自動体外式除細動器
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自動体外式除細動器(じどうたいがいしきじょさいどうき、Automated External Defibrillator,AED)は、心臓の突然の停止(心室細動)の際に電気ショックを与え(電気的除細動)、心臓の働きを戻すことを試みる医療機器。日本で現在承認されている製品は薬事法上の、類別・機械器具12、一般的名称・半自動除細動器あるいは非医療従事者向け自動除細動器に該当する。海外の一部製品にあるような、完全に自動化された除細動器ではない。
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[編集] 機器の概要
心臓が停止した場合、一刻も早く人工呼吸、心臓マッサージを行うとともに除細動器(AED等)によって心臓に電気ショックを与えることが必要となる。
使い方は、電源を入れ、電極パッドを胸に貼り付けると心電図を解析して電気ショックを与えるべきかを調べる。電気ショックが必要と解析した場合には、機械の指示に従ってスイッチを押すと電気ショックを与える。従来の除細動器は医師などの専門家が使用することを想定されているため手動式であるが、空港などに公共の場に配備されている自動体外式除細動器(AED)は、操作を自動化して医学的判断ができない一般の人でも使えるように設計されている。操作はいたって簡単で、AEDの発する指示音声に従ってボタンを押すなど2~3の操作のみで、取り付けもピクトグラムで分かりやすく説明されており、医療知識や複雑な操作なしに電気的除細動が実行される。AEDによる除細動の施行と併せて、そばにいる者が心臓マッサージ・人工呼吸を継続して行うことも救命のために絶対不可欠である。
実際にAEDを一般市民が使うケースは非常に多いと考えられる。日本では救急車が現場到着するまで平均で約6分強を要するが、心停止した場合、一刻も早く電気的除細動を施行することが必要とされており、6分も待つ余裕は全くない。救急車の到着以前にAEDを使用した場合には、救急隊員や医師が駆けつけてからAEDを使用するよりも救命率が数倍も高いことが明らかになっている。こうしたことから、AEDをなるべく多数配置するとともに、一人でも多くの住民がAEDに関する知識を有することが非常に重要だとされている。
[編集] 日本の状況
空港や飛行機内、ホテルなどの公共施設に広く設置され、消火器などと同様に、万一の事態が発生した際にはその場に居合わせた人が自由に使えるようになっている国もあるが、日本では従来医師しか使用できなかった。
2003年になって、ようやく救急救命士に使用(医師の指示なく)が認められ、2004年7月からは一般市民も使えるようになり、空港や学校、球場、駅などの公共施設に設置されることが多くなった。2005年に開催された愛知万博ではAEDを多数配置しており、これによって助かった人が少なからずいる。また2006年7月には大手鉄道事業者の中で初めて、東京都交通局が都営地下鉄全101駅へのAED設置を完了した。2006年には東海道新幹線主要駅やJR東日本の新幹線全駅にAEDが設置され、鉄道会社でもAEDの導入が進んでいる。
日本で、一般市民がAEDを使用できるようになった背景には、アメリカ心臓協会(AHA:American Heart Association)が中心となって策定した救急蘇生国際ガイドラインによりAEDの高い有効性が実証されたことと併せて、2002年に高円宮憲仁親王がスポーツ活動中の心室細動により急逝したことの影響も大きいとされている。
[編集] 使用法
AEDを使用する場合、心肺蘇生を合わせて行う必要がある。AHAの2005ガイドラインによると、AEDの使用の前に心肺蘇生を行うこととされている。AEDの使用方法は比較的難しいものではないが、心肺蘇生は一定の訓練を受けなければ実践は困難である。また製品により取扱いや音声ガイダンスに若干の違いがあることから、義務ではないが取扱いには事実上訓練が必要となる(旧来の蘇生講習を受けた人にも取扱の受講が推奨されていて、受講後は補講修了証が発行されている)。
