美術館
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美術館(びじゅつかん)とは、美術作品を中心とした文化遺産や現代の文化的所産を収集・保存・展示し、また文化に関する教育・普及・研究を行なう施設である。
英語で美術館に相当する語に art museum があるように、専門博物館の一分野で美術品を主たる対象とするものであり、欧州各国語の概念では博物館の概念に包含されるものであるが、歴史的に総合的な博物館の中から美術専門の博物館として分離し、特色を純粋化していった経緯から、博物館を付さぬ「美術館」という日本語が定着している。
博物館という性質上蓄積機能が重要であるが、展示機能のほうが中心となる施設にギャラリーがある。ただし、美術館とギャラリーの境界はあいまいで、中間的な施設も多い。類義語として絵画館(de. Pinakothek)がある。
博物館を英語に訳すると、museum(ミュージアム)だが、これはギリシャ神話に登場する学芸の神様のムサ(Musa)に由来する。
なお、主要な美術館の一覧は「美術館の一覧」を参照。
目次 |
[編集] 美術館の歴史
こうした美術専門の博物館が成立した背景として、フランス革命に際しての美術品の国外流出が挙げられる。この流出を避けるためにパリのフランス国立美術館が設立され、さらにここにナポレオン戦争に伴う戦利品が収蔵されて内容の充実をみたのである。さらに、フランス軍に攻略されたヨーロッパ諸国も、自国の美術品の防衛の必要性から、こうした美術専門の博物館を充実させていった。
[編集] 日本における美術館
美術品の展覧という意味では、古くから社寺が所蔵する宝物は、年に1回程度は「開帳」されるという習慣があり、これが一般の民にも見ることが許される場合があった。
明治維新後、美術品を一般人に対して公開するという行事は1872年に東京の湯島聖堂で文部省博物館主催の美術工芸品の展示が初めてとされる。1877年の第1回内国勧業博覧会では美術館と称する部門があった。この展示が後に帝室博物館となった。
明治後期に至り、1895年開館の奈良国立博物館、1897年開館の京都国立博物館で美術品展示が行われた。1930年開館の大原美術館は民間が開設し、また西洋絵画を展示する日本初の美術館であった。
[編集] 美術館の活動
[編集] 美術品の展示
美術館の最も重要な活動に美術品の展示がある。展示の分類としては企画展示と常設展示がある。
- 企画展示 あるテーマ(例:同作家、同時代、同地域、影響しあった作家等)に沿って資料を展示するものである。自館の収集資料を紹介するだけではなく外部から一時的に資料を借りて展示することがある。一定程度の期間を限って行われることが通常である。これらの企画はその美術館独自によるもののほか、複数の美術館によるものや、新聞社・企画会社が中心となっているものもあり、各地の美術館を巡回するものもある(巡回展示という)
- 常設展示 その美術館が所蔵する資料を展示するものである。常設とはいえ展示スペースの問題や、修復や他館への貸出の為などの理由により、一定程度の入れ替えが行われることがある。コレクションが充実している美術館では、企画展示よりむしろ常設展示のほうに重要な作品があることが多い。(その最大の例:ルーブル美術館の『モナ・リザ』および『ミロのビーナス』)
展示方法の形態としては、美術品の種類により様々な方法があるが、多くの美術品は後述のように環境的変化には弱いものであり、また防犯上の必要から頑丈なガラスケースに入れている場合もある。紫外線カットのガラスを入れた額装などもある。一方、彫刻のように屋外展示にも堪えるものもあり、またその作品のコンセプトとして「直接手にふれて楽しむ」ものや、空間そのものや観覧者の観覧行為と一体となった芸術表現(インスタレーション)や作家のパフォーマンスと一体化した芸術表現(パフォーマンスアート)として展示する方法もある。
- 写真撮影はストロボ光が美術品に悪影響を与えるとされ禁止している美術館が多い。スケッチ等の複製行為はインク使用の筆記具の禁止、混雑時の禁止の条件があるが認められることがある。何れの行為も著作権法上の私的複製であったとしても、美術館の館内管理権限によって禁止されるのであれば従うべきものである。
美術品の解説はパネルや映像によって展示するほか、ヘッドホンやイヤホンなどで音声ガイドを聞くシステムを備える美術館もある。
美術館外においてもインターネットによってそのコレクションを閲覧できる美術館も多く、遠隔地や外出に障害をもつ人々も、モニターでの再生とはいえ美術鑑賞の機会を得られるようになってきている。
[編集] 収集・保管・修復
美術品やそれにまつわる資料等を収集することは美術館の最も最初の活動であると言える。後述のように、美術館のコレクションの由来が寄贈であるような場合には、収集品は既に一定程度の規模になっていることもある。その後は寄贈を受ける程度の、収集には消極的な美術館から、アメリカのメトロポリタン美術館やゲティ・センターのように美術品オークション界において最も資金力のある買い手の一つに挙げられるほどの美術館も存在する。
