーカサスモミ(ノルドマンモミ) コーカサス山脈の山岳地帯に分布
- Abies nordmanniana subsp. equi-trojani トルコモミ コーカサスモミの変種、トルコの黒海南岸山岳地帯
- Abies cilicica キリキアモミ トルコ南部の山岳地帯
ピケアステル節 スペインと北アフリカに分布
- Abies pinsapo スペインモミ スペイン南部のシエラネバダ山脈に分布
- Abies pinsapo var. marocana モロッコモミ スペインモミの変種、モロッコのジブラルタル海峡より山岳地帯に分布。
- Abies numidica -アルジェリアモミ アルジェリアのアトラス山脈中に分布
- Abies kawakamii ニイタカトドマツ 台湾の高山に分布
- Abies homolepis ウラジロモミ 日本に分布。本州・四国
- Abies recurvata ミンモミ 中国?
- Abies recurvata var. ernestii 上記の変種
- Abies firma モミ 日本産、本州・四国・九州
- Abies beshanzuensis 中国南東部、絶滅危惧種。現存する成木は3本。
- Abies holophylla マンシュウモミ(チョウセンモミ) 中国東北地方・北朝鮮・ウスリーに分布
- Abies chensiensis -センセイモミ 中国陝西省
- Abies pindrow ヒマラヤモミ ヒマラヤ山脈西部、アフガニスタン北東部からインド中部・ネパールまで。
- Abies ziyuanensis ジュウアンモミ 中国産?
アマビリス節 日本と北米太平洋岸に分布
- Abies amabilis アマビリスモミ 北米西部の太平洋岸沿い山岳地帯(海岸山脈・カスケード山脈)に分布。日本のオオシラビソに近縁。
- Abies mariesii オオシラビソ 日本・本州産
プセウドピケア節 ヒマラヤの高山に分布
- Abies delavayi
- Abies fabri
- Abies forrestii
- Abies chengii
- Abies densa
- Abies spectabilis ヒマラヤ東部
- Abies fargesii
- Abies fanjingshanensis
- Abies yuanbaoshanensis
- Abies squamata
オイアメル節 メキシコ高地に分布
- Abies religiosa レリヒオサモミ メキシコ中央部・南部・グァテマラの海抜2100-4100mに分布
- Abies vejarii
- Abies vejarii var. mexicana メキシコモミ 上記の変種
- Abies hickelii
- Abies hickelii var. oaxacana オアハカモミ 上記の変種、メキシコ南部・オアハカ州。
ノーブル節 北米西部高地
- Abies procera ノーブルモミ 米国西部カスケード山脈・海岸山脈ノ海抜900-2700mに分布
- Abies magnifica カリフャルニアアカモミ ノーブルモミに近縁。シェラ・ネバダ山脈に分布
- Abies magnifica var. shastensis シャスタアカモミ 上記の変種
ブラクテアタ節 カリフォルニアに分布
- Abies bracteata ブリストルコーンモミ(サンタ・ルシアモミ) カリフォルニアの太平洋岸沿いに分布