新幹線運行管理システム
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新幹線運行管理システム(しんかんせんうんこうかんり-、通称COMTRAC(コムトラック):Computer Aided Traffic Control System)とは、現在東海旅客鉄道(JR東海)と西日本旅客鉄道(JR西日本)が共同で東海道新幹線・山陽新幹線と博多南線で運用している、列車の運行に関する情報の管理、及び機器の制御を行うコンピュータシステムである。列車の運行管理や制御機器の監視などを総合的に行う列車運行管理システム(PTC)の一種である。
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[編集] 歴史
1964年(昭和39年)10月1日の東海道新幹線開業当初、新幹線の運行管理には列車集中制御装置(CTC)を主に使用していた。この装置による列車運行方式は、総合指令室に設置した表示盤に管轄路線内で運行中の全列車の位置や分岐器が開いている向き(進路)を表示させ、指令員はこの表示盤を見て運転状況を常に把握、スイッチにより手作業で分岐器の操作や速度制限の指示などを行うというものだった。しかし1972年(昭和47年)3月15日の山陽新幹線新大阪駅~岡山駅間の開業を控え、列車の増発による分岐器操作回数の増加、管轄路線の延長に伴う運行管理の困難などが懸念された。そこで当時の日本国有鉄道は、座席指定券などの予約・発券のためのコンピュータシステムであるマルスの開発を共同で開発した実績を持つ日立製作所とともに、世界初のPTCである新幹線運行管理システム(COMTRAC)を1970年に開発、試験運用などを経て2年後の山陽新幹線岡山開業と同時に東京駅~岡山駅間の新幹線全線で本格運用を開始した。当時のCOMTRACの機能は、コンピュータが自動的に分岐器を操作する自動進路制御装置(PRC)のみであったが、これらは現在のPRCやPTCの原型であったと言えよう。その後COMTRACには、路線の延伸やコンピュータ技術の発達とともに運転整理機能、車両運用管理機能、設備管理機能などの機能が追加されていき、現在では列車の運行管理だけでなく電源設備や旅客向け設備の管理などを総合的に行うことが可能となった。
COMTRACの開発のノウハウは、開業当初から東北新幹線・上越新幹線に導入されたCOMTRACを総合的に発展させた新幹線総合システム(COSMOS)、現在では日本で最も規模が大きいPTCとなった東京圏輸送管理システム(ATOS)など、鉄道事業者・路線の特徴に合った様々な列車運行管理システムの開発へと引き継がれていった。
[編集] システムの概要
COMTRACは主に3つの系統システムで構成されている。
[編集] 進路制御系システム
PRC(Programmed Route Control)系システムとも呼ばれる。当日の全列車の運転計画を基に、CTCを介して東海道・山陽新幹線全線の分岐器を自動制御し、正確に列車を駅の番線などに進入させる。また遅延など異常発生時には警告を出し、速度制限や列車待避の変更、運休や特別列車の運行など(運転整理)を自動で計算し、指令員による手動操作を支援する。PRC系システムには以下の装置などで構成されている。
- 列車集中制御装置(CTC)
- 自動進路制御装置(PRC)
- 自動列車制御装置(ATC)
[編集] 情報処理系システム
EDP(Electronic Data Processing Computer)系システムとも呼ばれる。列車の運転・保守計画や車両の運用計画、乗務員基地や車両基地への情報伝達、旅客向け放送の管理など情報処理を中心に行う。EDP系システムには以下の装置などで構成されている。
- 列車運行状況表示装置(TID)
- 旅客案内情報処理装置(PIC)
- 新幹線情報管理システム(SMIS)
[編集] 運行表示系システム
MAP(Man-Machine Advanced Processor)系システムとも呼ばれる。CTCやPRCから送られてきた列車の位置や分岐器の開通方向、沿線の監視装置から送られた風速・雨量・積雪量などの気象データを運行表示盤に表示させる。またユレダスにも接続させ、地震発生時には警報を出し、すぐさま全列車の停止手配が取れる体制をとっている。