剣客商売
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剣客商売(けんかくしょうばい)は、池波正太郎による時代小説。
無外流の老剣客、秋山小兵衛(あきやま こへえ)を主人公とし、小兵衛と妻おはる、息子の大治郎、女性剣客の佐々木三冬らが、江戸を舞台に様々な事件に遭遇し活躍する。重要なサブキャラクターの一人として老中の田沼意次が登場する。 「鬼平犯科帳」や「仕掛人・藤枝梅安」と並ぶ池波正太郎の代表作で、既に1800万部も出版されてる。 全16巻。また番外編に「黒白」、「ないしょ ないしょ」がある。
目次 |
[編集] 登場人物
- 秋山小兵衛
- 無外流の達人である老剣客。辻平右衛門に師事し辻平右衛門が大原の里に引きこもった後、四谷・仲町に道場を構えるが後に鐘ヶ淵に隠居して気ままな生活を送っている。老いても盛んで、小粋な爺さん。
- 道場時代にお貞と結婚し大治郎が生まれるが、お貞と死別した後隠居してから40年も歳の離れたおはると再婚する。
- おはる
- 小兵衛が鐘ヶ淵に隠居してから、隠宅に奉公に来るが小兵衛が手をつけ、結婚する。両親は、関屋村の百姓・岩五郎とおさき。
- 二人が結婚した事に両親は最初こそ驚き父親は怒るが、すっかりなじんでいる。
- 秋山大治郎
- 秋山小兵衛の息子で、父と同じく無外流の達人(になっていく)。
- 15歳の夏に辻平右衛門の下に行き修行した後諸国を周り、江戸に帰った後父の世話で、浅草の外れにある真崎稲荷神社近くに道場を構える。最初こそ弟子はなかなかつかなかったが、粂太郎が入門してからは段々活気付いてくる。
- 後に佐々木三冬と結婚し、息子の小太郎が生まれる。最初、無垢な好青年だが、徐々に小兵衛のような粋な人間になっていき、次第に江戸で有名な剣客になってゆく。
- 佐々木三冬
- 田沼意次の妾腹の娘で母は侍女の故・おひろ。
- 一刀流・井関忠八郎の弟子で、井関道場の四天王の一人などと呼ばれる男装の女武芸者。
- 母方の叔父である書物問屋[和泉屋吉右衛門]が持っている根岸の寮に、老僕の嘉助と暮らしていたが、後に大治郎と結婚する。登場初期は、父への反発もあり男になりきって何事にも肩肘を張った性格であったが、秋山父子と交流を深めていくうちしだいに女らしくなってゆく。嘉助が寂しがるからと、結婚してからも大治郎と共に寮に泊まりに行ったりしている。
- 田沼意次(たぬまとのものかみおきつぐ)
- 十代将軍・徳川家治の寵愛をうけた、今を時めく老中。
- 武芸を奨励しているため、秋山父子に何かと目を懸けている。後に娘婿となる秋山大治郎に田沼屋敷内の道場を任せている。
- イメージとして、賄賂政治の中枢である悪者に扱われがちな人物であるが、本作では卓越した未来観と政治力を持つ好人物として描かれている。
- 昨今の歴史の研究の中でもその政治が見直されてきている一人。
- 弥七
- 小兵衛の門人だった四谷・伝馬町の御用聞き。
- 八丁堀の同心・永山精之助に直属し、女房のおみねが「武蔵屋」という料理屋を経営しているので、土地のものは[武蔵屋の親分]などと呼び人望も厚い。男の子が一人いる。
- 傘徳(傘屋の徳次郎)
- 弥七の手下。特技は尾行。弥七同様に秋山父子の為に、働く。
- 牛堀九万之助
- 浅草・元鳥越町に奥山念流の道場を構える剣客。土井能登守の面前の試合で秋山小兵衛と闘い、それがもとで知り合い後に懇意の間となる。
- 生涯、妻をめとらず剣の道に没入し、独自の境地を開いた名手で、人柄も良いため、道場は小さいが名門の子弟が多い。
- 長次・おもと
- 小兵衛がひいきにしている料亭「不二楼」の板前と女中で後に結婚し、浅草・駒形町に小料理屋「元長」をひらく。
- 「元長」は小兵衛の命名による。 おもとと長次の名前を一字ずつ取って店名にした。
- 嘉助
- 佐々木三冬の母方の叔父である書物問屋[和泉屋吉右衛門]が持っている根岸の寮に三冬とともに暮らしていた老僕。
- 小川宗哲
- 本所・亀沢町の町医者で、上下の身分に関係なく行き届いた診察と治療を行うので、本所界隈での名声は高い。
- 小兵衛との親交は15年以上におよび、小兵衛とは碁敵の間柄である。本人の話によると、以前はお金の事しか考えない人物だったらしい。
- 嶋岡礼蔵
