出光美術館
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
出光美術館 (いでみつびじゅつかん) は、東京都千代田区丸の内にある、東洋古美術を中心とした私立美術館である。出光興産社長などを務めた、実業家・出光佐三(1885年-1981年)が長年に亘り収集した美術品を展示するため、1966年(昭和41年)に開館した。
目次 |
[編集] 概要
帝国劇場の入っている帝劇ビルの9階にあり、館内のロビーからは、隣接する皇居外苑が一望できる。収集品は日本・東洋の古美術が中心で、日本や中国の絵画、書跡、陶磁などが系統的に収集されている。特色あるコレクションとしては唐津焼、仙厓の書画などがある。また、ジョルジュ・ルオー、サム・フランシスなどの西洋近現代美術の収集もある。開館後も収集を継続しており、1983年には国宝の『伴大納言絵巻』を購入し、話題になった。
館内には、展示室の他に陶片資料室と茶室朝夕菴(ちょうせきあん)がある。陶片資料室は1966年の開館時に陶磁器研究家・小山冨士夫によって設けられたもので、各地の窯跡から発掘された陶磁器の破片が系統的に展示されている。
出光美術館は、一時は大阪市と福岡市にも分館を設けていたが、後に閉鎖され、現在は、出光興産創業の地である北九州市門司区に2000年(平成12年)に開館した出光美術館(門司)がある。その他関連施設としては、東京都三鷹市に中近東文化センター、東京都目黒区青葉台の出光佐三旧邸跡に出光文化福祉財団がある。なお、福岡市中央区大名にあった福岡出光美術館(1階がガソリンスタンドであった)は、閉館後は土地が売却されビジネスホテルになっている。
出光佐三のコレクションの一部は、彼の没後、海外流出の憂き目にあっている。数多いコレクションの中から、2003年5月にセザンヌの自画像『ポール・セザンヌの肖像』がニューヨークのオークション会社にて競売され、ラスベガスのカジノ経営者に、約20億5000万円の価格で落札された。この売却は、出光興産の株式上場をにらんだ資産圧縮のために2001年に約145億円分の美術品を売却処分したうちの一点である。
[編集] 出光佐三の収集
出光佐三の美術品収集は、江戸時代の禅僧・仙厓の書画から始まった。出光佐三は19歳の時、郷里福岡でたまたま訪れた古美術品売り立て会場で仙厓の『指月布袋画賛』(しげつほていがさん)に出会い、父親に頼んでこの作品を購入した。月を指差す布袋を軽妙なタッチで描いたこの作品は、現在も出光美術館の代表的な所蔵品の一つとなっている。出光は、第二次大戦以前には、個人的に交友のあった小杉放菴(洋画家)、板谷波山(いたやはざん、陶芸家)などの作品の収集のほか、地元九州出身の文人画家・田能村竹田(たのむらちくでん)の作品、九州を代表する陶芸の一つである唐津焼などを収集していた。第二次大戦以後は収集の幅も広がり、東洋の古美術のみならず、フランスのフォーヴィスムの画家・ジョルジュ・ルオーや、抽象絵画のサム・フランシスの絵画もコレクションに加えられた。
1966年(昭和41年)に出光美術館が開館し、1972年(昭和47年)には財団法人化された。出光美術館では館蔵品の展示のほか、「アンドレ・マルローと永遠の日本」展、「宗像・沖ノ島」展などの特別展を積極的に開催してきた。出光の収集は19歳の時から没年まで70年以上にわたって続けられた。出光が没年の1981年に入手した最後の収集品は、19歳の時に最初に入手したのと同じ仙厓の作品である『双鶴画賛』であった。この絵には「鶴は千年、亀は万年、我は天年」という賛が書き込まれており、当時95歳の出光はこの作品を最後まで座右に置いていたという。
[編集] 指定文化財
[編集] 国宝
- 伴大納言絵詞
- 手鑑「見ぬ世の友」
[編集] 重要文化財
(仏教絵画)
- 十王図
- 真言八祖行状図
(大和絵)
- 絵因果経 巻第三上
- 直幹申文絵詞
- 柿本人麿像(佐竹本三十六歌仙切)
- 僧正遍照像(佐竹本三十六歌仙切)
- 扇面法華経冊子残欠
- 四季花木図 六曲屏風
(水墨画)
- 花鳥図 能阿弥筆 応仁三年三月七十三歳の款記がある 四曲屏風
(文人画)
- 十二月離合山水図 池大雅筆 六曲屏風
- 山水図 与謝蕪村筆 宝暦十三年四月の年記がある 六曲屏風
- 梅花書屋図 田能村竹田筆 天保三年の年記がある
- 双峰挿雲図 浦上玉堂筆
- 籠煙惹滋図(ろうえんじゃくじず)浦上玉堂筆
(近世絵画諸派)
(渡来画)
- 漁釣図 徐祚筆
- 山市晴嵐図 玉澗筆 自賛
- 平沙落雁図 伝牧谿筆 「道有」の印あり
(日本陶磁)
(中国陶磁)
- 青磁下蕪花生(せいじしもかぶらはないけ)
- 青磁袴腰香炉 (せいじはかまごしこうろ)
(その他工芸)
- 金銅蓮唐草文透彫経箱
- 太刀 銘国村
- 楼閣人物螺鈿食籠(ろうかくじんぶつらでんじきろう)中国・元)
(古筆・典籍類)
- 継色紙(むめのかの)
- 中務集
- 定頼集 藤原定家筆
- 伏見天皇宸翰御歌集(五十六首)
- 禅院額字 選仏場
- 理趣経種子曼荼羅
- 倭漢朗詠抄 巻下
- 古文孝経(金沢文庫本)
(書状類)
- 虎関師錬筆消息(六月十八日 檀渓心涼宛)
- 後光厳院宸翰御消息(七月廿九日)
- 後小松天皇宸翰御消息(七月廿五日)
- 光厳院宸翰御消息(十一月五日)
- 陽光院御筆消息(七十三通)
- 藤原定家筆消息(九月十日)
- 明恵上人筆消息
(墨蹟)
- 大燈国師墨蹟 偈語(興作)
- 大燈国師墨蹟 偈語(夏日)
(考古資料)
- 壺形土器(弥生時代)