AEDがその機能を発揮するのは心室細動を起こしている心臓に対してであり、正常な拍動をしている心臓・完全に停止している及び心房細動を起こしている心臓に対してはAEDの診断機能が「除細動の必要なし」の診断を下し通電は行われない。その際は通常の心肺蘇生法等による救命処置を行う。
またその効果を十分に発揮させるためには、
- 患者前胸部の汗を拭い、胸毛の薄い部位を見極め(電極パッド貼付部分だけでよい)、金具(腕時計、ネックレスなど)・貼り薬(湿布、膏薬等)などを取り除いてから装着する。また電極パッド貼付は心臓ペースメーカー装着部から3cm程度離れたところがよいとされる。(一連の処置は冷静且つ迅速・的確に、が基本。AED本体等に、日本語で電極パッド貼付部位や施行順等が書かれている。声に出して読みながら処置し、心を落ち着かせるのも一法。)
- 心電図解析中は誤診を防ぐ為に、また救助者等が感電しないよう通電時にも、患者に触れない様に、周囲の者にも注意。(「一歩下がって! いいですね!? いきます!」等と大声で合図するのが望ましい)
- 野次馬等を遠避ける。AEDによる処置の必要性はTPOを問わず発生し得る訳であるから、老若男女問わず「胸を肌蹴させる」事に対するプライバシーについても、救命優先の上で、可能な限り配慮すること。例えば、数人が救命措置を行い、数人は関係者以外が覗き込んだりしない様に誘導したり、衣類や大きな布等で四方の覆いをするなど。(繰り返すが、「人命救助」が、最優先である!)
- 医師等の指示があるまで電極は外さないこと。(一度貼った電極をはがさない・位置を変えない事が肝要。電極貼付位置を変えてしまう事により、僅かながらでも心電図の波形その他データが変わる可能性があり、より正確な診断と処置の妨げとなる可能性がある。)
誰にでも使用方法がわかるように、AED設置場所に、使用方法を記載した大きい表示板を設置しているところもある。
[編集] 救命手順(AEDがある場合)
- 人が倒れた
- 救急車を呼び、AEDを用意する。他にも人がいる場合、手伝ってもらうのが望ましい(大声を出し、可能な限り人を呼ぶ)。ある程度の人数が揃ったら、救命・記録・連絡・外回り等、役回りを決める。
- 呼吸を10秒以内で確認(日常的に蘇生に携わる人は脈も確認)
- 呼吸がなければ人工呼吸を2回
- 胸骨圧迫心臓マッサージと人工呼吸を30:2で行う
- AEDが届いたら電源を入れ、電極パッドを体に貼り付け
(AEDは意識がなく呼吸のない人のみに用いる 除細動の適応でなければ充電しない。心室細動・心室頻拍の場合のみ、機器が自動で充電)
- 充電が完了したら安全を確認して除細動
- 機器の音声案内に従い心肺蘇生法を続行
- パッドは救急隊が到着するまで外してはいけない。電源を切ってもいけない
(注)正常な人にAEDの電極を付け、スイッチを入れてもとくに問題はない(その場合はAEDが判定しショック印加はされない)。
[編集] AEDがない場合
心肺蘇生法を参照
[編集] 講習を受けるには
- 公的団体
- 日本では、各地の消防本部や日本赤十字社がAED講習会を開催している。病院や保健所で独自に行っているところもある。
- 民間団体
- アメリカ心臓協会(AHA:American Heart Association)公認講習を開催する日本ACLS協会や、メディックファーストエイド社、国際救急救命協会が一般市民向けにトレーニングを提供している。
[編集] 関連項目
- 電気的除細動
- 国際ガイドライン2005
- 国際蘇生連絡協議会(ILCOR)
- 日本蘇生協議会(JRC)
[編集] 備考
2007年1月20日より運行を開始した東京都清瀬市の清瀬市コミュニティバス「きよバス」車内にはAEDが搭載されている。メーカー(AED取扱代理店、バス車体製造会社、運行会社)の協議・検討により、バス走行中の振動にも耐えられる様に勘案されている。
[編集] 外部リンク
- 日本光電工業株式会社
- フクダ電子株式会社
- フィリップスメディカルシステムズ株式会社
- 日本赤十字社
- アメリカ心臓協会 日本部会
- AED救急法 虎の穴
- 非医療従事者による自動体外式除細動器(AED)の使用のあり方検討会報告書(厚生労働省)
- AEDで子供を救おう
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