- 秋山小兵衛の弟弟子で、無外流・辻平右衛門に師持し、師に伴い大原の里に引きこもった。
- 辻平右衛門の門人の中で、秋山小兵衛と嶋岡礼蔵は「竜虎」や「双璧」と評判された。年は小兵衛の三つ下である。秋山大治郎においての第二の師である。
- 柿本源七郎との果たし合いの前に、柿本の門人・伊藤三弥の弓に倒れる。
- 実は小兵衛の最初の妻・お貞を巡って鎬をけずったが彼女は小兵衛と結婚した為師についていったらしい。
- 飯田粂太郎
- 大治郎の門人。父・飯田平助は老中・田沼主殿頭意次の家来であったが、老中暗殺の一端を担うが思いあやまり自殺を遂げる。意次はその事件の一部始終を知ってはいるが、度量の大きさを見せ、平助や残された家族を責める事はせず、平助の死後は彼の禄をそのまま粂太郎が継げるようにした。
- 粂太郎は父の死の真相を知らずに田沼家に仕え、三冬のすすめで大治郎の門人となる。
- 又六
- 辻売りの鰻(うなぎ)屋。柄の悪い兄に悩まされるが大治郎に度胸を付けてもらい、その後秋山父子と懇意になる。
- 生島次郎太夫
- 老中・田沼主殿頭意次の腹心の用人。田沼意次のふところ刀と呼ばれている。
- 笹野新五郎
- 秋山大治郎の門人。六百石の旗本・笹野忠左衛門の長男だが、実は生島次郎太夫の息子。
- 杉原秀
- 一刀流・杉原左内の娘で、根岸流の手裏剣の達人。ある事件で又六と知り合い、後に結婚。
- 杉本又太郎
- 無外流の剣客・杉本又左衛門の息子。父の亡き後、道場を継ぐが秋山大治郎に師持する。
- 横山正元
- 牛込の早稲田町の町医者。秋山父子と同じ無外流の剣術を遣い、酒も女も「大好物」と言ってはばからぬ人物。秋山父子との交誼が長い。
[編集] 剣客商売シリーズ
- 剣客商売一 剣客商売
- 女武芸者
- 剣の誓約
- 芸者変転
- 井関道場・四天王
- 雨の鈴鹿川
- まゆ墨の金ちゃん
- 御老中毒殺
- 剣客商売二 辻斬り
- 鬼熊酒屋
- 辻斬り
- 老虎
- 悪い虫
- 三冬の乳房
- 妖怪・小雨坊
- 不二楼・蘭の間
- 剣客商売三 陽炎の男
- 東海道・見付宿
- 赤い富士
- 陽炎の男
- 嘘の皮
- 兎と熊
- 婚礼の夜
- 深川十万坪
- 剣客商売四 天魔
- 雷神
- 箱根細工
- 夫婦浪人
- 天魔
- 約束金二十両
- 鰻坊主
- 突発
- 老僧狂乱
- 剣客商売五 白い鬼
- 白い鬼
- 西村屋お小夜
- 手裏剣お秀
- 暗殺
- 雨避け小兵衛
- 三冬の縁談
- たのまれ男
- 剣客商売六 新妻
- 鷲鼻の武士
- 品川お匙屋敷
- 川越中納言
- 新妻
- 金貸し幸右衛門
- いのちの畳針
- 道場破り
- 剣客商売七 隠れ蓑
- 春愁
- 徳どん、逃げろ
- 隠れ蓑
- 梅雨の柚の花
- 大江戸ゆばり組
- 越後屋騒ぎ
- 決闘・高田の馬場
- 剣客商売八 狂乱
- 毒妻
- 狐雨
- 狂乱
- 仁三郎の顔
- 女と男
- 秋の炬燵
- 剣客商売九 待ち伏せ
- 待ち伏せ
- 小さな茄子二つ
- 或る日の小兵衛
- 秘密
- 討たれ庄三郎
- 冬木立
- 剣の命脈
- 剣客商売十 春の嵐
(長編)
- 除夜の客
- 寒頭巾
- 善光寺・境内
- 頭巾が襲う
- 名残りの雪
- 一橋控屋敷
- 老の鶯
- 剣客商売十一 勝負
- 剣の師弟
- 勝負
- 初孫命名
- その日の三冬
- 時雨蕎麦
- 助太刀
- 小判二十両
- 剣客商売十二 十番斬り
- 白い猫
- 密通浪人
- 不寝鳥
- 十番斬り
- 同門の酒
- 逃げる人
- 罪ほろぼし
- 剣客商売十三 波紋
- 消えた女
- 波紋
- 剣士変貌
- 敵
- 夕紅大川橋
- 剣客商売十四 暗殺者
(長編)
- 浪人・波川周蔵
- 蘭の間・隠し部屋
- 風花の朝
- 頭巾の武士
- 忍び返しの高い塀
- 墓参の日
- 血闘
- 剣客商売十五 二十番斬り
- おたま
(特別長編)
- 二十番斬り
- 目眩の日
- 皆川石見守屋敷
- 誘拐
- その前夜
- 流星
- 卯の花腐し
- 剣客商売十六 浮沈
(長編)
- 深川十万坪
- 暗夜襲撃
- 浪人・伊丹又十郎
- 霜夜の雨
- 首
- 霞の剣
- 黒白 剣客商売 番外編 (上)(下)
- ないしょ ないしょ 剣客商売 番外編
[編集] テレビドラマ
