神社本庁
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神社本庁(じんじゃほんちょう)は、神宮(伊勢神宮)を本宗と仰ぎ、日本全国約8万社の神社を包括する宗教法人。日本最大の宗教法人といわれている。
神社本庁の役割は、包括下の神社の管理・指導を中心に、伝統を重んじ、祭祀の振興や道義の作輿をはかり、日本の繁栄を祈念して、世界の平和と人類の福祉に寄与することとしている。このための具体的な活動としては、神社神道の宣揚・神社祭祀の厳粛なる執行・氏子崇敬者の教化育成・本宗である伊勢神宮の奉賛と神宮大麻の頒布・神職の養成・冊子の発行頒布を通じた広報活動などがある。夫婦別姓や女系天皇への反対(後述)など、限定的ながら保守系の圧力団体としての活動も行っている。
後述のように有力神社の中には神社本庁に属していない神社もあるが、直接の関係は無いながらも、神社神道の組織として両者の関係は密接である。
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[編集] 設立の経緯
日本がポツダム宣言を受諾して1945年8月15日、降伏したのち連合国の占領下におかれた連合国軍最高司令官総司令部は1945年12月15日、戦前・戦中の国家神道の体制を破壊するため、神道指令を発し、神社を国家から分離することを命じた。
そのため、当時民間の神社関係団体だった皇典講究所、大日本神祇会、神宮奉斎会の3団体が中心となって内務省の外局である神祇院の事務を引き継ぐ形で、全国の神社の総意にもとづいて、1946年2月2日に一宗教法人として、神社本庁が設立された。
[編集] 教義
まず、神道とは日本民族の古来の習俗に由来する、自然崇拝・祖先崇拝を基調とした信仰を総称した言葉であり、神社神道には、キリスト教の聖書やイスラム教のコーランのような教典は存在しない(教派神道は別)。
1956年、神社本庁は、古来の伝統に立脚し、実践すべき規範として以下の「敬神生活の綱領」を発表した。なお、宗教法人としての規則は庁規と呼ばれる。
神道は天地悠久の大道であつて、崇高なる精神を培ひ、太平を開くの基である。 神慮を畏み祖訓をつぎ、いよいよ道の精華を発揮し、人類の福祉を増進するは、使命を達成する所以である。 ここに綱領をかかげて向かふところを明らかにし、実践につとめて以て大道を宣揚することを期する。 一、神の恵みと祖先の恩とに感謝し、明き清きまことを以て祭祀にいそしむこと 一、世のため人のために奉仕し、神のみこともちとして世をつくり固め成すこと 一、大御心をいただきてむつび和らぎ、国の隆盛と世界の共存共栄とを祈ること
[編集] 組織
[編集] 教団組織
- 所在は東京都渋谷区代々木の明治神宮の隣。
- 代表役員は総長(現在は三嶋大社宮司・矢田部正巳)。
- 地方機関として、各都道府県に被包括法人として神社庁、神社庁支部を置く。ここでは、人事財政などの諸事務のほか、地域活動の推進を図る活動を行っている。
- 全国の約80,000社の神社が、神社庁によって管轄されている。
また、以上の教団組織のほか、関係団体、指定団体がある。
[編集] 関係団体
- 全国神社総代会
- 神道政治連盟
[編集] 指定団体
- 全国敬神婦人連合会
- 神道青年全国協議会
- 全国神社保育団体連合会
- 全国教育関係神職協議会
- 全国神社スカウト協議会
- 全国氏子青年協議会
[編集] 神社本庁に属さない神社
- 靖国神社は神社本庁に属していない。
- 有名な神社であっても、単立宗教法人として運営されている場合がある。
- 神社本庁以外にも神社神道系の包括宗教法人がいくつかあり(神社本教、北海道神社協会、神社産土教、日本神宮本庁など)、それに属する神社は神社本庁には属さない。
- 神社本庁包括下の神社であっても、別に宗教法人を設立している場合がある。
- 平成16年(2004年)に明治神宮が神社本庁から離脱。
[編集] 関連記事
[編集] 皇室典範改正に関する神社本庁の基本的な姿勢
2005年3月17日、神社本庁は、「皇室典範に関する有識者会議」が皇位継承のあり方について検討していることを受けて、本庁としての考えを「皇室典範改正に関する神社本庁の基本的な姿勢」としてまとめ、各都道府県の神社庁に送付した。見解は「歴史的に、皇位は男系男子によって継承された」と指摘。政府や有識者会議には「男系男子による継承の歴史的な意義と重みを明確にした上で、将来にわたって安定的に皇統を護持するための具体的な論議がなされるべきだ」と求め、男系男子による皇位継承の重要性を尊重する立場を明確にした。また、天皇、皇族は憲法の基本的人権の「例外」とされることからも、男女平等の観点から女性天皇を論じるのは不適切と主張。皇位継承のあり方に関し「海外の例を安易に取り入れることは、国柄の変更をもたらす恐れがある」としている。
なお、神社本庁の久邇邦昭統理は、戦後皇籍離脱した久邇宮朝融王の長男である。
[編集] 靖国神社問題に関する神社本庁の基本見解
2005年6月9日、神社本庁は内閣総理大臣による参拝等で賛否両論の議論を巻き起こしている靖国神社の諸問題に関して、本庁としての基本見解を発表した。その中で、本庁としては、所謂A級戦犯も含め、戦争裁判犠牲者を日本政府の一連の措置に基づき昭和殉難者として合祀、慰霊してきた靖国神社を支持するとともに、多くの人が祭神の「分祀」の意味を誤解して神社祭祀の本義から外れた議論がなされている事を憂慮していると表明。見解の要旨は、靖国神社は日本における戦没者追悼の中心的施設である・祭神の分離という意味の「分祀」は神社祭祀の本義からありえない・首相は靖国神社参拝を継続するべきである・所謂A級戦犯は国会の決議とそれに係る政府の対応に基づき合祀された、というものである。
[編集] 外部リンク
- 神社本庁ホームページ(公式サイト)
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