中継車
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中継車(ちゅうけいしゃ)とは、放送局以外の場所からテレビやラジオの放送を行ったり、素材となる動画・音声を伝送したりするための機材を搭載した自動車のこと。特種用途自動車(いわゆる8ナンバー車)の一種。
ラジオの中継車はバン~大型バス、テレビの中継車はワンボックスカー~大型バス、大型トラックをベースとしているものが多く、その車体に用途に応じた機材を搭載している。局が保有しているもののほか、局と密接な関係を持つ技術プロダクションが保有しているものもある。
搭載設備はさまざまであり、音声や映像を送ることだけが目的の比較的小規模なものから、ビデオスタジオの副調整室(サブ)をそのまま積み込んだような大規模なものまでがある。必要に応じてそれらの中からチョイスして用いられる。用途もさまざまであり、現場でほぼ完成版の音声・映像にまで仕上げてしまう場合のほか、スタジオ番組の一部に現場からの音声・映像をはさみこむといった使い方もある(もちろん前者では大規模な中継車が必要になり、後者ならば小規模なもので済む)。また、マイクロフォンやビデオカメラ、ケーブル類などの機材も搭載しており、機材輸送車という側面も持つ。
ラジオの中継車は、以前は専用の無線回線を持つものが多かった(インタビューやレポートにはラジオカー、高い音質が要求される番組内コーナーにはFMカー)が、外部からのレポート程度のものであれば第三世代携帯電話になって音質が向上したことから、それ以降では都市部では携帯電話などの回線を使うことが増え、それ以上の特殊な設備を持つ中継車の出番は減少した。音質が求められるコンサートの中継などの際には、レコーディングスタジオ並みの機材を搭載した音声中継車が出動する。
テレビの中継車は、以前はもっぱらマイクロ波を用いたFPUで映像を送っており、中継車からの電波をテレビ局につなげるための中継局の確保・設置などの作業が必要であった。1989年に通信衛星の登場により、地表面経由でマイクロ波を飛ばすのではなく、一旦通信衛星に映像信号を送ってしまい、通信衛星から局に送るという方法が実用化された。サテライト・ニュース・ギャザリング、略称SNGである。
当初は、地表面経由でのマイクロ波中継が困難な場所でのみ限定的にSNGが使われていたが、通信衛星の回線数が増えたことなどにより、通信衛星経由での中継を選択することが増加している。また、これらの通信衛星の利用については地上通信のマイクロ波のような免許制ではなく営利会社(主に電気通信事業者)が管理運営をしており、高額ではあるが利用料を支払う事が出来る団体であればどんな団体でも利用できる。そのため、企業内通信・放送や大学病院での手術中継、株主総会やイベント中継等に幅広く利用されており、企業や大学、警察・消防・都道府県庁などを始めとする行政機関では専用のSNG中継車を自前で所有・運用しているところもある。
近年は、BSデジタル放送や地上デジタルテレビジョン放送の開始によって、HDでの中継も行われるようになり、デジタルFPUによる伝送、SNGによるHD伝送、NEXIONやJT等の光伝送を使用する機会が増えつつある。
なお、FPUやSNG等を用いた無線の運用に当たっては陸上無線技術士(第一級=出力不問、第二級=空中線出力500W以下)が操作することが義務付けられている(ラジオカー等の小規模なものは第一級陸上特殊無線技士でも操作可)。
日本テレビの大型中継車(車種:三菱ふそう・スーパーグレート) |
TBSのワンボックス型中継車(車種:トヨタ・グランドハイエース) |
ニッポン放送の中継車(車種:トヨタ・ランドクルーザー80) |
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