- 収集には美術館が作家やコレクターから直接又はオークションを経て購入する場合、作家やコレクターから寄贈を受ける場合、又は古美術品や埋蔵品のように既に持ち主が不明になっているものを発見・発掘して収集する場合がある。ただし、「発見・発掘」とは集める側の理論である場合があり、大英博物館やメトロポリタン美術館に対する旧植民地国家からの返還要求、エルミタージュ美術館等が戦争混乱時に得たとされる美術品について元の持ち主(多くはユダヤ人)からの返還要求などの例も起きている。
- 作家やコレクターからの寄贈には相続税等の課税が負担であるとの理由もある。日本をはじめアメリカなどでもこのような場合に免税・減税制度を設けて寄贈を促している。このような寄贈によってコレクションの散逸の防止、ある地域にゆかりのある芸術家のための美術館を開設できるなどのメリットがある。
- 広義の収集として、作家やコレクターから長期又は無期限での寄託を受けることがある。美術館側としては展示品の充実につながり、預ける側からは安定した保管場所が得られるというメリットがある。
美術品・資料の保管は、屋外展示にも堪えられる彫刻から繊細なガラス細工に至るまで、その美術品の性格により多様な方法となる。例えば絵画などでは紫外線、適切でない湿度、粉じん等は劣化の原因になる。美術館の収集に値するものであれば一定程度の経済的価値があり、保安上の管理も必要である。この為、通常は空調・警備の完備した収蔵庫において保管される。
美術品の修復は、前述のような劣化の原因がある以上は必要なものであり、専門家の手によって行われる。しかし、過度の修復はオリジナルのタッチを損なうなどの問題も生じる。
[編集] 調査研究・教育活動
美術品やそれにまつわる資料等について調査研究をすることも美術館の重要な活動である。内部の学芸員によって行われる場合や、外部の研究者に対して助成・協力を行う場合がある。
- 調査研究対象は、その作家や作品についてのみならず、歴史的背景、その時代の社会的背景などの歴史学的、社会学的範疇まで及ぶものである。
- 調査研究活動は、その性格上、直ちに成果が生じるものでもない。一方でその成果が発表され、次の知的生産につながることも求められ、具体的な展示や研究図書の出版などが行われる。
- ある作家や美術領域に特化した美術館においては、その作家や美術領域の作品についての真贋を判定する権威である場合がある。
美術に関連して教育普及活動を行うことも重要な活動である。前述のとおり欧米では美術館は博物館・図書館といった「知的蓄積機関」の一つであるという意識が強く、またそれらは市民が積極的に「利用する」ものとして確立している。日本の美術館においても、近年は教育普及活動を活発にしようとする美術館が多く見られる。
- 教育普及活動の形態として、美術史などを講義するものや、創作活動の場所の提供や講師の派遣などをするワークショップ等がある。
[編集] 美術館の種類
美術館はしばしばコレクション(収蔵品)の内容や活動方針によって分類される。コレクションの対象がどの地域、文化、時代のものであるかによって、扱う美術品のジャンルによって、また、幅広い分野の作品を扱うのか、特定の時代や特定の芸術家の作品のみを扱うのかなどによって、それぞれの館の性格が異なってくる。また、国公立・私立などの設置主体の別によって区別されることもある。
- コレクションの性格による分類の例
- 芸術表現方法による分類の例
- 設置主体による分類の例
- 博物館法による分類の例
- 「登録博物館」「博物館相当施設」「博物館類似施設」(内容は記事「博物館」中の「日本における博物館」に詳しい)
[編集] 美術館の組織
美術館ではさまざまな人々が働いている。館の運営全般に関わる事務系の職員の他に、研究のための専門職を置くのが普通である。この専門職は、日本の博物館法では学芸員と呼ばれる有資格職種が、これに相当する。また美術品の保存・修復の専門家や、美術館における社会教育の専門家を置いている館もある。美術館は博物館の一分野にあたるため、日本における所轄法令は、博物館法となる。ただし、日本の博物館法は国立(独立行政法人含む)の施設を対象外としていたり、学芸員を置かないなど、博物館法上の基準に合致せず、博物館として登録されていない美術館も多い。こうした博物館法上の施設と、実質的博物館施設が乖離している現象は、他分野の博物館にもあてはまるものが多い。
[編集] 美術館でのマナー
美術館では必ずしも私語厳禁ではなく、二人以上で感想を述べ合うことに美術館側は寛容であることが多い。メモを取る場合は、基本的には鉛筆のみ。ペン類(万年筆など)は禁止されている場合が殆どである。目玉の作品は順路の中盤から後半に置くことが多い。展示室では、入り口から見えたり、最大の壁にあったりする作品に美術館側の主力が注がれていることが多い。
[編集] 美術館にまつわる楽曲・文学
[編集] 関連記事
[編集] 外部リンク
「美術館の展覧会情報等を伝えるサイト」
- 美術館・博物館・記念館 展覧会情報 (運営:[ART-NAVI検索エンジン])
- アートスケープ/artscape (運営:大日本印刷)
- インターネットミュージアム (運営:丹青社)
- 美術館.com (運営:株式会社日本スタデオ)
- 博物館・美術館 展覧会案内 (運営:個人)
- 図録ドットJP (運営:有限会社 六文舎)
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