伊忍道 打倒信長
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
『伊忍道 打倒信長』(いにんどう だとうのぶなが)は1991年に光栄(現コーエー)が発売したパソコン用ゲームである。PC-9801シリーズ・PC-8801SRシリーズ、MSXなどで発売され、1992年3月19日には『スーパー伊忍道 打倒信長』のタイトルでスーパーファミコンへと移植された。当時、光栄がシミュレーションゲームを発展させた新たなゲームジャンルとして提唱していた「リコエイションゲーム」の一つ。
目次 |
[編集] ストーリー
天正9年、伊賀忍軍が将来の憂いとなることを恐れた織田信長は、4万の大軍勢を伊賀国境に進軍させた。その夜、伊賀頭領・百地丹波は討死に覚悟の総力戦を決意、一人の未熟で若い―しかし、強い潜在力を持っている―忍者に信長への復讐を託し、隠れ里へと逃がす。
争いを好まぬ穏やかな里に匿われ、里長の娘・レイと共に修行を続けていた天正10年6月、再び信長配下の忍者たちによって隠れ里が襲われる。「明智謀反、信長行方知れず」の報によって辛うじて敵は去ったものの、最早や逃げ場すら無くなった若者は、信長打倒のため、その礎となる修行の旅へと発つのだった。
[編集] 概要
- 「リコエイションゲーム」としては『維新の嵐』『大航海時代』に続く3作目だが、前2作よりもロールプレイングゲーム色が強く、ゲーム前半は自由度が低めである。
- 1581年(天正9年)に織田信長が伊賀に侵攻した天正伊賀の乱をテーマとしており、プレイヤーは信長によって壊滅させられた伊賀忍者の生き残りの一人となって忍術修行をしたり、各国の戦国大名たちの依頼事をこなしたりしながら自己の能力を高め、反信長派の大名の支援を得て信長の打倒を目指す。
- オープニングで本能寺の変が起きるが織田信長は生き延びていたり、史実ではゲーム開始時には滅亡しているはずの甲斐武田家がいまだ隆盛を保つなど、いくぶん架空の歴史設定が取り入れられている。
- 発売当時、既に光栄の代表作となっていた「信長の野望」の主人公・織田信長を悪役としたことで、注目を集めたゲームである。
[編集] 仕様・特徴
- 一般にはシミュレーションゲームに分類されるが、プレイ感はロールプレイングゲームそのものである。仲間を探して最大3人パーティを組み、修行場や伝承の地といったダンジョンを探索し、ランダムエンカウントで現れる敵と戦いながらレベルを上げ、最終的に最終ボスである織田信長を倒す展開となる。
- 操作は同時代の多くのロールプレイングゲーム同様、方向キーとEnterキーのみで行う。マップ移動や項目選択に前者を、選択の決定のほか、移動中に「調べる」や「術・アイテムを使う」といったコマンドを呼び出すために後者を使う。
- 戦闘はコマンドを選んで戦う方式。縦横3マスの広さを持つ空間に、最大3体の敵が現れる。「攻撃」・「防御」・「移動」・「術(使用)」・「道具(使用)」・「逃げる」、の6つのコマンドが使用出来る。このうち「攻撃」には剣で斬るなどの「直接攻撃」と、忍者における手裏剣などの「間接攻撃」とがある。「移動」は自分の周囲1マスだけ移動したあと、自分の前面(上方向)3マスに敵が居る場合に限り直接攻撃を行うことが出来るが、この場合は攻撃力が「攻撃」より若干劣る。
- 戦闘の結果、敵を全滅させると一定の経験値とお金が手に入る。逆にヒットポイントが0になると、所持金が減少しヒットポイントも少ない状態でその場で移動を再開する。また、「怪我」など状態異常に陥ることがあり、これは術や道具、あるいは町にある「医者」などで治療する必要がある。
- フィールドを歩いていると、「行動力」が減少していく。これはヒットポイントとは別のもので、戦闘によらずフィールド移動を行うと必ず減少し、町や村などに寄ることで100%まで回復する。村・町に入らずにゲーム内時間で3日ほど歩いていると疲労で倒れてしまい、このとき、敵に襲われたり仲間になるキャラクターが訪れたりすることがある(フィールド移動中にもまれに敵とのエンカウントがあるが、疲労で倒れた時に襲ってくるのは、仲間にもなり得るキャラクターの場合が多い)。
- 町での会話も、一般のロールプレイングゲーム同様、目的のキャラクターに隣接してその方向のキーを押すことで行う。一方、店などの場合は、基本的にコマンドを選ぶだけである。
