一つの指輪
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一つの指輪(One Ring)は、支配する指輪(Ruling Ring)として知られJ・R・R・トールキンの中つ国世界の架空の品である。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
冥王サウロンは第二紀に、エルフの金銀細工師の力とかれの力を合わせて、かれの力を増し、かつケレブリンボールとその部下がサウロンの影響下で作ったほかの力の指輪を支配するためにこれを作った。そのために、指輪のうちに自分のフェア(魂あるいは精神)の一部をこめた。したがって、かれは、指輪を身に付けると以前より強くなったが、失うとはるかに弱くなった。この指輪は単純に金で作られているように見えたが、事実上損なわれることはなく、もともと鍛造された火山の亀裂に投げ込むことでしか破壊されない。下位の指輪と異なり、宝石はついてないが、(ほとんど知られていなかった)単純な試験で一つの指輪であることを試すことが出来た。これは火で熱すると、火文字で書かれたモルドールの言葉による伝承の一節が浮かび上がるのである(指輪の銘)。
この指輪を身につけると、人は物理的な領域から精神的な領域へ部分的に「変移する」と考えられる。そこで、かれが自分の意志に指輪の意思を従属させたならば、指輪をなくす前にサウロンが持っていたすべての力を振うことができる。特に他者の意志を制御し、奴隷にすることができる。(通常、最初に気づく)指輪の副作用は、生きている人間のような物理的な存在からは見えなくなり、幽鬼のような精神的な存在からはよく見えるようになり、視界が暗くなり、聴覚が鋭くなる。この「影界」は幽鬼が常に住むことを強いられた世界だが、そこはカラクウェンディ(光のエルフ)が大きな力を持つ世界でもある。したがって、グロールフィンデルは、フォルノストの合戦で、後に裂け谷のブルイネンの浅瀬で再び魔王を止めることができた。
不可解なことにトム・ボンバディルはこの指輪に影響されなかった。あるいは、指輪はかれに効果を及ぼすことがなかった。これにはいくつかの説明があるだろう、それについては、トム・ボンバディルの記事を見よ。
ピーター・ジャクソンの映画『ロード・オブ・ザ・リング』では、指輪をつけるとすべてが歪んだ陰の世界へ移動するという描写がされた。しかし、これはトールキンの意図だったことはありえない。そうでなければ、ビルボ・バギンズやフロド・バギンズはそれについて報告したはずである。(映画のために、影の世界の劇的な視覚効果を使用することが必要なことは明白である。)
指輪の性質の一部は、(逆のどんな意図があったにせよ、)着用者をゆっくり、しかし間違いなく蝕むことである。これが指輪の魔術として特に設計されたのか、単にその邪悪な起源のためかは不明である。(サウロンがそのような特性を一つの指輪に賦与したとも考えられるが、恐らくかれ以外の者がこの指輪を付けることは想定していなかっただろう。)このために、ガンダルフ、エルロンドおよびガラドリエルを含む賢人たちは、指輪を自分たちの防御のために用いることを拒絶し、その代り、それが破壊されなければらないと決めた。
これが作られた後に、まずイシルドゥアがサウロンの手から指輪を切りおとし、大河アンドゥインでこれを失い、殺された。指輪は、デアゴルという名のホビット(詳しくはストゥア族)が発見するまで、ほとんど二千年の間、川床に隠されていた。スメアゴルはかれのいとこデアゴルを殺害して指輪を盗み、長年にわたる指輪の影響によってゴクリという不愉快な生物になってしまった。『ホビットの冒険』で伝えられるように、霧ふり山脈のゴクリのねぐらの近くの洞窟で道に迷ったビルボ・バギンズは指輪を見つけ、指輪の与える不可視性がかれの冒険に役立つことに気づいた。(『ホビットの冒険』を書いた時、トールキンはまだ指輪に関する不吉な物語を想像していなかった。)
数十年後、友人である魔法使いガンダルフの助言に従い、ビルボはかれの親戚で養子のフロドに指輪を与えた。この指輪の歴史の中で初めて自発的に手放したことから、一連の出来事の連鎖を誘発し、結局その破壊に結びつく。偶然と運命の間の相互作用が『指輪物語』の暗黙のテーマである。
この時、すでにサウロンはかれの力を回復し始めていた。また、モルドールの暗黒の塔が再建された。一つの指輪の奪還を防ぐために、滅びの山オロドルインの火の中で指輪を破壊しようと、フロドたち9人の仲間は裂け谷からモルドールに向けて出発した。
この指輪は、純金製で、幾何学的に完全な円に見え、この完璧さおよび純粋さはその魅力の一部であった。指輪は、つける者の指に適合するかあるいはそれを裏切って抜け落ちるために大きくなったり小さくなることができたようである。ピーター・ジャクソンの『旅の仲間』の映画で、指輪はイシルドゥアの指に合うように収縮するとされた。
指輪を破壊するための探求の物語、そして指輪の歴史のほとんどは、トールキンの小説『指輪物語』で伝えられている。
中つ国も参照のこと。