1973年に山形勲の小兵衛と加藤剛の大治郎で東宝と俳優座が、1983年には中村又五郎の小兵衛と同じく加藤剛の大治郎で東宝と俳優座が、さらに1998年以降、藤田まことの小兵衛で松竹がテレビドラマ化し、いずれもフジテレビ系で放映され、いずれも同じ小兵衛の配役で何度か舞台化もされるほどの好評を博している。
なお、池波が秋山小兵衛のモデルに中村又五郎を想定していたことは、池波本人が語っていたため有名である。
[編集] 1973年版
1973年4月7日~9月1日放映(全22話)
- 配役
- 秋山小兵衛:山形勲
- 秋山大治郎:加藤剛
- おはる:梶三和子
- 佐々木三冬:音無美紀子
- 弥七:山田吾一
- 田沼意次:松村達雄
- 小川宗哲:永井智雄
- おとき(弥七の妹):関根恵子
- おかよ(めし屋の女将):うつみみどり
- おぬい(おかよの妹):木村由貴子
- めし屋の若い衆:岡本信人
- 名医・小川宗哲:永井智雄
- 鰻売りの又六:松山省二
- 小雨坊:寺田農
- ナレーター:黒沢良
- スタッフ
- 企画:市川久夫、白川文造、松木征二
- プロデューサー:能村庸一、市川久夫、香取雍史
- 脚本:安部徹郎、小川英、井手雅人 ほか
- 監督:小野田嘉幹、鈴木英夫、田中徳三、高瀬昌弘ほか
- 音楽:山倉たかし
- 殺陣:宇仁貫三
- 協力
- 国際放映
- 制作
- フジテレビ、東宝、俳優座
[編集] 剣客商売 辻斬り
1982年12月3日放映
[編集] 剣客商売 誘拐
1983年3月4日放映
- 配役
- 秋山小兵衛:中村又五郎
- 秋山大治郎:加藤剛
- 佐々木三冬:新井春美
[編集] 藤田まこと版
- 1998年版
1998年10月14日~12月16日放映(全10話)
- 1999年版
1999年12月8日~2000年3月15日放映(全11話)
- 2001年版
2001年6月5日~7月24日(全5回)
- 大治郎が登場しない構成だった
- 2003年版
2003年1月21日~5月13日(全11話)
- 大治郎、三冬役が一新された
- 2004年版
2004年2月3日~3月16日(全7話)(関西テレビのみ2004年1月13日~3月16日(全10話))
- キャッチコピーは「剣は売っても心は売らぬ!!」
- スペシャル
- 連続ドラマ2004年版のフジテレビ未放送分(全3話)は『剣客商売スペシャル』として2004年5月1日に放送された。
- その後単発ドラマとして2004年12月、2005年1月、2005年9月、2006年6月の4話放送されている。2006年6月16日放送の『剣客商売スペシャル 女用心棒』はシリーズ最高視聴率18.6%(関東)を記録した。
- 配役
- 秋山小兵衛:藤田まこと
- おはる:小林綾子
- 秋山大治郎:渡部篤郎(1999年版まで)→山口馬木也(2003年版より)
- 佐々木三冬:大路恵美(2001年版まで)→寺島しのぶ(2003年版より)
- 弥七:三浦浩一
- 徳次郎:山内としお
- おもと:梶芽衣子
- 田沼意次:平幹二朗
[編集] 放送局
- フジテレビ (新作)および(再放送)
- FNN各局 (新作)および(再放送) - 但し、関西、山陽地区では、関西テレビ、岡山放送が時代劇の再放送に消極的なのか、それぞれサンテレビ、瀬戸内海放送 (系列外)で再放送されている。
- BSフジ (再放送)
[編集] 外部リンク
前番組: 隠密奉行朝比奈 (第1シリーズ) |
フジテレビ系水曜20時台 剣客商売(1998年版) |
次番組: 御家人斬九郎 (第4シリーズ) |
前番組: 隠密奉行朝比奈 (第2シリーズ) |
フジテレビ系水曜20時台 剣客商売(1999年版) |
次番組: 力の限りゴーゴゴー!! 〈→19:30から移動〉 |
前番組: 鬼平犯科帳 (2001年版) |
フジテレビ火曜時代劇 剣客商売(2001年版) |
次番組: 旗本退屈男 |
前番組: 怪談百物語 |
フジテレビ火曜時代劇 剣客商売(2003年版) |
次番組: 大奥(2003年版) |
前番組: 夜桜お染 |
フジテレビ火曜19時台 剣客商売(2004年版) |
次番組: カスペ!(20:54まで) |
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