国際結婚
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国際結婚(こくさいけっこん)とは、異なった国の出身者間での婚姻を指す。本項では、主に日本人と「外国人」(日本以外の出身者)との婚姻について述べる。
国際結婚をした「外国人」は、外国籍を有し続ける場合もあれば、後に帰化する場合もある。婚姻によって特別帰化(簡易帰化)の要件が満たされれば、居住要件の緩和、20歳未満での帰化が可能となる。詳しくは帰化を参照。
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[編集] 概説
日本が江戸時代の鎖国を解いて開国した後、近代国家として歩み始めた明治時代から、日本人と外国人の結婚は極めて少ないながらも存在したが、それは小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)※1のようなごくごく限られたケースであった。
大正から昭和に入ると、国粋主義が勢力を増し、国際結婚はタブー視されるに至る。
戦後直後は進駐軍兵士と日本人女性との間の事実婚が多かったといわれている。
近年の日本で国際結婚が話題になり始めたのは、1980年代以後のいわゆるバブル期である。当時は円高ということもあって海外に出かける日本人が急増し、その結果、外国人との結婚に対して心理的な障壁を感じない日本人が多くなった可能性がある。
またこれとは別に、結婚を望むが適わない男性が多数生じるという状況が日本では発生し始めていた。それまでは結婚適齢期の女性人口が男性人口を上回っていたのが、同数か男性過剰となったことが原因として挙げられている。あるいは、女性が男性に求めた条件が厳しすぎたという意見もある(三高など)。とりわけ東北地方などで農業を営む独身男性に取っては深刻な事態であり、結婚相手の不足がしばしばマスメディアで報じられるようになり「嫁不足」と言われた。このため、農協や自治体を中心に、結婚相手を日本よりも経済的に低い状態にある他国へ求める動きが活発となり、主に中国やフィリピンなどとの「お見合いツアー」が開かれ、一定の成果を挙げた。
1990年代以後、バブル景気は崩壊したが国際結婚は日本社会に定着しており、近年も増加している。
近年の国際結婚の増加には、明らかに嫁不足という事情があったことは事実であるが、最近では人柄や相性などが重視されるようになっている。しかし、近年の日本女性には、過去の経緯や偏見から、外国人女性と日本人男性との国際結婚カップルを非難するような意見もみられる(この意見については下の「近況」で示す)。
※1 この当時白人男性と日本人女性のカップルの多くは内縁の関係にあったが。ハーンの場合は正式の婚姻を行っている。このことについてハーンは友人より内縁関係でいることを薦められたが、敢えて結婚に踏み切っている。
[編集] 近況
2005年現在、結婚総数の約5%が国際結婚であり、この数値は20年前の約10倍に上る。
現状の制度としては、日本人と外国人が結婚した場合、住民票に外国籍の配偶者や子ども(日本国籍との重国籍の場合を除く)が記載されない、つまり日本人と外国人が同一世帯に属することを証する書類が存在しない、という問題点がある。
日本国内の国際結婚への認識はマスコミの報道で一般論化されている情報と厚生労働省等の統計事実と大きく違い、また国際結婚の内訳は性別によって著しく違う事は特記すべき興味深い状況である。まず最初に、日本人の国際結婚総数は、夫が日本人であるカップルの絶対数が圧倒的に多い。厚生省統計によれば、2003年(平成15年)の国際結婚数は、夫日本人・妻外国人が27,881組、夫外国人・妻日本人が8,158組で、3倍以上の差がある。
また、国際結婚相手の出身国、人種に日本人男性と日本人女性の間で顕著な差異があるのが我が国の国際結婚の特徴の一つである。まず、日本在住の外国人の国籍別の割合は「日本の外国人」にある通り上位5位(韓国、朝鮮、中国、ブラジル、フィリピン、ペルー)で82.8%を占め、6位の米国籍者は2.5%にすぎないということがわかっているため、国際結婚の配偶者の出身国もそれに従うと考えられる。実際、夫が日本人である妻の人種の90%以上は非白人女性であり、また白人女性は5%未満であり前記国籍割合に沿っていることがわかる。一方、妻が日本人である夫は米国、英国などの英語圏で白人種が人口の大半を占める欧米諸国の出身者が多いことが我が国の国際結婚の特徴である。具体的に2004年厚生労働省の統計によると、国際結婚者のうち配偶者が米国出身者である男性は0.6%であり、女性は17.4%である。また、夫が日本人である妻の出身国は東南アジア、中国、韓国等のアジア諸国出身である場合がほとんどであり(89.6%)、総じて日本の外国人の出身国割合に準じていることがわかる。
そういった差異が生じる原因として、一般に男性は(同国籍、国際結婚問わず)配偶者の経済状況を結婚の条件として考慮しないため国籍・人種を問わず結婚できるのに対し、女性は相手の経済能力を結婚の条件としているため、日本と同程度の経済水準を持った先進国出身の外国人に限定される場合が多いと思われる。
