学力格差
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学力格差(がくりょくかくさ)とは、同年代における学力(成績、進学状況等)の格差のこと。また、格差がある状態そのものを指す場合もある。
以下では特に断り書きがない限り、日本での事例について取り扱う。
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[編集] 月齢による格差
同学年であっても月齢によってテストの点に差があることは、世界中で報告されている。
また、一橋大学大学院助教授川口大司によれば、4月生まれは3月生まれよりも平均教育年数が男性で0.2年、女性で0.1年長い(最終学歴が高くなる)という(ただし、収入については、有意な格差は出てこなかった)。
[編集] 20世紀後半以降の諸議論
塾に通う子供の増加、ゆとり教育、格差社会が議論になるに従い、それらによって子供の学力に格差があるのではないかという議論が行われている。
[編集] 学力格差
東京大学基礎学力研究開発センターが2006年に行った調査「第5回 基礎学力シンポジウム(2006年度)」では
によって学力格差は広がるという分析が出ている。
[編集] 一般的なイメージ
一般的なイメージでは、以下の要因が学力格差を起こしていると考えている人が多い。
- 親による影響
- 親の収入(経済力)、子に抱く理想、利己的な教育論の違いで通う学校が変わり、公立学校や私立学校などでの教育形態の差、塾等による受験活動で学力に差が生じる。
- (参考):読売新聞が2006年に行った世論調査では、75%の人が「親の経済力の格差が子供の学力格差に繋がっていると答えている」
- 学校による影響
- 授業数の差など公立学校と私立学校に差が生じる。校内での治安など間接的な要因もある。
- 教育形態による影響
- 学習塾による影響
- 「学力低下」の実態(苅谷剛彦他 岩波ブックレット)』によると、塾に通っている子と通っていない子で学力の比較を行った結果、塾に通っていない子は塾に通っている子に比べて、中学生の数学で最大で20点もの学力格差があると報告している。
[編集] 進学格差
学力格差のうち、進学と諸要因との関係については研究が行われており、報告書等では
- 産業構造の変化
- 母親の学歴
が子供の進学状況に対して影響があると指摘されている。
[編集] 競争
進学競争は教科学習の主要な動機付けの一つであり、競争を緩和すると教科学力も低下する傾向にある。例えば、高校入試で総合選抜を採用している学区と単独選抜を採用している学区では、中学3年次の学力に顕著な違いがあることが知られている。
[編集] その他
- 学力の高い者を一つの学校に集めれば格差は無くなるかというと、そんなことはない。学力偏差値が同レベルの者を一つの学校に集めた場合、その中で成績が正規分布を取るようになる。
- 一つの都道府県内では進学校とそうでない学校とがだいたい分かれているため、教師の異動は同じグループ内で行われることが多い。これは、進学対策として授業を教える学校(生徒に手がかからず、受験対策を中心に授業を行う)と、生活指導や生徒指導が多い学校(学習以前の段階で生徒に手がかかる)とでは実務の内容が違うため、両極端の学校間で異動を行うと実務が違いすぎて教師が対応できなくなるため。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- 「小学校入学時の月齢が教育・所得に与える影響」(川口大司)
- これが学力格差「通塾の有無で最大20点差」(伊藤敏雄)-All About-