新進棋士奨励会
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新進棋士奨励会(しんしんきししょうれいかい)は、日本における将棋のプロ棋士養成機関である。一般には単に奨励会と呼ばれることが多い(本項においても以下「奨励会」と記述する)。
7級から三段までの段級位で構成されており、三段から四段に昇段することで正式なプロ棋士となることができる。東京の将棋会館と大阪の関西将棋会館で行われている。
女流棋士に対しては「女流育成会」が同様の養成機関として存在するが、女性が奨励会に参加し正棋士を目指すことも可能である。ただし、女性が奨励会から四段に昇段し正棋士となった例はない。2級以上に昇級していた場合に女流棋士になることも可能。これは岩根忍が唯一の例。
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[編集] 入会資格
[編集] 入会試験
年1回あり、対戦および筆記試験がある。受験資格は満19歳以下で四段以上のプロ棋士(日本将棋連盟正会員)から受験の推薦を得た者に限られている。受験の推薦を得るには、アマチュアの大会で優秀な成績を収めたり、プロ棋士などが指導する将棋教室などで実力を認められたりしなければならない。受験可能な最下位である奨励会6級でもアマチュア四段以上の実力に相当するため、都道府県トップクラスの実力がなければ合格は非常に困難である。現在A級棋士で名人経験のある丸山忠久をもってしても試験に2度失敗している。
[編集] 初段受験制度
従来の受験制度(級位受験)とは別に、1997年度より創設された。受験資格は満22歳以下(8月末日)で、アマチュア公式戦全国大会の優勝または準優勝を経験した者で、四段以上のプロ棋士(日本将棋連盟正会員)から受験の推薦を得た者。2005年度に吉田正和朝日アマ名人(当時)がこの制度による最初の受験者(かつ初の合格者)となる。なお吉田朝日アマ名人は受験時19歳であり、当時の年齢下限(20歳)より下であったが受験が認められた(以降は満22歳以下に変更となっている)。
[編集] 三段編入試験
2007年度より創設。受験資格は過去一年のアマチュア全国大会(アマ竜王、アマ名人、朝日アマ名人、アマ王将、赤旗名人、支部名人)の優勝者のうちの希望者。
- 2~3月または8~9月の奨励会例会に参加し奨励会二段(場合により初段)と8局対局、6勝2敗以上で三段に編入される(6勝もしくは3敗した時点で打ち切り)。
- 三段リーグ編入試験に合格したものは年齢に関係なく三段リーグに最長2年間(4期)参加できる。
- 三段リーグ在籍中に二段降級となった場合は退会とする。三段リーグの参加資格の勝ち越し延長も認めない。
- この試験によって三段リーグに在籍した者は、退会後も再度受験資格を得られれば何度でも受験できる。
三段編入試験は元奨励会所属者であっても受験資格があり、元奨励会三段である今泉健司がアマ竜王、アマ王将として受験し、試験に合格した。
[編集] 研修会
関東、関西、東海で行われている研修会においてAクラスに昇級した場合にも、奨励会6級への入会の資格が与えられる。
[編集] 奨励会規定
奨励会は7級から三段までで構成されている。二段までは、関東・関西にそれぞれ分かれて奨励会員同士で対局を行い、段級位に差がある場合は駒落ちで対局する。規定の成績を収めたときに昇段・昇級することができる。なお三段は関東・関西合同のリーグ戦が行われ、上位2名が4段へと昇段する。
満21歳(2002年度以前の奨励会試験合格者においては満23歳)の誕生日までに初段、満26歳の誕生日を迎える三段リーグ終了までに四段に昇段できなかった者は退会となる。ただし三段リーグで勝ち越しを続ければ満29歳を迎えるリーグ終了まで延長して在籍できる。年齢・勝ち越し条件に関係なく三段リーグに5期(2年半)在籍できる。
[編集] 段級位の昇降
- 7級~1級
- 6連勝、9勝3敗、11勝4敗、13勝5敗、15勝6敗のいずれかの成績を取れば昇級。
- 2勝8敗以下の成績で降級点が付き、降級点2つで降級。3勝3敗以上の成績で降級点は消える。
- 初段・二段
- 8連勝、12勝4敗、14勝5敗、16勝6敗、18勝7敗のいずれかの成績を取れば昇段。
- 2勝8敗以下の成績で降段点が付き、降段点2つで降段。3勝3敗以上の成績で降段点は消える。
- 三段リーグ
- 1987年度より設立
- 半年ごとに各奨励会員が18戦ずつを戦い、上位2人が四段に昇段する。総合3位の人は次点が与えられ、次点を2度取ったものは順位戦フリークラスの四段に昇段する権利を得るが、権利を放棄することもできる。このケースで四段になったのは伊奈祐介・伊藤真吾の2名。伊奈は後に一定の成績を収め順位戦C級2組に編入された。
- リーグ戦での勝率が2割5分以下(18戦で4勝以下)であると降段点がつき、連続降段点で二段へ降段する。
- 因みに過去の四段昇段の最高成績は小倉久史、藤原直哉、片上大輔、大平武洋の16勝2敗、最低記録は野月浩貴、西尾明の11勝7敗である。