- 仲間は町の「宿屋」や「酒場」で面会して勧誘するか、町へ寄らず移動中に倒れた際に志願してくることもある。勧誘する場合は必ず仲間になるとは限らず、その場合は話し合ったり手合わせ(戦闘)して負かすことによって信頼を得る必要がある。仲間になるキャラクターの職業は大きく分けると侍・忍者・僧侶・方士の4系統に分かれ、さらに侍なら武士・浪人・剣術家など細かく分かれ、その中には前田利益(浪人)伊藤一刀斎(剣術家)・服部半蔵(伊賀忍者)・果心居士(伊賀忍者)・風魔小次郎(風魔忍者)・天海(僧侶)といった実在・架空の著名な人物が多く存在する。なお、仲間を得るには自分のレベルが7前後に達している必要がある(本作におけるレベルは「評判」的な意味合いがあるらしく、評判が上がるほど仲間に誘い易い)。
- 一般のロールプレイングゲームの様に町ごとにクエストをしないと進まないなどということは無いが、ゲーム前半は隠れ里付近の洞窟より「選者の証」入手→全国10ヵ所の「修験場」を巡り術を習得する、と大きな流れで縛られる部分がある。
- ストーリーが2種類あり、それぞれ「通常編」「妖術師編」と通称されているが公式な呼称ではない。最初のダンジョンでのクエストを終了した時点でランダムでどちらのストーリーになるか決定されるが、通常編に進む可能性の方が高くなっている。両ストーリー間では登場する敵キャラにも違いがある。
- あまり知られていないが、第3のシナリオとして「おまけ編」がある。PC-9801シリーズ・PC-8801SRシリーズ版のみに存在し、AドライブにBディスク、BドライブにAディスクを入れるとプレイ可能。なお、復刻版であるコーエー25周年記念パックVol.1版およびコーエー定番シリーズ版では再現不可。
- 本作が一般のロールプレイングゲームと大きく異なる点は、最終ボスたる織田信長へと至る過程である。
- 信長は近江安土城を拠点としているが、通常手段では近江への進入が不可能であるため、以下の手順を行う必要がある。
- レベル15前後になり各地の城へ入れる様になったら、「偵察」や「工作」といった仕事を請け負い実行する。本作ではプレイヤーの動きとは別の部分で各戦国大名があたかも『信長の野望』の様に領地争奪戦を繰り広げており、忍者を要する活動についてプレイヤーに依頼が為されることがあり、これをこなすことで戦国大名からの「信頼」を得ることが出来る。なお、大名による依頼はゲーム内各月の1日~15日のみ受けることが出来る。
- 大名による「信頼」が高くなると、各1日に行われる戦争に部隊長として加わることが出来る様になる。ここでも戦功を挙げるなどさらに「信頼」を高めることにより、「評定」への参加が認められる。
- 「評定」への参加が認められると、大名に対して攻め込む先を指定することが出来る場合がある。これを利用して近江の隣接国へと攻め込み、関所を開放することによって、近江へと侵入することが出来る様になる。
- 「信頼」を得て信長領へ攻め込む協力者となる大名家は自由に選ぶことが出来るが、例えば伊達家や島津家では信長領への距離が遠く、鈴木氏 (鈴木佐太夫)はゲーム開始間も無く信長に蹂躙されてしまうなど、選ぶ大名によって攻略難易度が変わる。
- なお、全国には織田家を除くと15の大名家が存在するが、大名家全てが織田家に対して敵意を持っているわけではない。一般的には、反信長派であり、かつ信長領への距離も近い上杉家や武田家を協力者に選ぶのがオススメとされるが、実は、親信長派である徳川家との「信頼」を高めた上で進言すると、信長領へ攻め入ってくれるのだ。徳川家に美濃を攻めさせるのが、一番手っ取り早く近江侵入を実現させる方法なのである。
[編集] 復刻版
- 『コーエー25周年記念パックVol.1』2003年8月1日
- (『信長の野望 全国版』『維新の嵐』『伊忍道 打倒信長』同梱)
- 同年にコーエーが25周年を迎えた記念パッケージの第1集。
- コーエー定番シリーズ『伊忍道 打倒信長』2005年8月5日
- 上記「25周年パック」より単体発売。PC-9801版をWindows上でエミュレータにより動作するようにしたもの。
- PC-9801版ではフロッピーディスクを媒体としていたため、例えばセーブなどの手続きにおいて、ディスク交換を行う必要があった。この名残として、これら復刻版においてもセーブなどの際に「仮想ディスク」の交換(ウィンドウのツールバーにある「ドライブ」項目を開いて指定ディスク名にチェックを入れる)操作が必要である。ちなみに復刻版でのこの操作のみ、マウス操作が必要。
- 上記「25周年パック」より単体発売。PC-9801版をWindows上でエミュレータにより動作するようにしたもの。