民営化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
民営化(みんえいか)とは、国や地方公共団体が経営していた企業および特殊法人などが、一般民間企業になることをいう。
多くの場合、根拠法の廃止又は改正により商法上の会社となることを指す。一般には、公社・公団、現業事業などが特殊会社に移行することも「民営化」と呼ばれる。また、PFIによる公営事業の全面的な民間委託も民営化ということがある。民営化の目的は効率化、サービスの向上、透明化、税金の納入による国民負担の軽減、債務の切り離し、労働組合の弱体化、天下りの防止などである。総じて、政府による経済介入を減らす小さな政府政策に関連している。
逆に、国又は国の出資する特殊法人が民間会社の議決権の過半数を取得することを国有化という。
目次 |
[編集] 民営化の効果が出る仕組み
[編集] 自然選択からのアプローチ
国営企業と民間企業の違いは、根拠法に依って定められた独占市場の有無である。新規参入の激しい自由市場では自然選択説が適用でき、企業は市場環境により適応した別の企業に置き換わる。根拠法の廃止又は改正により、国営企業から独占市場を奪い市場環境を適切に定めれば、自然選択の力で最適化された企業を得る。
民営化が効果を挙げるためには企業間で生存競争が起こらねばならず、新規参入企業の確保と、民営化公社を含む企業の倒産・市場撤退への覚悟が必要である。新規参入企業の確保が滞れば独占企業が残り、公社の倒産・市場撤退への覚悟が無ければ公社の赤字垂れ流しを止められない。従って、これらが用意できない期間は民営化の効果が期待できず、国で制御できる分だけ国営のままの方が良い。また、市場環境を適切に定めるように根拠法の廃止又は改正を行わないと、効果が目的とは違うものになる。
新規参入企業が国営の場合がある。民営化#諸外国での民営化のニュージーランドポストを参照。
[編集] 株式市場からのアプローチ
民営化された国営・公営企業は通常株式公開される。段階的に株式を放出し、やがて市場がすべてを保持するようになった(国有分の株式が完全に放出された)場合、完全民営化と言われる。
市場によって保持される企業は利益増大が必須命題となる。このため各企業は利益をあげるよう企業努力をするようになる。利益が増大できない場合、市場から経営者の交代を求められる可能性もある。
また、利益が極めて薄い場合、株価が低迷し買収により効率化が図られることも考えられる。
[編集] 資源配分からのアプローチ
完全な民営化のプロセスが整った場合、企業は価格と利潤の関係を適正化する。価格機構が正常化すれば、市場への供給に対して過剰や過少がなくなり、経済全体が効率化する。
供給過剰だった場合は、使用していた資源(リソース)を解放するようになるため、他の産業の活動を支援することになる。供給過少だった場合は、必要とされる量が供給されるようになるため、利用者の経済活動が活性化する。
[編集] 民営化のダークサイド
日本の場合については国鉄分割民営化、構造計算書偽造問題を参照。
[編集] 主な民営化が為された日本の会社
右側の括弧内は根拠法が廃止又は改正された年を表す
- 日本通運株式会社 - 日本通運株式会社法の廃止(1950年)
- 帝国石油株式会社 - 帝国石油株式会社法の廃止(1950年)
- 日本合成ゴム株式会社(現・JSR株式会社) - 日本合成ゴム株式会社に関する臨時措置に関する法律の廃止(1969年)
- 日本電信電話公社(現・日本電信電話株式会社) - 日本電信電話株式会社法の制定(1984年)※
- 日本自動車ターミナル株式会社 - 日本自動車ターミナル株式会社法の廃止(1985年)
- 日本専売公社(現・日本たばこ産業株式会社) - 日本たばこ産業株式会社法の制定(1985年)※
- 東北開発株式会社 - 東北開発株式会社法の廃止(1986年) 注1
- 日本国有鉄道(現・JRグループ各社) - 日本国有鉄道改革法の制定(1986年)※
- 日本航空株式会社(現・株式会社日本航空インターナショナル) - 日本航空株式会社法の廃止(1987年)
- 沖縄電力株式会社 - 沖縄振興開発特別措置法の改正(1988年)
- 国際電信電話株式会社(現・KDDI株式会社) - 国際電信電話株式会社法の廃止(1998年) 注2
- 東日本旅客鉄道株式会社 - 旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律の改正(2001年)
- 東海旅客鉄道株式会社 - 同上
- 西日本旅客鉄道株式会社 - 同上
- 電源開発株式会社 - 電源開発促進法の廃止(2003年)
※印は新設会社への事業継承。
注1:1991年10月1日に三菱マテリアル株式会社と合併し解散。
注2:1998年12月1日に日本高速通信と合併し、ケイディディ株式会社と商号を変更、2000年10月1日に第二電電株式会社(現・KDDI株式会社)と合併し解散。
[編集] 諸外国での民営化
- ドイツポスト - 郵便、貯金、通信の3部門に分割され民営化。郵便部門のドイツポストは、ドイツの枠を超えて、国際的物流企業となったが、同社は、通常郵便の独占利潤をもって小荷物部門への国際事業展開を行っており、通常郵便に競合他社が事実上クリームスキミング的に参入している日本とは事情が大きく異なる。
- カリフォルニア州の電力事業 - 民営化に失敗し、カリフォルニア電力危機を引き起こした
- イギリス国鉄 - 1994年に施設管理を行うレールトラック社と25の列車運行会社、13 の軌道メンテナンス会社に.分割民営化された。レールトラック社は株主への配当を重視するあまり施設管理への投資を怠ったため、多くの重大な鉄道事故を引き起こし、2002年に倒産した。
- ニュージーランドポスト - 郵便、貯金、通信の3つに分割され、貯金・通信部門は民営化された。貯金部門はその後オーストラリアの会社に買収された。国民へのサービスが低下したため、国営銀行「キウイバンク」が設立された。
[編集] 関連項目
- 郵政民営化
- 公立保育所民営化
- NHK民営化
- 新自由主義
- マーガレット・サッチャー
カテゴリ: 企業 | 経済関連のスタブ項目