俗説として「日本人男性は外国人女性に相手にされず、日本人女性は外国人男性に人気がある」というものがある。国際結婚の配偶者の出身地域を非欧米諸国と欧米諸国とに分け、欧米諸国の出身者だけを外国人と定義すれば、俗説は比較的事実に近いと言える。また、このような偏見が生じた原因は、日本人の中には外国人と言えば欧米諸国民をイメージする者が多いことが理由の一つである事が考えられる。
また、「男性が日本人の国際結婚で、外国人妻がアジア諸国出身の結婚目的は主に経済的助勢である」事を暗示するかのような報道に対して、一部の外国人妻からはマスコミへの異議申し立てが行われている。2005年11月、読売新聞一面のコラムでこの文脈に沿った連載記事が掲載されている。
その他の傾向としては、国際結婚の諸問題に対応する、Webサイトを代表とする相談窓口が、外国人夫と日本人妻とのカップルを前提としているものが多いため、その逆の組み合わせの国際結婚夫婦が相談できない例が増えてきたとの指摘がある。また、日本人の国際結婚は外国人夫と日本人妻との間で起こるという妄説は、外国人妻の日本での生活において抱える問題を認識しない状況を作る可能性がある。他にも、日本人男性と結婚した外国人女性は教育が不十分であるとの偏見をもつ者が日本女性には多く、外国人妻を無知な存在であるとして見下した態度を取ったり、あるいは無知故に日本人男性に騙された存在として過剰に保護を行うことがあるため、自分への処遇が不相応なものであると感じる外国人妻が増えているとの意見もある。もちろん実際には、希望して日本人と結婚した外国人女性が多いのであり、また、大卒や院修了など高い教育を受けた者が少なくない。
[編集] 国際結婚と離婚率
国際結婚についてはその離婚率の高さがマスコミの報道によって一般論化されているが、2002年現在、国際結婚の離婚率は43%にとどまり、日本人同士の38%に比べて若干高い程度である。もしマスコミが報道するほど文化や風習、考え方や国民性の違いによる離婚率が高いのであれば日本人同士の離婚率より5%しか多くないのはマスコミが創った妄説とも言える。
但し、アジア、インド、中東、アフリカ、南アメリカなど日本より経済力の劣る国出身者と結婚する場合、日本との経済力の差から、男女問わず出稼ぎや日本に滞在するためのビザを目的とした結婚も少なくないと目されている。こうした場合、当然ながら結婚生活はうまくいかず離婚に至るケースも少なくない。
[編集] 国際結婚に関するトラブル
実際に、日本人夫が仲介業者を経て名義を賃貸し婚姻届の提出により「結婚」が成立していたという事例も判明している。業者は日本の暴力団などと海外のマフィアなどが協力して事業を行っている場合が普通である。これは、性産業従業員に関しても同様のことである。これらは形態としては国際結婚ではあるが、いわゆる偽装結婚であり両者には夫婦関係すら存在しない。
日本国は、こうした事例に対処するため2006年前半期より一部の国・地方に対し30代未満の外国人女性へのビザ発行を全面的に取りやめた。実際上、日本国にとって暴力団関係の問題を引き起こすのは10代後半から20代の女性が多かったからであると言われる。こうした規制や警察による検挙努力により、現在(平成18年)はこの様な偽装結婚は少なくなったが、その反面、より目立たない形の悪徳国際結婚仲介業者は増えている。
[編集] 悪徳な国際結婚仲介業者の存在
- 結婚希望者間のコミュニケ-ションを妨害し、早期結婚を促す。
- 男女双方に好印象を与えるようにプロフィ-ルを偽る。
- 外国女性側の業者は、女性に借金をさせて、結婚後に夫に返済を求める。この事により、夫は正規の結婚をしたつもりが、実際は外国妻の出稼ぎ同然となっている。
- 成婚数は明記するが、離婚数については偽るか明記しない。
- 偽りの保証制度を掲げる。(支払金の返金、結婚後のサポ-ト等)
悪徳業者は、男女間の言葉の弊害と、人間が何事も良い方に信じたがることを利用する。また、外国人配偶者の本国から非常に多くの書類を用意し、滞在ビザを取得する必要があり、これにも悪徳仲介業者は付け込み、生業を得ている。こうしたことから、業者を通じた国際結婚は通常の国際結婚より離婚率が高いと言われているが、きちんとしたサポートを行う良心的な業者も多数存在する。
なお、こうした事情を利用して入国管理審査は厳しくされ、実際に「本当の」結婚をする場合でも手続きが煩雑となってしまった。近年、結婚を名目として日本国のビザ申請を行った場合、ビザが発行されることはまずないというのが実態である。従って、日本人が業者を介さず個人で外国人女性に対し結婚目的で日本へ招聘する場合、通常の個人招聘による観光目的などでビザを申請し、来日後に申請した来日目的とは関係なく婚姻届を出して結婚してしまうというのが通常の合法的なやり方となっている。
[編集] 国際結婚を取り扱った作品
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- 夫妻の国籍別にみた婚姻件数の年次推移(平成16年 人口動態統計 年報 主要統計表より)
- [1] (平成16年 厚生労働省 夫妻の国籍別にみた年次別婚姻件数)
- NPO法人 国際結婚協会
- All about 国際結婚