藤田まこと
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藤田 まこと(ふじた まこと、本名:原田 眞(はらだ まこと)、1933年4月13日 - )は、東京都生まれの男性俳優、歌手。京都市立堀川高等学校卒業。初期は渡辺プロダクション所属。
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[編集] 経歴
無声映画時代のスター俳優だった藤間林太郎を父に持つ。藤間は現在の大阪府東大阪市にあった帝国キネマの撮影所を拠点に活動していたが、同撮影所が火災で閉鎖されたことから東京府(現・東京都)池袋に移り、藤田はそこで生を受けた。東京で幼少期を過ごしその後京都へ。京都市立堀川高校卒業後、最初は歌手として芸能界入りし、中田ダイマルのかばん持ちをしながら声帯模写や司会の仕事を行っていたが、1957年、大阪テレビ放送(現・ABCテレビ)で放送された、中田ダイマル・ラケット、森光子主演のテレビドラマ「びっくり捕物帳」に出演したことをきっかけに、本格的に俳優として活動を始める。
1962年、テレビドラマ『てなもんや三度笠』(ABCテレビ)に、主人公・あんかけの時次郎役で出演。白木みのるや財津一郎との掛け合いや、作中でたびたび披露した「俺がこんなに強いのも、当たり前田のクラッカー!」(当時前田製菓は同番組のスポンサーであった)といった名調子で全国区の人気を得る。
『てなもんや』終了後はしばらく不遇の時代が続いたが、1973年『必殺仕置人』(ABCテレビ)の中村主水役に抜擢され、それまでのコミカルなイメージを180度反転させるシリアスな演技で好評を博した。これ以降の必殺シリーズにも中村主水役で出演し続け、「家や職場ではただの風采の上がらない中年男だが、裏の顔は悪を闇に葬むる剣の達人」という、世のサラリーマンの理想像とも言えるキャラクターを、時にシリアスに、時にコミカルに演じ抜いた。藤田も「中村主水がなければ今の自分はなかった」と語っており、このシリーズは自他共に認める藤田の代表作となっている。
『てなもんや』終了後に苦労した経験から、中村主水での成功以後も役のイメージが固定しないようにいろいろなタイプの役柄に挑戦を続ける。同時期の作品としては、1976年の『夫婦旅日記 さらば浪人』(CX)は評価が高い。
1979年、テレビ朝日土曜ワイド劇場『京都殺人案内』シリーズ(ABCテレビ制作)開始。年1作のペースではあるものの、2006年現在も続く息の長いシリーズで、地味な作品ではありながらも固定ファンは多く、評価も高い。土曜ワイド劇場の中では、主人公の演者が交代することなく続いているシリーズとしては最長を誇る。本作で演じた音川音次郎役が、後のもう一つの当り役となる『はぐれ刑事純情派』の安浦刑事に繋がっていく。ちなみに、本作は第1作のみ原作が異なり、役名も異なるため、厳密にシリーズと言えるのは第2作からである。
1988年、テレビ朝日『はぐれ刑事純情派』に安浦刑事役で主演。温和で人情に厚いベテラン刑事という、今まで演じたことのなかった役柄が人気を呼び、ドラマもシリーズ化、中村主水に次ぐ当たり役となった。以降、フジテレビ『剣客商売』などに出演し、近年は演技派俳優としての評価も高い。他にも『愛のエプロン』など、テレビ朝日系のバラエティ番組にも積極的に出演している。
2006年10月からフジテレビでは初の現代劇出演となるドラマ『役者魂!』がスタートし、その番宣も兼ねた特別番組『笑っていいとも!2006秋の祭典SP!』に出演し、ちょい不良オヤジコンテストのコーナーで、ちょい不良オヤジとして扮装し渋いキャラを好演していた。
落語家・はぐれ亭馬之助としても知られる。2002年、紫綬褒章受章。
弟子にタレント・マジシャンのタクマらがいる。
[編集] エピソード
- 『びっくり捕物帳』で俳優活動を始めた頃の藤田は、「立ち回りどころか刀の差し方も知らない有様で、袴の片方に両足を入れていた」という(当時のフロアディレクター談)。また、当時は芝居の実力も伴っておらず、徐々に台詞を減らされてしまったという。
