リュビ級原子力潜水艦
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リュビ級原子力潜水艦(-きゅうげんしりょくせんすいかん Rubis class submarine、Les sous-marins nucléaires du type Rubis)はフランス海軍最初の攻撃型原子力潜水艦。
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[編集] 概要
本級の排水量は2,000トン程度で、現用の他国の攻撃型原子力潜水艦に比べてかなり小さく(他国の攻撃型原子力潜水艦は少なくとも4,000トン超の排水量を持つ)、2005年現在、実用の戦闘用原子力潜水艦としては間違いなく最小であり、おそらく今後ともこの記録を保持しつづけるであろう。動力に制限のない原子力潜水艦にとって、過小なサイズは、運用の経済性を損ねるものとなる。事実、本級の兵装搭載量・連続航海日数はかなり小さい。にもかかわらず、このような設計がなされているのは、フランス原子力潜水艦隊の歴史と深く関連している。
第2次大戦後のフランス海軍における原子力潜水艦隊の建設は1950年代に開始され、1958年には最初の船体が発注されているが、ド・ゴール政権成立の翌年(1959年)に、この発注は取り消された。というのも、独自外交路線のもと、フランス独自の管理の下に置かれた核戦力を確保する目的で陸上・航空・海中システムが並行して開発されていたが、とりわけ海軍が重視されたため、つまりはド・ゴールの政治的圧力のもとで弾道ミサイル原子力潜水艦の開発が最優先されたためであった。
まず弾道ミサイル原子力潜水艦を開発し、攻撃型原子力潜水艦の開発を後回しにするというのは明らかに定石破りである。フランス海軍は、弾道ミサイル原子力潜水艦が一定の成功を収めたと評価されるまで、攻撃型原子力潜水艦の開発に着手しなかったため、本級の獲得も1970年代半ばと相当に遅い。また、このことに伴い、本級の開発は、最小限の資源で最も迅速に達成されることが要求されたため、またもや定石破りな手法が用いられた。すなわち、船体設計に通常型潜水艦のアゴスタ級のそれを流用し、さらにソナーや兵装管制システムについても同様のことがなされた。本級の特異性はこうした歴史的経緯によるものなのである。
なお、本級は、その推進方式についても独自性を見てとることが出来る。すなわち、世界的に珍しい原子力タービン・エレクトリック推進を採用しているのである。この方式は、静粛化の面では有利だが、システムの複雑化、信頼性の低下、重量の増大などの問題があるため、他の原潜運用国では非一般的である。しかし、2005年現在、本級の後継のバラクダ級原子力潜水艦も含めて、フランス海軍の原子力潜水艦はすべてこの方式を採用している。
[編集] 発展と運用
[編集] エグゾセ運用能力
1984年に就役した2番艦サフィールは、本級で最初にSM39エグゾセ対艦ミサイルを装備した艦となった。1番艦リュビも後日改装により、エグゾセ運用能力を獲得している。
[編集] アメティスト改正
本級5番艦アメティストおよび6番艦ペルルは、4番艦までよりも全長がやや大きく(+0.5m)、水中排水量がやや小さく(-30t)、船型も異なる(クジラ型に対し涙滴型)ので、アメティスト・バッチ、改リュビ級、またはアメティスト級と呼ばれる。本級の命名法(宝石の名にちなむ)に従って、アメティスト(Améthyste)とはもちろん宝石の名であるが、同時に「戦術、流体力学、静粛性、通信、聴音の改良」(Amélioration Tactique, Hydrodynamique, Silence, Transmission, Écoute)の頭文字でもあって、列挙されたような性能向上を目的としたものである。なお、1988~1995年には、先に就役した4隻にも遡って適用されているので、両者を併せてリュビ=アメティスト級と呼ばれることもある。いずれにせよ、開発および運用上、同一の系列に属していることに変わりはない。
[編集] 運用
本級は、ツーロンおよびロリアンを母港とする2個戦隊に編成されている。また、攻撃型原子力潜水艦としては余り例を見ないが、本級には1隻あたり、完全編成の乗員が2組——赤(Rouge)チームと青(Bleu)チーム——用意されており、少数の艦の稼動効率を高める努力がなされている。
2010年以降には順次退役が予定されており、その後、2012年から、バラクダ級原子力潜水艦と本級が1対1で置き換えられる予定である。一番艦リュビの就役は1983年であり、六番艦ペルルの就役は1993年であることから、全ての艦が退役するのは2020年前後であると予想される。
[編集] 諸元
- 分類:攻撃型原子力潜水艦(SNA: sous-marins nucléaires d'attaque)
- 1番艦の就役:1983年2月23日
- 建造所:DCNシェルブール造船所
- 全長(原型/アメティスト改正後):72.1m/73.6m
- 全幅:7.6m
- 吃水:6.4m
- 水上排水量:2,385t
- 水中排水量(原型/アメティスト改正後):2,670t/2640t
- 機関:原子力タービン・エレクトリック方式 - K48型加圧水型原子炉(48MW)×1基/ターボ交流発電機×2基
- 出力:9500SHP
- 最高速力:、水中25kt(46km/h)
- 航海日数(平均/最大):45日/60日
- 運用深度:300~500m
- 乗員:65名(士官8名、下士官兵57名)
- 設計:シェルブール海軍工廠、DCAN
- 探索装置:DMUX20(複合ソナー)、DSUV62C(曳航ソナー・アレイ)、DRUA33(水上探索レーダー)
- 指揮・航法・通信および電子戦機材:TITAC(戦闘情報システム)、SEAO/OPSMER(指揮支援)、Minicin(統合航海) 、Syracuse2(衛星通信)、ARUR13(ESM)
[編集] 同型艦
本級の艦名はすべて宝石の名にちなんでいる。当初は地名がつけられる予定で、1番艦から3番艦には、順にプロヴァンス(Provence)、ブルターニュ(Bretagne)、ブルゴーニュ(Bourgogne)の名が割り当てられていた。艦名の後の日付は順に起工/進水/就役。
- S601 リュビ(Rubis) - ルビー、1976年12月11日/1979年7月7日/1983年2月23日
- S602サフィール(Saphir) - サファイア、1979年9月1日/1981年9月1日/1984年7月6日
- S603 カサビアンカ(Casabianca) - 人名(fr:Luc-Julien-Joseph Casabianca)、1981年9月19日/1984年12月22日/1987年5月13日
- S604 エムロード(Emeraude) - エメラルド、1982年10月/1986年4月12日/1988年9月15日
- S605 アメティスト(Améthyste) - 紫水晶、1983年8月31日/1988年5月14日/1992年3月3日
- S606 ペルル(Perle) - 真珠、1987年3月22日/1990年9月22日/1993年7月7日
- S607 テュークワーズ(Turquoise) - トルコ石、建造中止
- S608 ディアマン(Diamant) - ダイアモンド、建造中止