- 『必殺仕置人』の出演依頼は、他の俳優にも声がかけられていたが、全て断られたため、5人目の候補者であった藤田が選ばれたという。『てなもんや三度笠』のイメージが強すぎた彼は悩んだ上で、出演を引き受けたという。
- 1980年代、妻が事業に失敗したことで、数十億円とも言われる借金を背負い込んでいたが、「主水御殿」と呼ばれた自宅を売却したり、無休で精力的に俳優業を行うといった地道な活動が功を奏し、現在は借金を全て完済している。
- 莫大な借金を抱えていた時期、娘の縁談がまとまり結婚式が開かれることになった。その席に、招待していないはずの債権者が祝儀を手に駆けつけ、藤田はその様子を見て涙が止まらなかったという。また債権者は、自ら色々なテレビ局などに藤田のことを売り込んでいたという。
- チームが「近鉄パールズ」と呼ばれていた時代から大阪近鉄バファローズのファンであった。2004年に起こった球団再編問題においては、オリックス・ブルーウェーブとの合併反対を訴えるも実らずバファローズの消滅後に日本のプロ野球ファンを辞めることを決意した(藤田は野球を見るにしてもこれからはメジャーリーグを見ると公言)。
- 『てなもんや三度笠』時代のスポンサーであった前田製菓とは、未だに契約関係であるという。これは、「うちの会社にはこれしかありません」と、毎年大量の製品を契約金代わりに送ってくれるため、断れないという理由からである。ここから、藤田の人柄の良さが窺い知れる。前田のクラッカーは毎年寄付しているそうである。
- 東京生まれの東京育ちという事もあってか、「本気になると関西弁をつかわなくなる」と本人は語っている。
- 泉北1号線に設置されている大阪府が啓発している「道路を美しく・ゴミいや! マッタマッタ!みんなの道路ですぞ!」の看板に描かれている人物のモデルが藤田扮する中村主水になっている。
[編集] 主な出演作品
[編集] テレビ
- てなもんや三度笠
- おれの番だ!
- けったいな人々
- 必殺シリーズ
- 必殺仕置人(1973年4月~10月、朝日放送)
- 暗闇仕留人(1974年6月~12月、朝日放送)
- 必殺仕置屋稼業(1975年7月~1976年1月、朝日放送)
- 必殺仕業人(1976年1月~7月、朝日放送)
- 新・必殺仕置人(1977年1月~11月、朝日放送)
- 江戸プロフェッショナル・必殺商売人
- 必殺仕事人
- 新・必殺仕事人
- 必殺仕事人III
- 必殺仕事人IV
- 必殺仕事人V
- 必殺仕事人V・激闘編
- 必殺仕事人V・旋風編
- 必殺仕事人V・風雲竜虎編
- 必殺仕事人・激突!
- 夫婦旅日記 さらば浪人
- 京都殺人案内シリーズ(1979年~)
- はぐれ刑事純情派シリーズ(1988年~)
- 藤田まことの丹下左膳シリーズ
- はぐれ医者・お命預かります!
- 剣客商売
- 大奥 第一章
- 世直し順庵! 人情剣
- 武蔵 MUSASHI(大河ドラマ)
- 天下騒乱~徳川三代の陰謀
- 役者魂!(2006年10月~、フジテレビ)
- 太閤記~天下を獲った男・秀吉
[編集] 映画
- 必殺! THE HISSATSU
- 必殺! ブラウン館の怪物たち
- 必殺!III 裏か表か
- 必殺4 恨みはらします
- 必殺5 黄金の血
- 必殺! 主水死す
- 必殺! 三味線屋・勇次
- はぐれ刑事・純情派
- 突入せよ! あさま山荘事件(2002年)後藤田正晴役
- 積木くずし(1983年、東宝〉 - 穂波高介 役
- 大奥(2006年、東映) - 奈良屋善右衛門 役
[編集] 舞台
- その男ゾルバ
[編集] コマーシャル
- ランチクラッカー(前田製菓)
- 強力ベルベ(亜細亜製薬)
- ムヒ(池田模範堂)
- 養命酒
- 東建コーポレーション(藤田の公式サイトの運営も行っている)
- サンビシ
- おはぎの丹波屋
- マインズピア誠善社